日本医療の難題6 共産主義医療の崩壊

貧民優遇の日本医療

日本の医療は諸外国と比べて極めて弱者優遇です。ホームレスは地方自治体が治療費の全額を負担し、生活保護者も全額負担。後期高齢者では保険側が9割を負担。小中学生も全額負担の地方自治体が多く、「お金を稼ぐことができない(職を持たない)人」を無料で治療するのが日本の特徴です。この点が世界がうらやむ日本の医療なのですが・・・万一TPPが推進すると、海外の貧しい人も日本に来れば高価な医療を受けられるようになるため、日本財政が窮地に追い込まれます。このことを理解している国民は皆無のようですが・・・


このような日本医療の慈愛に満ちた思想は世界でも評価されておりとてもすばらしいものです。しかしながら、職を持たない人たちは毎日でも通院が可能で、職を持つ人は通院する時間がないことより、実際は「職を持つ人」よりも「職を持たない人」を優遇する医療となっています。すでに日本の保険医療は崩壊しており、たとえば保険側はブロック注射については「1日に1箇所治療かつ週に1回までしか治療を認めない」という方針で運営しています。仮に3箇所に痛みを持つ患者の場合、週に3日通院すれば3箇所を治療可能ですが、週に1日しか来院でない場合、1箇所しか治療をしてもらえないことになります。職を持たない人は週に3日通院することができますが、職がある人は週に1日しか通院できません。このように職を持たない人は職を持つ人の3倍の治療を受けられます。保険側の理不尽な治療制限のために、「職がない人」の方が医療で何倍も優遇される「逆差別医療」が日本の医療の中心となっている現状です。しかも、生活保護など、保護を受けている方への医療費は保険側が全額負担しますので高額な医療を受けてもふところは全く痛みません。


よって開業医側は「生活保護者・障害者にこそ高額な医療を絶え間なく何度も行う」ということを行いたくなります。高額な医療を行えば行うほど患者に喜ばれ、自分も潤うからです。この現象は後期高齢者の1割負担でも同じです。1割しか負担しないので高額な治療をすればするほど患者に喜ばれます。医師側も儲かります。このように日本の共産主義医療は弱者逆差別が行われており、弱者の方が職のある社会人よりも高額な医療をふんだんに受けているという事実があります。そして保険側がこれを阻止するために、不当な料金設定や支払い拒否をすると、その負担は労働者側に回ります。被害を受けるのは常に優良な納税者たちです。これはまさに共産主義医療の弊害と言えます。


金持ちよりも生活保護者

このような共産主義医療体制の日本では資産家のお金持ちよりも、生活保護者や高齢者からの方が診療費を多く稼ぐことができます。「歓迎すべき患者」とは、資産家・有名人ではなく、弱者です。資産家はお金を多く払い、治療を優遇してもらえると考えるかもしれませんがそれはあり得ません。日本では自由診療に重税が課せられるため保険診療を行おうという強い指向があり、保険診療は全て安値均一なので資産家から多く医療費を頂戴することが不可能です。つまり、開業医にとって資産家は「特に病院に有益ではない存在」であり、しかしながら態度は大きく高圧的に接してくるため、医師側にとっては歓迎されない存在です。さらに、資産家は「1回の治療で治せ!」という無理難題を平気で言ってくることが多く、医療界で嫌われ者です。医師もそういう患者には接したくないので治療する機会を減らす傾向にあります。よって資産家は逆に冷遇される医療体制であると言えます。


日本は士農工商という身分制度を敷いていた国であり、商人=資産家、に対しては冷遇することが道徳的に正しいとされている国です。そうした資産家冷遇体制を医療界では推進しています。公的な病院では賄賂や贈答品を絶対に受け取りを拒否します。これが「資産家に便宜を図らないという態度」です。よって日本では資産家は健康面で大変苦労することになるわけです。


共産主義医療の現実

万民が質の高い医療を受けられるのが共産主義医療の利点ですが、それは国家に潤沢な財産がある時にしかできません。現在のように財政赤字が膨らんでいる時点で全国民に平均的な医療を受けさせるには「質の低い医療を均一化させる」しか方法がありません。すでに保険側は「治療は週に1回しか認めない」というような方針を全ての治療で推進しており、資産家が医師の前にどれほどお金を積もうとも、週に1回しか治療を受けさせない状況となっています。つまり、質の高い医療を拒否されるのが日本の共産主義医療です。その中でも回数制限がもっとも重くのしかかる診療拒否です。


共産主義医療の最大のメリットは前のシリーズで述べましたが、医師を厳重に管理できるところにあります。民主主義では治療技術が高い医師ほど民衆の支持を受け、強い権力を得るものですが、共産主義では治療技術が均一化されてしまうために「技術力の高い医師」は出る釘として叩かれてしまいます。すなわち、真の実力者が実力をつけたり、指導者になったりする機会が奪われ、そして官僚・学会・教授(東大・一流国立大卒)がトップに立って医師を指導できるわけです。


共産主義医療では「ことなかれ主義」となりますので、リスクのある治療は禁止していきます。これにより安全性が保たれるというメリットがあります。その反面、治らない病気に対して果敢に挑戦していくことがなくなります。果敢に挑戦した医療にかかる費用を、保険側は支払い拒否するからです。資産家が医師の目の前にお金を積んで「果敢に挑戦する診療をお願いします」と頭を下げたとしても、それを行う医師はいません。日本の医師は官僚・学会・教授に忠実だからです。


資産家は路頭に迷う

資産家は財産がいくらあっても、そのお金を医療に遣うことができません。莫大にお金をかけるのは、せいぜい贅沢な個室料金であり、大学で行う先進医療くらいなものです。先進医療は治療法が確立されていない難病には無力であり、さらに大衆医療にも無力です。よって資産家が治療法の確率されていない難病にかかったり、大衆病に苦しんだりしたときは大病院に入院して贅沢な個室に入っても、有効な治療を受けることができません。ホームレスが受ける治療と同じ治療しか受けることができません。


資産家は医療の世界もお金で何とかなると勘違いしている方が多くおられます。よって、テレビ・雑誌で有名な医師、大学病院の教授などにかかり、賄賂を渡せば何とかなると考えていますが、賄賂を渡したところで治療方針が変わるわけではなく、医師の顔色が変わるだけです。立派な個室に入っている場合、医師は低姿勢になりますが、治療の質が上がることは全くありません。何度も言うように、資産家もホームレスと同じ治療しか受けられません。それは保険側がお金を支払うのであって、資産家自信が支払っている診療費はほんの一部だからです。教授たちが資産家や有名人の患者を好む理由は、彼らの自尊心が満たされるからであり、収入が増えるからではありません。教授たちが資産家に与えることができるのは、ガイドラインでお決まりの治療であり、「権威のある教授にかかった」という安心感のみです。


また、教授たちはお金では動きません。正確に言うと、お金で動こうにも「ガイドライン上の治療しかしない」のが教授です。なぜなら、教授がガイドラインを作っているからです。むしろ教授は官僚側(保険側)であり、ガイドラインに従わない医師に圧力をかけ、自分の示す治療に従わせようとする存在です。そういう医師が自ら保険外治療を推奨するはずがありません。ですから、資産家が賄賂を渡しても、彼らは均一な治療しかしません。特に大衆病は「教授たちが触りもしない病気」ですから、資産家が大衆病にかかれば、お金をかけようとも打つ手がありません。皮肉なことに、資産家であっても有名人であっても、圧倒的に大衆病にかかる確率の方が高いと言えます。大衆病を患った場合、都会の大学病院に行けば治るというのは幻想です。ただし、手術が必要な病気の場合、「大病院指向」は正しいと言えます。それは、難しい手術はチームを組まなければ適切に治すことが難しいからです。しかし、そうした手術でさえ、国民は平等に手術を受ける機会があり、特に資産家を優遇するわけではありません。すばらしい医療の精神です。


共産主義医療を壊す

共産主義医療は「お金がない」ことで崩壊します。高齢者がこれほど増えてしまっているので医師たちにお金を払いきれません。そこで国側は二つの選択に迫られます。さらに「安値均一にする」か、「混合診療を認める」か?です。安値均一にすると医師たちがいずれ反乱し、保険が崩壊します。混合診療を認めても保険が崩壊します。前者は国家財政を傾け、後者は国家安泰にさせます。どちらを選んでも保険は崩壊します。


東大官僚が医師を忠犬のように支配する白い巨塔体制を維持するには、お金がかかりすぎるのです。人口的にはわずかな数である教授や高官ですが、そのわずかな人間が大勢の医師を完全支配するために、共産主義医療は存続させられています。高額な国家予算を浪費して・・・。保険医療は遅かれ早かれ崩壊しますが、高齢化社会はそれよりも早く進みます。その早さに医療を追いつかせなければ、国は債務放棄するしか方法がなくなります。


共産主義医療には、良い点がたくさんあることを理解していますが、私は国が債務放棄する心配に心を傷めています。私は、国民の方々に自分の意見を押し付けようとは思いません。ただただ現実を述べたのみです。各自がお考えになり、行動に移していただければよいと思っています。また、私がここに示した意見は一意見であり、医師全体の総意ではありません。

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