感染症にステロイドを使うことは禁忌という非常識

感染症にステロイドを使うことは禁忌という非常識

インフルエンザに罹患した際に異常な高熱が出る場合がありますが、我々の体内においてはその際、副腎皮質からコルチゾール(ステロイド)が多く分泌されます。体中で発生している過剰な炎症を消退させるためです。全身で炎症が発生すると40度以上の高熱が出現することもあり、コルチゾールの分泌が不十分であると熱がさらに上昇し熱性けいれんなどに発展する恐れがあります。よって「医師たちが感染にステロイドは禁忌」と宣言しようとも、副腎からは容赦なくステロイドが大量に分泌されます。このことから「感染にステロイドは禁忌」という考え方は思慮の浅い見解であると思われます。
また、白癬の二次感染などで足が化膿した場合もステロイドが分泌されます。どの程度の感染でどの程度の量が分泌されるのかまではわかりませんが、糖尿病患者で白癬の二次感染が起こると、血糖値が急激に悪化(上昇)することから推測すると、感染時にはそれなりのステロイドが分泌されていることがわかります。皮膚科の医師は白癬二次感染でステロイドを使用すると劇的に改善することを認識しているので、肘や足関節の可能性滑液包炎や蜂窩織炎にもステロイドを塗布し、そして抗生剤の併用で、感染巣を素早く治します。しかし、外科医や整形外科医はステロイドを使用すると免疫力が低下して感染が広がるという「めったに起こらないこと」を信じており、ステロイドを使用する者はおらず、よって感染を遷延化させて悪化させる場合が多いようです。そして切開排膿です。さすがは外科医。医師も科によってこれほど考え方に大きな隔たりがあります。
同様に打撲や捻挫、骨折においてもステロイドは副腎皮質から十分に分泌されています。それが証拠に糖尿病患者では打撲や捻挫後に血糖値がかなり上がります。これらのことから「感染にステロイドは禁忌」という考え方を一刻も早く改めることを医学界に希望します。禁忌ではなく使用方法を研究してほしいという意味です。 過去にステロイドを多量に使用して副作用を出現させた医師たちの「罪滅ぼし」として「ステロイド禁忌」が定着してしまいましたが、そうではなく、用法・用量・使用時期(時間)の問題であるということを再度確認していただきたいのです。 そして私は直ちにステロイドを何でもかんでも使えばいいと述べているのではなく、ステロイドの用法用量の研究を真摯に、多くの医師たちに行ってほしいと思っています。なぜなら、現医学ではまだステロイドに変わる炎症抑制の薬が開発されていないからです。
レミケードやエンブレルはステロイドに変わる炎症抑制薬ですが、薬価があまりにも高過ぎて使えないのですから(1回使用で約20万円です)。それに副作用もまだまだ調査不十分です。それにひきかえステロイドは安価で副作用研究もレミケードやエンブレルよりもはるかに進んでいます。むしろ副作用が怖いのは新薬であるレミケードやエンブレルのほうです。 実用性を考えるなら炎症抑制は今のところステロイドしかありません。オンリーワンの存在であるステロイドだからこそ、用法・用量を正しく研究しなければならないのです。NSAIDは超多量に使用しなければ炎症を抑制する効果がほとんどありません(痛みは抑えますが)。実際に膠原病患者にNSAIDを使用してもCRPが少しも下がりません。
「ステロイド禁忌」という非常識な考え方はステロイドの研究をすることさえも否定します。一刻も早くそうした後進的な見解が改められることを心から願っています。 ステロイド投薬の分野では、研究しなければならないことが山積みです。
例えば、インフルエンザに罹患した際にステロイドを投薬することが許されるかという問題、病原性大腸菌による腸炎に対しステロイドは投薬するべきかという問題、化膿性関節炎に関節内ステロイド投薬が許されるかという問題(→詳しくは「化膿性膝関節炎と誤診された自己免疫性膝関節炎の3症例」を参照ください)、骨折や捻挫にステロイド投薬はよいかという問題、悪性腫瘍の周囲の組織浮腫に対してステロイド投与が腫瘍増殖を助長しないかという問題…などがあります。
問題はあっても答えは決まっています。用法・用量を研究すれば治療に使えます。何度も言いますが、体内に炎症が起こった時は、医師が禁忌と言っても、副腎からステロイドが多量に分泌されているのですから。ステロイドが正しく分泌されない場合の方がはるかに死に至らしめる可能性があります。
ステロイドはPLA2(ホスホリパーゼA2)COX-2(シクロオキシゲナーゼ2)サイトカイン、IL-1、IL-2などを抑制して抗炎症作用を発揮します。過剰な炎症は血行障害を招くので、ステロイドの抗炎症作用は局所の血行改善に非常に役立ちます。 それと同時にマクロファージの貪食能、NK細胞活性を抑制、IgE産生抑制など、感染を治癒させるための免疫能力を劣化させる方向への作用があります。 どちらの効果を優先させるか、どちらを優先させた方が最終的に症状改善に役立つかという究極の選択が存在します。 しかし答えは出ているのです。人体が感染時にステロイド分泌を増量することから、感染時にたとえ免疫力を低下させることになろうとも、過剰な炎症を消退させることの方が優先されているということが真実ではないでしょうか。
感染にステロイド使用はこれまで医師たちが恐れをなして研究さえしてこなかった分野です。しかし、医師たちの恐れに関わらず、体内からステロイドが多量に分泌されています。再度再度言います。「感染にステロイド禁忌」と言われたところで、感染時に体内からステロイドが分泌されています。ステロイドを恐れるのではなく、もっと深く研究すべき分野です。感染症にステロイドをどのように使うかは十分研究する価値があります。もっと真摯に研究してほしいものです。

感染症にステロイドを使うことは禁忌という非常識」への1件のフィードバック

  1. すごくすごく納得です。

    実際、自分もカンジダ皮膚炎にステロイドを塗って早めに治したことがありますが
    ひどくなる前に治りました。もう何年も前ですが、いまだ再発なしです。

    自分の場合、ステロイドを使わずにカンジダ感染部の範囲を広げてしまい、治るのに半年もかかった過去から学んで

    ただ、ステロイド塗って終わりではなく
    ステロイドを使う事によって、体内のビタミンCやB2B6などが減るという事を考えて
    毎日ビタミン剤や野菜や飲み物で多めに補うですとか、

    カンジダ菌を食べるといわれるアシドフィルス菌の乳酸菌入り整腸剤を少し多めに補うですとか、

    ステロイドを怖がらずに塗って
    それと並行して、すべき事を怠らなければ
    たいていの感染症は治ると考えるようになりました。

    大切なことは、ステロイドに限らず言える事ですが
    やたらめったら偏った考えの元、治療法にこだわりを持ちすぎない事やと思いました。

    自分の体の反応は、自分が一番理解してるはずやのになかなか難しい判断というか、
    1つの治療法で治らなかった場合に
    あらゆる方向から物事を考えて
    試行錯誤して治療する勇気は必要ですね。

    今回の記事、先生のお話はたいへん勉強になりました。
    ステロイドを怖がって使わずに悪化している友人にも読ませたいと思います。

    ありがとうございました。

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