ナルコレプシーへのブロック治療例

2017年治療成績

ナルコレプシーへのブロック治療例

 

症例 56歳 女性

  • 主訴:昼間、電話している最中に突然眠ってしまう 数年前より、昼間に睡魔に襲われて眠ることがよくあったが、2週間前より突然無意識に眠ってしまうということが起こるようになった。
  • 既往歴 髄膜腫で2001,2013にOpe
  • 治療 週1で上頚神経節ブロックを行うと、5~6日間は入眠発作はない。しかし、7日目には入眠発作が出現した。網様体賦活系への血行促進を目的にオパルモンを処方したところ、上頚神経節ブロックが1週間効果を持続できるようになった。

治療経過

 

2014.11.ブロック治療後2か月目、ブロックの効果が数日へと短縮してくる(症状が悪化)。このため11月より週に2回の上記ブロックをすることにし、睡眠発作が起こらないようブロック治療を続ける。2014.12.18.突然上肢と下肢の脱力が起こり自宅で倒れる(意識清明)。近くの内科医に行くが原因がわからないと言われ帰宅。しかし、そのエピソード以来、睡眠発作が起こらなくなる。ナルコレプシーは完治し、治療はこれで終了した。

症例 80歳 女性

  • 主訴:デイサービス中に入眠発作 企図振戦 間欠性跛行
  • 現病歴:夜間不眠で睡眠薬を眠前に1錠、30年前から継続している。私には間欠性跛行の診断で毎週ブロック注射を行っていた。一方、企図振戦が最近出現し始め、当院脳外科医にパーキンソン症候群の診断を受ける。パーキンソン症候群(企図振戦)の治療目的で上頚神経節ブロックを開始したところ、ブロック3回目で企図振戦は改善した。それと同時に上頚神経節ブロックを行うと熟睡できないと訴える。よって上頚神経節ブロックを中止したところ、翌週には企図振戦が悪化すると共に、デイサービスで入眠発作が起こるようになった(以前から入眠発作の傾向があった)。すると本人は上頚神経節ブロックのおかげで、入眠発作が起こらなかったのだと理解し、再び同ブロックを切望する。それ以来毎週同ブロックを行っているが、企図振戦は改善され、入眠発作もない。

 

 

考察

上頚神経節ブロックが不眠症に極めて効果があることは既に多くの患者で実証できています。一度のブロックで数日間は熟睡が得られます。しかし、永続性はないため、ブロックを継続するか否かは患者に選択させています。上頚神経節ブロックは自律神経失調症症状にも効果を発揮しますので、睡眠障害+自律神経発作がある患者には継続使用が望ましいでしょう。


上頚神経節ブロックが睡眠障害に効果的である理由は網様体賦活系の血行を改善するからであろうと思われます。しかし、特筆すべきなのは、ナルコレプシーの患者にはその発作を起こらなくさせる効果があるところです。こうした結果から、ナルコレプシーは網様体賦活系の血行不良が大きな原因の一つになっているという推測が成り立ちます。今のところ、上頚神経節ブロックの効果を永続させることができるかどうかは未知ですが、繰り返しの使用で改善されていくと思われ、本ブロックはナルコレプシーに有効であると思われましたので報告しました。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です