仙骨孔の同定方法(単純XP)

はじめに

仙骨の破格を調べるためには仙骨の単純XPを読めなければならない。また、腰椎の高位診断のために仙骨孔のナンバーリングが必要になる。が、この部分は1、破格が非常に多く個性に富む、2、成長過程で形態が変化、3、骨格の重なりが複雑、4、腸管ガスや糞便が重なる、などの理由により読影が非常に難しい。特に仙骨孔は後仙骨孔で丸く、前仙骨孔で楕円で横に長く、上位で前後の距離が長く下位で短いなどの特徴があり同定は極めて難しい。ここではその同定方法について詳しく述べる。

1枚の仙骨XPより

まず下のXP(8歳男性)の仙骨孔がどこにあるか?予想してみよう。ここで仙骨孔という場合は後仙骨孔のことを指す。前仙骨孔は前方に末広がりになるのでクリアには見えない。 Koi10
もし、すぐに見つかった!と答えた人は、その同定は間違っている。仙骨孔はすぐに見つかるほど簡単な位置にクリアには見えない!見つけるためには仙骨の発生学的知識が不可欠となる。

仙骨の発生学

仙椎も腰椎も基本的な形態は大差がない。つまり仙骨は5つの腰椎が癒合しているようなものと想像してほしい。癒合している5椎を頭の中で切り離すイメージを作り出さないと仙骨孔は見えてこない。下にそのイメージを示す。 Koi11
図の左側に5つの腰椎を意図的に置いた。理解しやすいように3Dのイメージにした。仙骨はこの図のように横突起が大きくなって上下で癒合することで形成されている。そして癒合した横突起の先端は仙腸関節面となっているがこれはS1からS3の仙椎の横突起で形成されているのが普通である。赤の矢印が示す弧を描く白い線は仙骨孔を同定する上でもっとも重要となるのでこの線が何を意味するかを認識しておかなければならない。弧を描く白い線の正体は下関節突起の外縁(発生学上)である。
この”弧を描く白い線”の上部は椎弓根となる。椎弓根も重要なマークなので腰椎の椎弓根と仙椎の椎弓根を全て同定出来なければならない。
ではここで演習をする。S1からS5までの椎弓根を全て同定してほしい。答えは以下。 Koi12
  この図のように椎弓根は”弧を描く白い線”に接するように外側に存在する。椎弓根を同定すると仙骨の神経根の走行をイメージすることができるようになる。下図。 Koi13
神経根の走行は椎弓根と重なることは絶対にない。そして仙骨孔はこの黄色いライン上付近のどこかに開いている。「付近」と書いた理由はS1とS2の仙骨孔は厚みがあるため仙骨の傾きによっては黄色いラインよりも孔の陰影が上方に少しシフトするからである。そのシフトも考慮して仙骨孔を探さなければならない。まだまだ探索は始まったばかり。簡単には見えてこない。

椎弓間孔を同定する

仙椎の下関節突起外縁と椎弓根を同定できてもまだ仙骨孔は見えてこない。次に同定しなければならないのは椎弓間孔である。椎弓間孔は腰椎硬膜外ブロックや腰椎麻酔の際に針を刺入す重要なポイントなので知らない人はいない。だが成人の仙骨の場合、普通は椎弓間孔は閉じていて見えない。だが小児ではこれが開存していることが多い。そして成人の場合でも薄く孔のラインが残るので集中して見れば見えてくる。次に示す図は12歳男性の仙骨XPである。特に椎弓間孔がクリアにわかる写真を選んだ。
Koi14
この図では椎弓間孔と横突起の癒合ラインを誇張してある。図の左半分はイラスト化し、右半分は元のままにしてあるので比較しながら見てほしい(黄色は棘突起)。仙骨孔は椎弓間孔と連続していることがわかる。これで仙骨孔を同定する材料が全て揃った。仙骨孔の位置は以下の項目を参考にして探す。
  • 1、椎弓根を同定する。仙骨孔は必ず椎弓根と椎弓根の間の高さにある。
  • 2、”弧を描く白い線”(下関節突起外縁)のライン上かラインに接する場所にある。
  • 3、椎弓間孔と連続し、その外側にある。
  • 4、仙骨孔は左右対称に開いていることが多いので左右のどちらかを先に見つけ、反対側を探すとう手法をとる。
 
仙骨孔の開口部を探すには、上の1~4を実行し、「ここに孔があるはずだ」という部分を推定する。その上で、推定部分を等倍以上に拡大し、かつコントラストを調整したXPで見つける。グラフィック処理や拡大ができない場合、そして解剖学的知識を持たない場合は見つけることは不可能に近い。なぜなら横突起間溝や糞便に混じった気泡を仙骨孔だと見誤ることがしばしばあるからだ。そしてもう一つ同定困難な理由をあげると、仙骨には破格が多く、解剖学的知識が十分にあっても判別が困難な場合が少なくないからである。以下に判別が困難な例を示す。

仙骨孔の同定が困難な症例

Koi15 仙骨孔を同定する作業を行うと、仙骨孔が5つある症例に多数遭遇する。5つ+仙骨裂孔=6つの孔なのでこれは仙椎が6つあるAnomalyである。下の症例も仙椎が6つあるAnomalyであり、S3とS4の仙骨孔を同定することが非常に困難な例である。
1~4の手順通り、まずは椎弓根(Pedicle)を探す。するとS3とS4のPedicleがよくわからない。下関節突起外側縁の”弧を描く白い線”はS3までは同定できるがS4がよくわからない。椎弓間孔はS3/4と思われるスペースが縦に8の字型に開いていて、さらに二分脊椎がある。これはおそらく二つの椎弓間孔が二分脊椎の存在のおかげで一続きになり、8の字化しているものと推測する。そしてこの8の字の孔の外側には3番目の仙骨孔と4番目の仙骨孔と思わしき陰影がある。これらより、この仙骨はS3がS3と4の二つに分かれてしまったAnomalyと判断した。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です