まことに迷惑な患者の話2

敬意のない患者は本当にお断りです

私はこのセリフをすでに何十回もこのホームページをお読みの方に申しておりますが、なぜそこまで「敬意」にこだわるのか? それがわかるエピソードを掲載します。昨日起こったお話です。

 

帰りがけに一言

30代の妊婦の方が帰りがけの会計の際に「あんなにバカていねいなのはおかしくないですか?」と受付に苦情を述べて帰られました。受付の采配で次の予約はとらせることなく返しましたが・・・

私の診療に性的な不快感を示したと判断します。つまり、私が治療行為を装い自分の性欲を満たすために身体に必要以上に触ったりしたということでしょう。敬意があればこういう無礼な判断はしません。どこまで低次元な人間として私が見られているのでしょうか?

 

治療背景

この女性の主症状は耳鳴り・うつ・自律神経失調・首まわりの不快感です。これらの症状を治す方法は現医学にはないことはみなさまもご承知でしょう。妊娠7か月ですのでお腹の赤ちゃんは安定期を迎えていますので使用量に注意すれば薬剤も使えないことはない時期です。

初診時は上頚神経節ブロックを行い、そして上記の症状が軽減したとのことでした。その後治療回数を重ねるうちに「腰が痛い」「手首が痛い」と治療要求が増えて行きました。

私の治療技術が高いことがわかると、多くの患者はこのように治療箇所を増やしてエスカレートさせていきます。特に30~50代女性に「治療要求増加」の傾向があります。

およそ2週に1回の通院ですが、電車で30分くらいの通院圏内の患者なので私に敬意がないことはだいたいわかっていました。感謝の言葉をいただいたことがこれまで一度もなかったからです。

「耳鳴り・うつ・自律神経失調・首まわりの不快感」などという不定愁訴を治せる医師などいないというのに、その価値を全く理解していないと思います。

 

先週の治療

先週私は上頚神経節ブロックではなく、腰痛に対して腰部硬膜外ブロックを行い、そして左手首痛(おそらくTFCC)の治療のために手関節内注射(ケナコルト入り)を行いました。この二つの注射は「本来は妊婦に行うべき治療」ではありません。腰部硬膜外ブロックはミスをして脊髄注射となれば、妊婦の場合は麻酔薬が脳まで到達しやすく(妊娠中は腹圧が高いからです)、血圧が急激に下がって意識を消失したり命に関わることになりやすいからです。私の場合はミスを万に一つも侵さないため「極めて慎重に行えば可能」となるのですが、普通の医師は怖がってやりません。また、手首の注射に使うケナコルトは性ホルモンに関係し、安定期とはいえども赤ちゃんの成長にわずかに影響しかねないため使いたくない薬剤です。

治療を要求されたときに、断ろうかと思いましたが、妊婦の辛さがわかりますので、なんとかしてあげたいという気持ちでこの二つの注射を極めて慎重に行いました。その重責を金銭に換算すれば診療費は10倍とっても割りに合いませんが、私はこの「感謝の意も示さない患者」に対し、普通の診療費でリスクに責任を負う形で治療をしました。

帰りがけに私は「妊娠していると全ての治療行為が危険になるし、治療すればするほど赤ちゃんにも影響してしまう」ことを述べ、「普通ならばこのくらいの苦しみは我慢しなければなりません。普通のお母さんたちはみんな赤ちゃんのために我慢するものですよ。」とお説教しました。半分は怒りです。謝意を示さないことに怒りではなく、赤ちゃんのために体の不調をがまんできないという精神の弱さに怒っているのです。

 

昨日の治療

昨日来院したときは「腰の痛みは収まった」といいます。「で、どこが調子悪いんですか?」と私はこの妊婦に尋ねました。

ただでさえ妊婦というだけで当院には極めて迷惑な存在です。妊婦にブロック注射を平気で行う医師などいません。説教したにもかかわらず、また来院しているものですから「どこを治してもらいたいのか?」たずねるしかありません。

すると「首回りと手首です」と言います。

この返答は普通のようで普通ではありません。前回、「治療は赤ちゃんのためによくない」ことを述べた患者です。ですから、本日ブロック治療を受けたいのであれば、「赤ちゃんや自分の身の危険を侵してまで治療をしてほしい理由」を言わなければならないのですから。こんな誠意のない返答が許されるわけがありません。

まるで私があなたの治療をしたがっていて、患者が来院することを喜んでいると思っているようです。そうでなければこれほどぶっきらぼうな返答になりません。

さて、これほど誠意のない返答をされると、医師としてはどんな気分になると思いますか? 怒り? 違います。恐怖です。

もしも治療にわずかの落ち度でもあろうものなら、この妊婦に訴えられる可能性が高いということを肌で感じるからです。わずかな落ち度とは、注射を刺した箇所が少し青くなる、シールを貼った箇所がかぶれる、注射後に新たな痛みが出る、などのことを言います。

これらは普通に「注射をすればやむを得ないこと」と認識しますが、この妊婦は訴えたり周囲に暴言を吐いたりして評判を落とすなどのことを起こす可能性が高い、と私は推測してしまうわけです。それは恐怖なのです。

 

なぜミスを侵さないか?

私は極めてミスを侵さない医師です。その理由は「患者と精神リンク」ができるからなのです。患者の立場に立って考えるということがさらに発展し、患者のわずかな表情や緊張の度合いで感情を読むという芸当ができるからです。私が注射をするとき、そのセンサーをピリピリと周囲に張り巡らせ、そして患者の容態を自分のことのようにモニタリングできるがゆえに大きなミスを起こさないのです。

当然ながら患者の悪意・邪気も商売上手に取るように見えてしまうため、そのような患者に注射を打つときは恐怖のために精神が破裂しそうに緊張します。

そうした緊張がさらに私の治療技術を向上させてくれます。

そして、今回の上頚神経節ブロックの最中に、妊婦の血圧が急激に上がったのを左手が察知しました。超音波プローベを持つ左手が脈の強さを感じ取ったからです。この場合、患者が恐怖心を抱いていることがすぐに私に伝わります。そして、その原因はブロック注射が上頚神経節内にしっかり入ったことであることを理解しています。しかしながら、その反応が急激である場合に患者は変化に恐怖心を抱き血圧を上昇させます。私の治療技術を信じていない者に多い反応です。

リスクの高い妊婦にそうした血圧の激しい変動を感じた場合、私は治療の手を止めるしかありません。

 

性的に気持ち悪いと思われる

このような血圧の急な上昇を察知した場合、薬液を入れるのを止め、ゆっくり血圧が正常化するのを待ってから入れるしかありません。そういうことができるので私のブロック注射は極めて安全性が高い(ミスを侵さない)のです。

その際に妊婦に「何かありましたか? 血圧が上がってドキドキしているのがわかります。何も言わなくてもわかりますから。そういう異変を察知できる技術を持っていますので安心してください」と述べたのですが、この「何も言わなくてもわかる」というのがこの妊婦を気持ち悪がらせたのだと推測します。心の中にリンクされたからでしょう。他人に自分の心の中に入られることは性的に気持ち悪いのだと思います。

おいおい待ちなさい! 心をリンクしておかなければ危険をいち早く察知できないのです。その技術があるがゆえに妊婦であるのにブロックができているのです。この技術がどれほど高価で希少かかみなさんにわかりますか?

ただし妊婦の悪意も邪気もわかるわけです。心を読まれれば素性の悪い患者は困るでしょう。しかし私に敬意があればこのような不快感を持つことはなかったはずです。

 

ガングリオンに執着

次に妊婦の左手の関節内に注射をしました。手関節の注射は難易度が極めて高く、それ自体を行う医師は探しても見当たらない程希少です。もちろん、この妊婦はそれほど希少価値がある注射であることは認識していないでしょう。

ただ注射をすればよいというのではなく、痛みを与えずに、ミスなく行うこと、それを100%近く毎回成功するまでに技術を高めることが「極めて難しい」と言えます。

ところが、今回は関節面を探すのに手間取り、3分くらい手首を探りました。その3分間、彼女の手首を執拗に触らざるを得ませんでした。彼女にしてみれば「先週はさっと注射したのに、今週はしつこく触る」ことに対して私が性的な欲求を満たすために触りまくったと思ったのだと推測します。

そして、関節内注射後に尺骨と橈骨の間に隆起が少しぽこっと出てしまいました。おそらく小さなガングリオンが存在し、それが内圧によって表面に押し出されたのだと推測しました。

「以前から手首にぽこっとしたものがありましたか?」とたずねると「そういえば以前から少し膨らんでいました」というので「それはおそらくガングリオンですね」と述べました。

すると極めて不安そうな顔をしたので「いやいやガングリオンとは悪いものではなく、誰にでも関節近辺にできるものなんですよ」とフォローしました。

しかし、不安な顔はますます強くなったため秘書が「私にもありますよ」とフォローしたのですが、不安が私への不信に変わってきたのを読み取れたため、秘書はさらに「ガングリオンはできやすい体質の人とかいますね」と必死になってフォローしていました。

私はもうすでにこんな患者とはかかわりを持ちたくないので一挙に無口になりその場を離れました。

 

帰りがけに

この妊婦は帰りがけに秘書に愚痴をこぼしたわけです。

「あんなにバカていねいなのはおかしくないですか?」です。

 

どうですか? みなさん。妊婦にはバカていねいにやらなければ母子ともども極めて危険だというのに、その危険を侵してまで誠心誠意、安い治療費(本当は10倍の料金でなければ割りに合いません)で治療をする希少な医師に対して、このセリフを放って帰るわけです。恩を仇で返すです。

当然ながら秘書も大怒りです。が、「院長はあなたさまが妊婦さまなので相当神経を使っているんですよ」と言い、次回の診察予約をとらせずに帰しました。つまり暫定的な出入り禁止です。妊婦は出入り禁止にされたとは思っていないでしょう。

 

私は明らかに普通の医師とは違います。普通の医師が「危険すぎるのでやりたくない治療」を創意工夫・経験・神経集中・技術力を駆使して安全に行う「あり得ない医師」です。「ありえないくらいバカていねい」なのは私のあまりにも普通な姿勢です。リスクが高いことに飛び込まなければならないからです。その献身的な姿勢をセクハラだと感じるわけです。私はこの怒りをどこに向ければよいでしょう?

 

当然ながら敬意がない患者は最初から診ないようにすうしかありません。そしてますます「敬意があるかないか?」の審査を厳しくするしかなくなってきます。敬意のない患者は一体どれだけ私の心を傷つけていけばよいのでしょう?

 

終わりに

これは全て私の空想です。実際にこの女性患者が性的な嫌悪感を抱いたかどうかはわかりません。私はメンタリストで普通の人間よりも心を深く読む癖があります。難易度の高い治療を毎日行うがゆえに身についた特殊技術です。ですが、私の考え過ぎの部分もあるかもしれません。

最後に、敬意さえあれば何の問題も起こりません。

まことに迷惑な患者の話2」への4件のフィードバック

  1. 突発性難聴に5月13日の夜になったものです。友人とお酒を飲んでいたら帰り際になって、耳が詰まってる感じがして音が聞こえづらい事をきっかけに気づきました。
    5月18日 近くの耳鼻科で
    メチコバール
    アルジオキサ
    ベタメタゾン0.5
    を、処方されて現在も飲んでおりますが、まだ耳の聞こえが治らず。これ飲み薬だけで治るか不安でこちらを訪ねました。

    • なるべく早くご来院ください。完治の条件として2週間以内の回復が必要です。2週間を過ぎても残っている症状は後遺症になりやすいという意味です。その2週間に近づいていますので猶予はありません。

  2. 今日は、
    強烈な目眩を伴った突発性難聴に罹りました、
    救急車で運ばれ、2週間入院しましたが、担当医が内科でしたので、
    医師曰く、「私は、内科なので治療は出来ません、又当院の耳鼻科は外来専門
    です、這ってでも診察を受けなさい」と言われましたが、
    目を開けることすら出来ない状態で歩いてはとても無理でした、
    入院5日目、何とか車椅子にて検査を受けましたが、「担当医が3日後の勤務なので、それまで待って下さい、」とのこと、3日後再検査、ステロイド投薬(飲み薬)、
    6日間投薬するも変化なし、翌日退院となる、
    1ケ月後、他の病院にてステロイド注射を1週間行うも効果なし、
    それから、8ヶ月、発症から10ヶ月、
    大変難しい処ですが、先生に、一度診ていただきたいと思いまして、
    メ-ル致しました、宜しくお願い致します。

    • 発症から10か月でまだめまいが治らないのでしょうか? 私の患者にもめまいを主症状として上頚神経節ブロックをほぼ毎週行い、全治まで4~5か月かかった方がおられます。おそらくすぐには治らないでしょう。根気が必要かもしれません。

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