細胞適応とターンオーバー

細胞適応とターンオーバー

生理的あるいは病的刺激に対し細胞が新しい恒常性を獲得することを細胞適応といいます。細胞適応には
  • A、成長と分化における適応(過形成、肥大、委縮、化生)
  • B、細胞内蓄積(正常細胞構成成分(水、炭水化物、脂肪、蛋白)の蓄積、遺伝子異常または代謝異常の結果で内因性物質が蓄積、色素の蓄積)
  • C、病的石灰化
  • D、硝子化
  • E、細胞老化
  • その他
などがあります。様々なストレスにより細胞適応を生じた体細胞は自己抗体の標的となります。現免疫学では生きている体細胞にマクロファージは攻撃しないという憶測的な認識をしていますが、おそらくこの認識は間違いでしょう。細胞適応しながら生きている細胞をマクロファージが感知するシステムがあるはずと考えます。
現在判明しているのは死細胞表面上にのみ存在するMilk Fat Globule EGF Factor 8 (MFG-E8)と呼ばれる分子をマクロファージが感知し、死細胞の貪食を促進する機能を有するという事実のみであり、生きている体細胞を誤認して食する病的なシステムや細胞適応を起こした細胞を食するシステムなどは未解明の分野です。
恐らく細胞適応を起こした細胞を排除する仕組みには自己抗体が関与していると推測します。自己抗体が変化を起こした細胞を感知し撤廃作業にとりかかり、新たな細胞に置き換える先導役となるわけです。こうして細胞適応は細胞のターンオーバーのスイッチとなりうると推測します。 広義で考えれば細胞適応の中には悪性腫瘍も含まれ、悪性腫瘍細胞も自己抗体の撤廃作業の標的となると思われますが、自己抗体による撤廃作業がその増生速度に追いつかない場合、または自己抗体が正しく作動しない場合、悪性腫瘍は増え続け、最後には個体主を死に至らしめます。おそらくマクロファージは生きている癌細胞を細胞適応と認識し、多少は攻撃を仕掛けていると思われますが、増生スピードに貪食スピードが追い付かないと思われます。
現医学では「マクロファージは癌細胞を攻撃しない」との見解ですが、これは恐らく誤っていると思われます。なぜなら癌が自然縮小することもあるからです。マクロファージによって食されるからこそ縮小すると思われます。これは今後の癌研究の課題でしょう。
今後の医学の考え方として重要なことは、自己抗体は決して悪者ではないということ、どの程度の細胞適応に対して自己抗体が攻撃し始めるか?のトリガーを考えて治療や生活指導をしていかなければならないということです。 膠原病患者ではトリガーが異常に低くなっていたり、自己抗体が増えていたりしますが、膠原病内科学では細胞適応を減少させるための生活指導をして治療するという概念が皆無です。今後の医学では自己抗体の抑制にばかり注目するのではなく、細胞適応を減少させる生活指導へと目を向けていく必要があります。
膠原病は自己抗体が活発過ぎて、正常細胞までをも攻撃してしまい、マクロファージが集積し、その死骸などが多すぎて修復不可能となり、たまった死骸が細胞適応を起こして膠原線維化するものと考えます。つまり線維化も細胞適応の一つです。
さて、細胞適応は、この世に生きている限り避けることはできません。Eの細胞老化は今後の医学ではもっとも伸びていかなければならない分野の研究と思われます。 基本的に細胞自体が老化することはありません。人の細胞は常に入れ替わっており、高齢者の体細胞でさえ全て新品の細胞で作られています。 この疑問を考える研究が現在急速に進んでいますが、現在「寿命は活性化酸素などによる累積障害とこれに対する防御機構により決まる」と言う有力な説があります。老化=活性酸素の累積ともいえるということです。まあ、老化はそれだけではなく、DNAの複製に次ぐ複製でオリジナルが消えてしまうという現象でもあると思われます。
活性化酸素の累積を防ぐ手段は、その防御機構を高める方法と活性化酸素を累積させるようなストレスを与えない生活を送る方法があり、日常損傷病学ではその両方のアプローチで組織の老化を抑える治療に取り組みます。 その最重要課題として細胞適応と自己抗体による攻撃を抑制する治療を考案していきます。 体内のゴミや有害物質、過剰栄養物質を食したマクロファージが、その食べた物を消化できなかった場合にどういう病気を人体にもたらすか?ということを考えることが今後の医学が研究を進めていかなければならないところでしょう。

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