日本医療の難題5 自由診療拡充でできること

措置法26条が改正されると

措置法26条が改正され、自由診療を行った場合に保険診療以上に税制で優遇されるという暫定的な法律が制定されれば、自由診療を行おうとする開業医の割合が必ず増えます。一般的には「医者がボロもうけ・・・」と悪意に考える方が多いと思われますが、自由診療は他のカイロプラクティックや鍼灸と同じであり、「法外な値段で診療すれば患者が来院しなくなる」ので商売の自由競争原理が働きます。医療事故でも法的に守られにくくなりますので、万一のときは全責任をとらなければならず、「猫も杓子も自由診療」というわけにはいきません。医学書に掲載されていない治療法を編み出せる技術を学ぼうとした医師にしかできることではないでしょう。よって無造作に自由診療が増えるわけではありませんので、その点はご安心ください。実際に自由診療が拡充した場合に、どのような治療が行えるのか?についてペインクリニック整形外科的に言及したいと思います。


高齢者のブロック注射が解禁

ペインクリニック科の医師は他の科の医師たちよりも硬膜外ブロックが得意ですが、それでも高齢者の変形した脊椎に確実にブロックをすることは極めて難しいと言えます。中年の患者であれば1分で終わる硬膜外ブロックが、後期高齢者では30分以上かけても入らない、2度トライしたが入らない・・・ということが普通にあります。したがって、現状では数分~十分かけてもなかなか入らないブロックの場合、ブロックが成功していないと感じても「はい、終わりました」と言ってそのまま帰宅させるか、変形の強い高齢者のブロックや、肥満患者のブロックをそもそも行わないかのどちらかになります。つまり、現在のようなブロックの値段設定では「高齢者や肥満者へのブロックは無理なことが多い」のです。


しかしながら、自由診療が拡充すれば、「時間料金制」で診療が可能になります。10分で成功すれば保険診療内でOK、30分かかるなら20分相当の追加料金をいただきます。こうすることで「高齢者や肥満者への難しいブロックを行おう」とする医師の数が増えます。これまでの保険診療では、保険診療の設定が安すぎるため、「高齢者へのブロックは赤字となるため避けなければならない」状態でしたが、自由診療が始まれば、ようやく赤字経営にならずにブロックが難しい人にも行うことが可能になります。このように安すぎる値段設定のために避けられていた治療の全てが解禁されると考えてよいでしょう。超音波透視下の治療も大幅に増え、安全性と確実性が格段に向上します。


治療スピードが格段に上昇する

急性期の激しい神経痛にはどんな治療も「焼け石に水」であり、症状が強いものは週に1回のブロックでは全く効果がありません。ブロックが1日しか効果がないのに、現在の保険制度では1週間待たなければ次のブロック注射を受けることができません。よって、せっかくブロックを行っても、次の週には痛みが完全に戻ってしまい、治療がふり出しに戻ることがありました。自由診療が解禁となれば、痛みが強ければ翌日に再度ブロックを行い、治療の蓄積効果を作ることができます。徹底的にブロックすれば、翌週には痛みを制御できるようになり、治療のスピードを格段に速めることができます。自由診療解禁で治療回数制限が解除されます。治療のスピードを速めることは、資産家やアスリートの方など世の中で活躍されている方であればあるほどその価値は高いものとなります。


複数の病気を同時に治療できる

バカバカしい話ですが、現在の保険診療では、1日に1箇所のブロックしか認められておりません。坐骨神経痛と頚椎神経根症の治療はその日に同時に行えません。通常は1週間開けなければ別の箇所の治療ができません。あまりに理不尽な決まりです。自由診療が解禁になれば、一つを保険で治療し、もう一つを自由診療で行い、その日のうちに2箇所の治療をします。社会人にとって勤務を休むことはたやすくないため、2ヶ所の治療はその日のうちに行うべきです。それが可能になります。


神経根ブロックを低価格で提供

私は透視や造影剤を用いずにブラインドで神経根ブロック注射ができます。しかし、ブラインドで行う神経根ブロックは保険側から支払いを拒否されています。その理由は「ブラインドでは確実性が少ないため、透視下に造影剤を用いて神経根を目で同定しなさい。そうしなければお金は払いませんよ。」といわれるからです。つまり、難易度を高くして、易々と高価な治療をさせないとういう方針です。私のようにブラインドで神経根ブロックを行う医師を出現させないための措置です。ブラインドで行えば、短時間で大勢を治療することができてしまい、保険請求額が膨らみます。よって私はブラインドで神経根ブロックを行っても、料金請求ができない状態でした。ブラインドのよさは、1度に何箇所でも神経根ブロックを行うことができるところです。左右両方にもできます。例えば自由診療解禁になれば、低価格で何箇所にもできる神経根ブロックを提供できます。


保険診療では、「神経根を造影剤で同定せよ」という必須条件があるため、神経根に針を刺し、そこへ造影剤を流すという神経根にとって害になる手技が必須です。この過程は患者にとって極めて痛い手技ですので、一度受けた患者は「二度とやるものか!」とお怒りになる方も大勢おられるほどです。さらに、神経を刺すという手洗い手技であるため、3回までが限度とされています。これに対し、ブラインドで行う神経根ブロックは神経に直接刺さず、近傍に薬液を浸潤させます。手技自体が痛くなく、造影剤の害もなく、安全で何度もできて効果が高くすばらしい手技です。自由診療が解禁になればブラインドの神経根ブロックが全国に拡大します。


痛い治療が痛くなくなる

ばね指の注射は手のひら側から行うと、あまりの激痛のためトラウマになるほどです。私はこれを痛くなくするために手の甲側からゆっくり時間をかけてていねいに注射します。しかしながら、ばね指の注射料金は保険では350円という「医師をバカにした理不尽な値段設定」になっています。手の甲から時間をかけてゆっくり丁寧に治療すれば10分近くかかります(料金的には4~5千円の設定が必要です)。それを350円にしているせいで一般的な開業医の間では「乱暴で数秒で行う激痛を伴う手技」にならざるを得ないのです。350円は立派に法外な値段設定です。おそらく国税局につつかれれば違法性がはっきりするレベルの安い値段設定です。


こうした法外に安い値段設定のものは一旦廃止し、自由診療で徴収すれば適切で安全な治療を行うことができます。保険側の料金設定が安すぎるために、ばね指の治療でトラウマになる患者が全国に何万人もいらっしゃることが不憫です。ばね指は料金が安いために起こる悲劇について述べましたが、一事が万事、全てのブロック注射で同様のことが言えます。ゆっくり丁寧に行えば痛くない手技なのに、速く行うことで危険で痛い、そして不確実な手技になってしまいます。 そういう意味で「時間をかけて痛くないブロック」を希望される患者には自由診療で別料金を加算し、安全・確実・痛くないブロックを時間をかけて行うことができるようになります。どんなに痛い注射も、別料金で特別細い針を用いて局所麻酔を先に行えばよいのですから。


顎・股から指まで様々な関節に注射可能

現在、保険制度では関節は800円均一と、法外に安い値段設定となっています。法外とは・・・前にも述べたように、医師の人件費を大幅に下回る値段設定という意味であり、これは国税局に追及されれば言い逃れができないレベルの安さです。5億円の豪邸を月額5万円で賃貸すれば、国税局から脱税とみなされますが、そのレベルで不当に安いという意味です。開業医が保険制度により、無理やり脱税の幇助をさせられているといえるほどです。国税局から訴えられるレベルに不当に安い厚生労働省の料金設定ですが、訴えられないようにするために厚生労働省は国税局とも一体化し、厚生労働国税省となるかもしれません(笑)。


股関節や椎間関節に関節内注射を行うには、X線(超音波)透視下に行わなければならず、どう考えても15000円以上かかる治療となります。しかし現在の保険制度ではそれを800円で行わなければならないわけですから、それは違法と呼べる安値設定ではないでしょうか?すなわち、難易度の高い関節内注射は「厚生労働省が認めていない」のと同じであり、このおかげで患者に治療が全くできません。保険側がお金を払えないから治療をするな!というのでしたら、我々は自費診療で治してあげるしか方法がありません。こうした「あり得ない治療」を「あり得る」に変えられるのは自由診療以外にありません。


難病を治せる

突発性難聴などは早期に適切なブロックを連日行えば、難聴の程度を低く抑えることができると思われます。しかしながら、連日の治療は保険が許可していません。難病を頻回のブロックで治すという考え方は、厚生労働省が認めるはずもなく、我々は治療に際し、どうしても治してあげたい患者には医師が自腹を切るなどのサービスを行い、完全なる慈悲として治療している現状があります。そうした自腹を切る医師は経営者から嫌われて解雇されることもしばしばあります。こうした理不尽を、自由診療が救ってくれます。そして難病を治療する機会が格段に増え、難病治療が一気に前進すると確信します。


安全性が格段に上がる

腱鞘内注射350円、関節内注射800円、関節穿刺0円、透視下治療0円などという理不尽かつ不当な値段設定は、短時間に大量に患者をさばく以外に経営を黒字にすることができません。そのため、こうした手技では「急いで行う」ことにより消毒にかける時間を短くし、殺菌効果が得られないうちに治療しなければなりません。つまり、料金設定の安さは感染のリスクを高めます。また、素早く注射をしなければならないという精神的プレッシャーは、神経や血管を傷つけてしまうリスクを高めます。さらに薬剤を素早く注射しようとするため、薬の圧力が組織を損傷し重篤な医療事故につながります。料金設定の安さは明らかにリスクを高めますが、自由診療でお金を掛けてゆっくり丁寧に行えば全てのリスクを低下させることができます。厚生労働省はこうした「料金引き下げによる事故の拡大」について軽視しすぎています。


手術件数が大幅に減る

各種注射手技に「お金をかけてもいいから、きっちり治してほしい」という患者が増えれば、腱鞘内注射や関節内注射の質が格段に向上し、余計な手術をしないで済みます。事実、私が担当した患者たちは、ばね指、手根管症候群、デケルバンなどの手術を必要とした者がこれまでたったの一人もいません。つまり、注射で治せるのです。しかし、その料金が350円では開業医は完全な赤字となりますので、これらの疾患を注射で治すことは歓迎されていません。すなわち手術へと駒を進めるのが整形外科医にとっては得策なのです。本当は手術などしなくてよい患者を、きちんとした料金設定であるならば、注射のみで治すことができます。


股関節内注射や膝関節内注射も同様であり、これらが開業医を黒字にさせる料金設定であるならば、開業医は「治すための注射」を進んで行うようになり、そして手術をしなくて済む患者が大勢出現します。この逆もしかりです。なぜ現在の関節内注射や腱鞘内注射が、違法なほどに安い料金設定なのか?の理由を勘ぐってください。安い=保険では禁止している、という事実上の制約です。頭ごなしに禁止はできないので、安い料金設定にすれば、事実上禁止に等しいでしょう。つまり、保険で注射を禁止=手術しか痛みを回避する方法なし・・・これは手術を専門とする整形外科医にとってどれほど都合のよいことでしょうか? 患者に手術を受けさせるために、これほど不当な料金設定にしているといわれてもやむなしです。


腱鞘内注射も関節内注射も、きちんと消毒して安全に行うには、問診も含めて一人15分はかかり、実際には5000~6000円の料金設定でなければ不当料金です。それをなんと!350円なのですから・・・不当かつ違法です。なぜ、保険側が違法な料金設定にしているのか?国民の皆様はよく考えていただきたいです。


余計な検査が大幅に減る

現在、保険側の不当に安い料金設定のおかげで、開業医たちは検査を多く入れることで手技の赤字を補填しています。嘘の病名をたくさんつけて、理由をつけて検査して黒字化経営をしています。こうした不要な検査は保険制度の崩壊を意味していますが、適正な料金で自由診療を行えば、不要な検査をたくさんいれなくても、正々堂々治療のみの料金で患者を診療しようとする医師が増えます。開業医とて良心の呵責があり、検査をたくさん入れることに心を傷めています。心を傷めることはストレスです。しかし経営のために検査を入れるのです。こうした無駄な検査が大幅に減るでしょう。


優秀な医師の診療費が高騰する

自由診療が拡充すれば、患者を速く治せる腕のいい医師の診療費が値上がりします。不当に値上がることはなく、自由競争原理として値が上がるでしょう。なぜならば、腕のよい医師は数回で完治させてしまうので、結局、腕の悪い医師が何十回と通院させて治療するのと比較すると、トータルの医療費が、腕の良い医師の方が安上がりになるからです。つまり、速く安全に治せる医師は診療費が高騰します。

当然ながら医師たちは「患者を可能な限り速くなおせる技術を身につけよう」と切磋琢磨するので、競争原理に基づき、医師の治療能力が大幅に上がっていきます。しかも、大衆病を治せる医師ほどビジネスで成功しますので、特殊な手術手技を身につけるより、多くの民が普通に困っている病気を治そうとするでしょう。これが高齢者の生活水準を上げるようになることはわかりきったことです。


越境通院が増える

近くの治せない医師にかかるより、診療費が高くても速く安全に治せる医師へと患者が移動し始めます。自由診療の治療費により医師の治せる速さを推測できるようになるからです。診療費が高い医師は技術が高いことがわかりますので、料金で医師の腕が一般人に広く見えるようになります。すると、電車や車で遠距離を移動しても「良い医師に治療してもらいたい」患者が増えるので越境通院者が増えます。


保険診療だけを行う=腕が悪い、ことを露見するようにもなります。よって、医師の間には「保険診療を行わないこと」がブランドになるようになるでしょう。しかし、保険診療は不当に安い値段設定ですので、万人受けはよいはずです。安さは人気でもあるので、保険診療がすたれることはないでしょう。


ただし、医師たちは保険診療しかできないこと=腕が悪い、と思われることに恥を感じるようになりますので、腕がないが勉強熱心な医師たちは保険診療への嫌悪感を増大させます。妬みです。保険診療は貧しい人が受けるというイメージも定着するはずです。そして保険診療だけを行う医師は、実際にお金持ちや著名人たちを診療することはほとんどなくなると思われます。こうなると教授といえども自由診療に強い憎悪を覚えるはずです。よって必ず抵抗に遭います。


それでも保険診療は手術を必要とする大きな病気ではしっかりと役割を果たしてくれますので、大勢に影響はありません。しかし、開業医たちは厚生労働省の官僚たちへの不満が増し、彼らの命令に従わない者が増えるでしょう。なぜ厚生労働省が自由診療を拡充させないかの真の理由はここにあると言えます。医療の発展を阻止し、国の財政を陥れようとも、自由診療反対を掲げるのは、医師が厚生労働省に造反する恐れがあるからです。

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