第五十六話 分身

O先生は昔から「不動明王」の意志を言葉で読み取る能力があり、お告げには極めて忠実です。これまでも幾度もお告げを聞き、その度にお告げ通りに全国のパワースポットを巡ったそうです。

奥様にもお告げは降りてきますが、それは言葉としてはっきりわかるものではなく、奥様が意思表示した時に右手に電気が走ることにより「返答がある」ということはあるようです。他にもいろいろサインのようなことが頭に響くことがあるようですが、「お告げ」として言葉ではっきり理解できるようになるにはかなり高い能力が必要なようです。奥様は今のところはまだまだそこまで開花していません。※2017年11月時点

お告げというと、オカルトに聞こえますが、実はそれほど珍しいものではありません。私たち一般人も「何か嫌な予感がする」とか「くじが当たりそうな気がする」などの気配を感じることができるときがありますが、これも一種のなにかの予兆でしょう。

ですから予兆は「誰もが受けている」ものです。ただ、能力の高い者は次元の高いお告げを聞くことができるということになります。巫女は次元の高い意識体と交信できる者をそう呼ぶのですが、奥様はまだ見習いといったところでしょうか。

さて、奥様はとても朝寝坊なのですが、いつも休診日の明け方4時くらいにむくっと起き上がり、5時前には出かけます。それは師のお寺に行って護摩の火にあたるためです。

能力者は波動を受けて健康が崩れやすいという宿命にあるため、よい波動を浴びて悪い波動を払う必要があります。能力者はその能力が強いほどお払いも頻繁に行わなければ身が持ちません。だから奥様にとって護摩の火にあたりに行くのはメンテナンスなのです。護摩の火を浴びに行った時のО先生とのお話しの時間が奥様にとって師匠からのお話が聞ける貴重な時間となります。

だからこそ、高松のブラックホールシール事件後の2017年11月4日の早朝、О先生から奥様に「ご不動さまから『この者に分身を与えよ』とお告げがあった」と言われたことは、そんな見習い修行中の奥様にとっては今までのマイナス事件を一気にかき消すほどとてもとても一大事なことでした。

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「あなたに分身を与えなさいってお告げがあったの。これって結構珍しいことなのよ。企業を助けるようにしなさいというようなお告げが来ることはあるのだけれど個人に分身を与えるってことはそうそうないわね。」

不動明王と言えば、仏界の中でも極めて位の高い存在であり、厳しい修業を果てしなく行い、悟りを開き、精神を極めない限り直接お告げをいただくことはないからです。奥様にとってご不動様からお告げをいただくことは「この世に生まれて功徳を積んだ証、認められた証」をいただいたようなものですから、感激を超えて気絶するほどの喜びです。

 奥様はО先生より開眼されてから導かれるよう加持を始め、そのため患者の悪い波動を毎日受けるようになり、さすがに自分の体がどうなっているのかわからないようでした。

しかし、分身を身近に置けるとなるとその心配がかなり減ります。分身から受ける良質な波動で悪い波動を駆逐できるのでまさに奥様には必要不可欠だったからです。О先生はこうも言ったといいます。

「加持は自分の命を削りながらする行いですからね。体がとても疲れるのよ。だから体を守りながらしないとだめですからね」

たくさんの能力者がその体の消耗で突然命を絶たれることがあるといいます。その怖さをО先生は繰り返し奥様に話すそうです。だからこその分身なのですが、私は正直に、この出来事は奥様の快挙であると思います。仏教界の規律・戒律は非常に厳しく、弟子入りとて極めてハードルの高いものです。それなのに奥様は在家でありながらたったの一年で弟子入り、そして分身を頂くという例外を達成されたわけですから、なんとすごいことでしょう。

 もちろん、本当にすごいのは師のO先生のほうです。奥様の資質を見抜き、ご不動様のお告げを聞くことができるからです。普通の僧侶では絶対にありえないことですから。

 分身と言っても、まずはご不動様を仏師に彫刻していただくところから行わなければなりません。O先生は

「分身といっても、ご不動様の大きさがあってね、小さなものは50㎝くらいのものから大きいものは背丈くらいあるものまであってね・・・」と話します。奥様は

「小さいのでいいです」ととても殊勝です。

「そうね、小さくてもお力は同じですからね。八千枚供養のときに一緒にご祈祷して魂を入れてさしあげますね。」

 分身は、魂を入れる作業を行うのですが、これを行う僧侶の法力によってご利益の力が変わってしまいます。師のお寺の僧侶は師の甥にあたる方で、法力に優れた方です。これまでも奥様の相談に何度も乗ってくれています。その方が魂を入れてくださるので大変心強いです。

 奥様はお寺から帰ると私の事の一部始終を話し私を驚かせてくれました。仏教界の快挙をこれほどスムーズにすたすたこなしていく奥様は一体何者なのでしょう? 本当に将来が楽しみです。