パーキンソン症のブロック治療の効果紹介

2017年治療成績

はじめに

パーキンソン病、パーキンソン症候群に根治療法のない難病に指定されています。治療薬はなく、対症療法としてL-Dopaがあります。新薬は開発され続けていますが、どれも治す薬ではなく、補うものばかりです。すなわち、現医学では誰にも治すことのできない難病ですが、上頚神経節ブロックでパーキンソン症候群による企図震戦を治癒に向かわせることができましたのでその治療成果を報告します。この治療成果後、4例の高齢者の小刻み歩行、手の震えに対し、積極的に上頚神経節ブロックを開始したところ、ほぼ必ず軽快し歩行能力が上昇することが判明しました。よって小刻み歩行は症状が軽度のうちに治療をすれば、改善の余地があり、歩行時のふらつきや転倒を防止できることができることがわかりました。しかし、症状が進行してからでは本ブロックを行っても容易には反応しないことが予想されますので、パーキンソン症候群の治療は診断がなされる前に小刻み歩行などが見られた時点でいち早く治療を開始していくべきだと思われます。また、現在、完全にパーキンソン病と診断され、その病状が進行してしまっている患者にも本ブロックを行っています。追って成果を報告します。


症例 72歳女性 主訴 四六時中企図震戦(何かをしようと意識すると手が震える)が起こる 既往歴 10年前から糖尿病


現病歴 5年前から両下肢のしびれがあり、近医で「糖尿病性だから仕方がない」と言われていた。当院の整形外科にかかるが、MRIなどの所見に乏しいことから、「しびれは糖尿病性」と判断され、しかも担当医はその診断を納得しない彼女に如実な嫌悪感を表し「私が説明しても糖尿病性であることを信じない患者である」とカルテに記載してあった。 彼女はt両下肢のしびれに大きな不満を持ち、日本で脊椎の手術症例が屈指のK病院に行くが、そこでも「MRIで所見が乏しいため」との理由で放置された。このような既往があるため、カルテにはブラックリストのマークがつけられ、彼女との診療には注意をするようにとのお達しが医療従事者に回ることになる。


H25.7.17、担当医が「しびれが脳由来であることもある」と説明し、脳のMRIをとるが陳旧性の脳梗塞の画像のみであった。


H26.5.27、以前からあった両下肢のしびれと左下肢痛の診療依頼を私が受ける。この日、私の初診時、腰部硬膜外ブロックを行う。その後しびれが軽快しており、多くの医師たちが信じて疑わなかった「糖尿病性のしびれ」ではないことが確定。腰神経根由来のしびれであったことを、私がブロックで治療することで証明して見せた(他の医師のメンツをつぶすことになる)。以降、毎週ブロックを行い、しびれが日ごと軽快してきている。


H26.6.17、最近、何かをしようとすると手が震えてしまうということを同院の脳外科医に相談したところ「それはパーキンソン症候群だから何もすることがない」と言われる。同、脳外科医が脳のMRI検査を行うことを指示するが、彼女はこれを拒否。放置されることになる。


H26.7.1、そろそろ彼女と私の信頼関係が成立していると判断。私は「上頚神経節ブロックで手の震えを治せる可能性がある」ことを説明する。「彼女はぜひやってください」と言うので、この日から上頚神経節ブロックを週に1回の割合で行うことになる。もちろん、腰部硬膜外ブロックを毎週行うついでに上頚神経節ブロックを行う。


 治療経過

7/1 7/8 7/15と3回、上頚神経節ブロックを行うが、全く効果なし。しかし、私は最初に「この治療は効果が出るまでに時間がかかる」ことを説明しておいたので彼女はあきらめず、毎回ブロックを快く受けた。

7/22 彼女は初めて「震えが止まる時がある」と治療効果が出たことを私に報告

7/29 震えがない時間帯が増えてきたと私に報告

8/5 震える回数や時間が激減し、ほとんど震えなくなったと報告

その後の経過は下のビデオをご覧下さい


パーキンソン症候群患者のその後

本患者は肺炎をおこし入院し、その後私の外来に4か月以上来院しませんでした。久しぶりに来院した時、彼女の歩行はとてもぎこちなく、さらに両手がかなり震えていました。彼女に再度上頚神経節ブロックを行いましたが全く効果がありませんでした。何度も根気よく通院させるにも、彼女は「一度ブロックしても効果がなかった」ことで治療をあきらめてしまい、その後は来院しなくなりました。誠に残念でなりません。


82歳女性 小刻み歩行の治癒例

膝と腰の治療で遠方(1.5時間かかる)から私の外来に電車通院されている方です。それほど歩行能力が高いのですが、2か月前から小刻み歩行が起こり、椅子に腰かけようとしても椅子を通り越してしまい、座れずに転倒しそうになると私に訴えました。なぜ2か月も経ってから私に相談したかというと「相談しても治せるはずがない」と思っていたからだそうです。ところが私はこの患者の胃部不快を胸部硬膜外ブロックで治して差し上げたところ「この先生になら治らない病気も治せるかもしれない」と思い、ようやく相談することに決めたそうです。

上頚交感神経節ブロックを2回行い、小刻み歩行はすみやかに完治しました。以降3か月以上たちますが、それ以来小刻み歩行は出ていません。


転びそうになる歩行の改善例

小刻み歩行を改善させることで転倒を防ぐことができることを上記の例から学んだ私は、「足がふらつく」と訴える患者は「腰椎由来だけではなく脳由来のものが多々ある」ことを考え始めました。それはパーキンソン症候群とは呼べないもので、診断名がなく、「老化による歩行能力の低下」とひとまとめにくくられているものです。治療法がないどころか、病名も対症療法薬も全くない墓場的な高齢病です。

そこで、腰椎への硬膜外ブロックなどを定期的に行っても歩行能力がなかなか改善しない高齢者を対象に上頚神経節ブロックを4~5名に行いました。すると全例で「歩幅が広がる」「動作が滑らかになる」「歩く速さがアップする」などの具体的な効果が認められました。超高齢社会を支える上で、本治療法は極めて重要な鍵となるでしょう。今後も症例数を積み、その成果を報告していきたいと思います。

パーキンソン症のブロック治療の効果紹介」への14件のフィードバック

  1. 私の母(82歳)のことについて伺いたいと思います。
    3年ぐらい前にパーキンソン病を患い今に至っていますが担当の先生のお話では症状は軽いほうだといわれました。
    症状は左足がふるえ体に力がなく夜にあまり眠れなくて睡眠薬をもらっているのですが飲みたがりません。
    瞼が重いみたいです。
    もし先生の所に通うとなればどのくらいの期間がかかるでしょうか。
    診察しないとわからないと思いますが概算でよろしいのでよろしくお願いします。

    • 私の外来には小刻み歩行に悩む82歳の女性がいます。半年前から出現したその症状を私に相談し、さっそく上頚交感神経節ブロックを3回/3週行いましたところ小刻み歩行が完治しましたという症例をつい最近経験しました。初期の症状であれば数回の治療でも改善すると思われます。ただし、その女性は小刻み歩行のみの症状であり、パーキンソン症候群との診断もついておりません。症状の強さに応じて、効果が異なると思われますので、治療して皆が数回で治るとは思えません。可能性にかけてみるしかないと思います。

  2. メールありがとうございます。
    私自信としては可能性にかけてみたいと思っています。
    (本人に相談してみないとわかりませんが?)
    できましたら住所と電話番号を教えてもらえないでしょうか。
    よろしくお願いします。

  3. 私の妹が2年前位からパーキンソン病でお力を貸して下さい。宜しくお願い致します。ご連絡お待ちしております。

    • ここに挙げたパーキンソン症の症例はパーキンソン病とは異なります。脳血管の閉塞・血栓などで脳の血流が悪くなって起こるパーキンソン症候群と、脳の基底核の病気であるパーキンソン病の違いです。悪化している場所は同じでも、悪化の原因が異なります。私の治療はパーキンソン症(症候群)には極めて有効ですが、まだパーキンソン病への有効性が確認されていません。現在、パーキンソン病の50代男性を週1回の頻度で4か月間治療中です。症状に変化が現れましたが、改善したとまでは言い難いです。ただし、進行は抑えられると感じます。私の治療は脳の基底核の血流を良くするというものであり、「良くしたから基底核の病変が治癒する」とは限りません。ただし、パーキンソン病の治療法の一つとして「針治療」などもあることから、血流を良くすれば改善傾向があることは間違いないと思います。私の行う上頚神経節ブロックは、直後に眠くなるので一時的に数時間、症状が悪化します。パーキンソン病は脳の活動が低下すると症状が悪化し、興奮すると症状が軽くなるという特徴のためです。患者の中には、その一時的な悪化を不安に思い、治療を中断される方もおられます。いずれにしろ一度で治るものではなく、継続の治療が必要と思われ、そのためには私の勤務先の近くに住んでいることが治療条件になります。まあ、近くに住んでいないとしても一度だけでもブロック注射を受けてみる価値があると思います。

  4. 初めまして 私は50代後半で女性です

    2010年秋頃に右手の動かしづらさを自覚し、すぐに大学病院を受診したところパーキンソン病と診断されました。、
    処方されたLドーパが全く効かなかった為、服薬を中断しパーキンソンに良いとされる鍼灸や漢方、グルタチオン点滴、ビタミンB12 筋注、腸内環境改善、重金属除去など様々な療法を
    試しましたが改善には至りませんでした。

    並行して大学病院や評判の良いクリニックを渡り歩き、どこでもパーキンソン病と診断されてLドーパを効いてくるまで増やしなさいと指導されますが、全く効果の感じない、脳にダイレクトに届く薬を増やすことには不安を感じて、Lドーパは飲んでおらず、今は唯一多少効果のあるシンメトレルのみです。
    そんな中でパーキンソン病ではないと診断する個人クリニック神経内科医がおり、この医師からは一年置いて2度の診察を受けて2度とも否定され、心療内科に行くように言われ、心療内科へも幾つも行きましたが、神経内科へ行った方が良いと言われ堂々巡りです。

    そうこうしていたら症状は徐々に進み、現在は手の動きづらさは両手に及び、歩きずらさ、姿勢バランス障害、動作緩慢、書字困難があり、日常生活に制約を受けています。
    緊張が無ければ震えはないですが、緊張しやすく、そうなると右手だけ震えます。

    また狭くて物が色々ある部屋で立ちすくみ、前方に多勢の人がいると、つんのめり歩きになります。
    しかし何故か階段はスイスイ昇り、走る時は足の不自由を感じません。

    私はずっとパーキンソン病は交感神経の興奮による脳の血流障害説を信じていました。
    しかし星状神経節ブロック注射や脳への鍼を施すと頭に血が上って湯当たりした様な状態になり却ってフラフラ、体は重だるくなります。アルコールでも重だるくなり、頻尿傾向もあります。
    素人考えですが、これは交感神経ではなく副交感神経優位症状なのでしょうか。
    子供の頃からダニアレルギーでもあります。

    ごく最近、大学病院の高名な教授の診断を初診で受け、診断はパーキンソンはなく多系統萎縮症の疑いがあると言われ
    大変なショックと困惑状態です。MRI、ダットスキャン異常なしです

    先生のご指導をたまわれば幸いに思います
    住まいは都内へのアクセス良いです

    • Lドーパが無効な時点で通常のパーキンソン病ではないでしょう。脳血管性のパーキンソンでは交感神経節ブロックが有効のはずですが、それで逆に悪化するとなると・・・私には打つ手がないかもしれません。自己免疫などがかかわっている脳萎縮ということでしょうか・・・。ただ、一度は私の上頚神経節ブロックを受けていただいたほうが、今後の参考にもなると思われますので一度後来院ください。

  5. はじめまして。
    74才の母がパーキンソン病と診断されました。
    L-ドパを飲んでおりますが、とても疲れやすいらしく、薬を飲んでも症状の改善がすこしもありません。
    疲れがひどいと担当医に言うと、鬱病だと言われ、精神科に回されましたがまだ疲れるようです。

    私も医療系で、パートナーも医大生ですが、大学病院の先生にパーキンソン病の症状に疲れがないと言われるのには少し驚きです。
    こちらは福岡ですが、ブロック療法で良いお医者様をご存知ないでしょうか?

    • パーキンソン病とパーキンソン症は意味が異なります。症は「病と似たような症状を呈する他の病気」という意味があります。つまり、ここで言うパーキンソン症とは「パーキンソン病と同様な症状を呈するが、パーキンソン病ではない症候群」という意味です。疲れはパーキンソン病に特徴的ではありません。ですが、そこに他の病態が混ざっていると思われます。純粋なパーキンソン病ではないということです。よって、純粋ではない部分はブロックで軽減できる可能性があります。

       残念ながら、現在、私と同様の考え方でブロックを行える医師は奈良県と東京の2か所のみです。お力になれずすいません。

  6. 治したという報告は嘘のようです。
    ご本人からのコメントです。

    「パーキンソン病は根が深い病気ですので治るには奇蹟が必要です。奇蹟を起こすには人並みはずれた情熱と人を信じる心が必要です。普通の人はそれがないのでまず不成功に終わります。よってオススメしていません。
     少し改善させる程度であれば可能です。が、それも私たちを信じる心が必要です。なぜならば私たち以外に「改善させることができる」と宣言している人がいないからです。もし、そういう方がおられるなら、まずそちらにかかることをオススメします。パーキンソン病は根が深い病気です。」

    • 誤解されていますね。パーキンソン病とパーキンソン症は異なる病態です。「病」と「症」は意味が違います。「症」は治せるが「病」は治せないという意味なのです。一般の方には難しい話なのですが、これは医学的には大きな差異なのです。この誤解を生む診断名の定義はやがて解決されていくと思います。

    • トリックという言い方は正しくありません すりかえるなどという意図的なこともありません。VTRにあるパーキンソン病となっているところは、申し訳ありませんが私のミスです。VTR上なので差し替えが難しいためこのままでいきたいと思います。症と病の違いは非常にあいまいですが、これは私のトリックではなく、医学上の言葉の定義ですのでご容赦ください。

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