原因不明の「声が出ない(かすれ)病」の治療法

はじめに

声帯の炎症や腫瘍などが原因ではない「声のかすれ」「声が出にくい」症状があります。迷走神経の枝である反回神経が麻痺し声帯がきちんと閉じないことが原因と推測されますが、なぜ反回神経が麻痺を起こすのかが不明な例が少なくありません。これらは「突発性反回神経麻痺」といわれ「心因性」「ストレスから来るもの」という間違った診断がなされることが多いようです。自然に治ることもありますが、数年から数十年治らない場合もあります。私はこのような原因不明の声のかすれに対し上頚交感神経節ブロックを用い軽快させることができます。ここでは治療成功例を挙げ、声のかすれの病態を考察したいと思います。


症例1 62歳 男性

主訴:両上肢の激痛、両上下肢の脱力、左手の筋萎縮、嚥下困難、声のかすれ

 現病歴

1年半前から両上肢の痛みと両上下肢の脱力が出現、リリカ、トラムセットなど大量に服薬しても全く無効。「仰臥位になると腕がひきちぎられそうになる」ことからソファーで座りながら眠るということを1年以上続けている。半年前から声がハスキーになり、1週間前から唾を飲み込みにくい、冷たい水がのどを通らない、声がかすれてほとんど出ないという症状が出現したため上頚交感神経節ブロックで治療を開始した。

治療

1%キシロカインを上頚交感神経節に2cc×2(両側)を注射。これを1週間に3回行った。初回以降唾が飲み込めるようになり、3回目で声が出るようになった。


症例2 49歳 女性

主訴:上下肢の脱力、左半身しびれ、首肩背の強い痛み、そして数年前から声がかすれて出にくい

 現病歴

25年前に原因不明の体調不良に襲われ、それ以来首肩背腰の痛み(特に首肩が酷くこっている)、頭の締め付け、慢性疲労、無気力、動悸、立ちくらみ、これらが毎日ある。時々呼吸が浅く苦しくなる。これまで整形外科にかかっても何の効果もなく東洋西洋医学等、良くなると言われるありとあらゆる治療を試すが無効。首の牽引、ウォーターベッドのマッサージ、低周波の電気治療、ボツリヌス注射、整体、針灸などすべてが無効のため現在は心療内科処方の薬を服用。数年前から声がかすれ、しゃべると疲れて声が出なくなるという症状が出現した。どうせ医者には治せないだろうと思い、医師には診察を受けていない。

治療

1%キシロカインを上頚交感神経節に注射。その数分後にはしっかり声が出るようになった(完全ではない)。さらに胸部硬膜外ブロックを行い、上下肢の脱力が回復傾向となる。嗄声はまだ完治していないが、今後治療を重ねる予定。


症例3 73歳 女性

主訴:むせる、のみこみにくい、かすれ声

 現病歴

数年前から声がかすれるようになり、1年3か月前より液体を飲み込む際にむせやすくなった。体調が悪い時は時々食べ物をのみこみにくいという症状がある。今回1ヶ月前よりむせやすい状態が悪化してきたため私に相談。私は上頚交感神経節ブロックをすることを提案した。

 治療

上頚交感神経節ブロックを1度行うことで「むせやすさ」の症状は完全に消失した。かすれ声は「多少声が出しやすくなった」と述べるが一度の治療では少ししか改善していない。


かすれ声の病態生理

上頚交感神経節ブロックは人の交感神経節の中で最も頭側に位置する神経節です。内頸動脈をはじめ椎骨動脈、脳底動脈など脳・脳幹・延髄を栄養する動脈の平滑筋の支配神経である交感神経を麻痺させることにより、栄養動脈を拡張させて血流量を上げることができます。最も頭側の交感神経節であるからして、血管拡張作用は星状神経節ブロックよりも効力が高いであろうことが予想されます。私が上頚交感神経節ブロックを行うことでかすれ声を改善させることができる結果から逆に考察しますと、そもそも突発性のかすれ声の原因は脳幹(特に迷走神経核)の血流障害にあると思われました。ではなぜそもそも脳幹の血流障害が起こるのか?の原因は、私がこのHPで再三再四述べている「脊髄・脊椎不適合症候群」にあると思われます。すなわち、姿勢により脊柱管の全長が長くなり、脊髄の全長がその変化に追い付かず全長以上に引っ張られことにより強く緊張することが原因であると考えます。その結果、脊髄に続く延髄と脳幹が下方に引っ張られ、横断面積が縮小し、動脈の横断面積も縮小して血流障害が起こると推測します。


突発性反回神経麻痺の治療

突発性とはいうものの、上頚交換神経節ブロックで改善するのであるから、もはや突発性というネーミングは正しくないでしょう。突然に発生したかすれ声に上頚交感神経節ブロックが効果的なのですからもはやこの疾患は難治性の原因不明の疾患ではでしょう。脳幹の血流障害に起因していると思われます。


かすれ声治療の今後

声帯に異常のないかすれ声の治療には上頚交感神経節ブロックが第一選択であるべきと思われます。もちろん、このブロックでも治癒しない例が今後現れるかもしれませんが、今のところ私の症例では完治とまではいかないが「やや、効果あり」も含めれば100%効果があります。ブロックの回数と回復までの期間は迷走神経の損傷(虚血性の壊死)の度合いに依存すると思われ、慢性的に長期間経過している症状には、治療を繰り返さなければ効果が得られにくいと予測されます。また、根気よく治療を繰り返せば大抵のかすれ声を治せると考えます。かすれ声の治療は、まだ始めたばかりなので治療成績がまとまれば再び報告します。ひとまず、治療例を増やすために(患者を募集するために)時期尚早でするがこのような未熟な形で掲載させていただきました。


上頚交感神経節ブロックの安全性について

本ブロックは私が開発したブロックです。詳細は「上頚交感神経節ブロック」の項目に記載してあります。安全性に関しては「私が行う場合」に限ってですが後遺症を残すような事例は、開始6年以上経過していますが0です。出血による血腫、感染、刺入部の痛みなども0です。神経損傷もありません。長期(1年以上)毎週の治療でも合併症はありません。


注射後にめまい、むせる、顔面神経の一時的な麻痺、嗄声は時に見られることがありますが数十分以内に回復します。注射後動悸が約1時間続いたという経験が1例ありました。よって心疾患がある場合は注意したほうがよいかもしれません。注射翌日にリバウンドとみられる後頭部痛の例が三叉神経痛の患者にあるなど、多少の副反応が見られましたがどれも大きな症状ではありません。抗血小板、抗凝固系の薬を服用している場合は脳出血などに留意しなければならないと思われますが、出血例は0です。ブロック後の体調不良も0です。私はほぼ毎週、自分の首に上頚交感神経節ブロックを行い、安全性の確認を続けています。


本ブロックでは既製品では最も細い27G針を用い、そして組織を損傷させないように極めてゆっくり安全性を確認しながら針を進め、そして液体の抵抗のないところで圧をかけずに注射しています。よって注射の痛みはほとんどなく、注射後の違和感も出血もほとんどありません。自分の首に注射しながら安全性を日々研究していますので。


星状神経節ブロックと上頚交感神経節ブロックの違い

星状神経節ブロックも上頚交感神経節ブロックも頸部交感神経節ブロックという意味で同じようなものです。しかし上頚神経節ブロックは通常の星状神経節ブロックとは異なり、両サイドに行います。両サイドに行ったことで呼吸困難が起こったなどの事例は0です。星状神経節ブロック後のようなのど周辺の違和感なども起こりません。星状神経節ブロックでは胸部の血流も上昇させますが、上頚交感神経節ブロックでは頭・頸部のみの血流を増加させます。そのため、血流が胸部に盗まれることがない分、頭部の血流増加の効果が高いと思われます。さらに、星状神経節ブロックは左右のどちらかの血流増加を行いますが、上頚交感神経節ブロックでは両側の血流増加が期待できる分、星状神経節ブロックよりも効果が高いと思われます。


今後、かすれ声、声が出ないなどの症状がある方は、ここに投稿していただきますと幸いです。症例が集まれば、本治療法はゆるぎないものとなるのですから。

原因不明の「声が出ない(かすれ)病」の治療法」への13件のフィードバック

  1. こんにちは。
    二年前に怪我をし、直後から頚椎症やバレリュー症候群のような症状に悩んでおります。
    (頚部痛、かすれ声、頭痛等)

    整形外科、脊髄外来でのMRI診断では、やや脊髄神経の通り道が狭いとのことでしたが、原因の特定には至りませんでした。
    咽喉科では、声帯を動かす前筋が、うまく動いていないという指摘がありました。

    このサイトを拝見して、
    上頚交感神経ブロック治療を試すことができたらと考えております。
    大変恐縮ですが、診療をお願いすることはできますでしょうか。

    よろしくお願いいたします。

    • 上頚交感神経節ブロックはおそらく、頸髄よりも上にある脳神経を治療する方法としては、唯一無二かつ、現存する医療の中で最も効果のある治療であると断言します。しかしながら、上頚交感神経節ブロックは、たかが注射であり、あなたの骨格や遺伝子、日常生活の悪しき習慣を治すことはできません。過度の期待を持たず、他力本願にせず、姿勢や運動など身の回りを改善する努力をおしまなければブロック注射が奏効して少しずつ改善していくと思います。東京近郊に在住していることを望みますが、そうでない場合も、一度は治療を受けてみて、「治る可能性」があるかどうかを試してみることをお勧めします。メールさしあげますが、PCからのメールを拒否する設定であると、届かないことがございますのでご注意下さい。

      • お返事ありがとうございます。

        姿勢や運動リハビリ等、少しずつ試していますが、必要なことをみつけてやっていきたいと思っています。

        千葉に在住しております。
        治療できる可能性があるか試してみたく思います。

        昨日お送りしたアドレスが携帯のアドレスでしたので、
        恐れ入りますが、PCアドレスにお送りいただくことはできますでしょうか。
        よろしくお願いいたします。

  2. 去年の5月頃から声が出にくいので慈恵大柏病院で、レントゲンや胃カメラまで検査結果は異常無しでした。60才。老化か、声のリハビリ? 飲食時も痛くないし、他はとても元気です❗お喋りだけが病気です。大きな地震があった時に、丁度、ゴルフ習ったばかりで夢中になり 放射線を沢山浴びたから?韓国生まれで辛い、ワサビ等 刺激あるものが好きです。歯医者で麻酔をした後から声がおかしくなった気もしますが、麻痺もしてないようです。久しぶりにの友達と電話すると、その声どうしたの?風邪?と、言われます。

    • 原因が不明の声の異常の場合、多くは反回神経よりも中枢で何かが起こっていると想定しています。そのため中枢の血行を改善させる治療を行うのですが、それは100%確実に治せるものではありません。なぜなら原因不明だからです。とにかく治療を受けて見なければ改善するかどうかがわかりません。ただし、私は「原因不明なもの」を専門に治療を試みる医師ですので希望は持てると思います。原因はわからないにしても、治療後にわずかな変化でもあれば期待が持てます。柏市近辺にお住まいですので通院が可能だと思いますのでメールをさしあげます。

  3. 咽喉科でストレスと疲れで声帯が閉じないので声が出にくいと診断されました
    一ヶ月経過しましたが少し声は出ますがかすれ声のままです
    内服薬も吸入器も効果が無いので経過を待つのみです
    クリニックでは大学病院より開業医に行く方が良いと言われましたが
    助言して下さい

    • 声が出ないのはおそらく反回神経が障害を受けているからですが、その原因が末梢ではなく中枢にある場合、現医学では治療不能です。中枢とは迷走神経の核のことであり、延髄にあります。おそらく、延髄の一部に血行不良などの不具合が生じていると思われますが、現医学のレベルではそれを発見することも治すこともできません。私は、上頚神経節ブロックをを用いて延髄の血行を改善させる医療技術を持っています。このブロックが現状、唯一の治療法と思われますが、治る保証はありません。なぜなら、反回神経の障害が、仮死であれば、血行改善で治るかもしれませんが、壊死した状態なら血行を改善させても回復しないからです。壊死の場合は、回復ではなく細胞新生が必要であり、細胞新生にはかなりの長期間を必要とすると思います。仮死状態であれば、比較的早く治る可能性もあります。治療してみますか?

  4. はじめまして。
    自分の今の状態を何度も検索し続けていたところ、こちらのページにたどり着きました。
    民謡をしています。
    1年ほど前から、歌っていると何となく、声が出しづらいなぁと思うようになり、
    そのうち高音が空気が漏れるような声になり、ロングトーンが特に空気漏れがひどいです。
    声がひっくり返ったりもします。

    ポリープか結節でもできたとばかり思い、咽喉科に何件も行きましたが、声帯は教科書に載るくらい綺麗だと毎回言われます。
    ですが、一年経った今も空気漏れの状態が変わりません。

    普段の話す声には全く問題がなく、
    歌になると空気漏れで声がかすれて、ストレートな声が出ません。
    歌っていてもとても苦しいです。

    普段の話し声に問題がないという事は、声帯の病気ではないのでしょうか?

    何か考えられる病気はありますでしょうか?

    • 声帯に異常がない場合は反回神経の不調があるかもしれません。このHPは病気の原因を見つけるサイトではなく、原因がわかろうがわからないだろうが、治すことに全力を尽くす方法を見つけ出すサイトです。そこのところをどうか誤解なく。つまり原因がはっきりしない難治性の疾患を「治す事で原因を後ろ向きに予測する」知恵です。賛同いただけるのでしたら上頚神経節ブロックをご案内します。

  5. 初めてごそうだんさせていただきます。
    1度目は、1月、その時はなんとなく風邪かな?と思い耳鼻咽喉科にかかり、喉が赤いから風邪と診断されましたが治るのに1ヶ月以上かかりました。
    今回は、5月4日からこえがでなくなり耳鼻咽喉科でファイバースコープでみてもらい声帯が普通は、赤くなるのに白くはれていると首をかしげるばかりで未だに完治しません。神経内科では、脳から来る事はないからもう一度耳鼻科に行く様言われましたが、原因がわからなくてこまつてます。
    ご意見を伺いたくよろしくお願いします。

    • 声帯に器質的な異常がある場合当然ながら私の出番はありません。白く腫れているという診断が正しいかどうかははっきりわかりませんが、これが真実であり、声が出ない原因と一致するのであれば、私の治療は無駄です。一致しない場合は神経的な原因が考えられるかもしれませんので、その場合は私の治療が有効となります。

       まあ、後者の場合は治療できる医師がいませんので、私が実際にブロック治療を行い、効果を見て見る以外に方法がないかと思います。

      • お返事有難うございました。
        風邪でもないし、普通は歌手とか声を使う仕事の人がなるのだけど?と首をかしげて気管支喘息、気道の炎症を抑える薬をいただいたのでもう少し様子を見て
        改善しない場合はまたご連絡のうえお世話になりたいと思いますのでよろしくお願い致します。

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