損傷細胞処理の鋭敏さ

2、損傷細胞処理の鋭敏さ

日常生活で損傷した細胞はマクロファージなどに食されて処理されます。そして代わりに新たな細胞が分裂して作られます。こうして新旧が入れ代わり、絶えず新しい細胞で肉体は維持されています。前述したように、損傷した細胞が食される際に必ず炎症という現象が生じており、我々のからだは24時間炎症し続けています。ただ、それを症状として感じていないだけです。
さて、問題は「細胞がどの程度の損傷で抹殺処理される(食される)か」という程度問題です。 好中球、マクロファージなどはもともと死滅した体細胞を食する能力を持っています。しかし、死滅はしていませんが、軽度の損傷を受けた細胞の処理を「何を指標として」「どの程度で」「食する」という判断を下すのでしょう。この辺の領域になると現医学は後進でありほとんど解明されていません。軽度損傷の体細胞の場合、その損傷個所に抗体が付着し、好中球やマクロファージに食されると思われます(オプソニン作用)。
私たちの体内には死滅した体細胞や損傷した体細胞を抗原と認識させる自己抗体が存在しています。自己抗体が存在しないと崩壊した体細胞を処理できず、体細胞の新旧交代ができなくなります。そうなると老化した細胞で体内が埋め尽くされ、超スピードで老化が進むでしょう。つまり自己抗体は体細胞の新旧を入れ替えるために不可欠と推測します。 しかしながら膠原病学では自己抗体は悪者扱いされています。その考え方に違和感を覚えます。抗体が高いと異常、低いと正常…私は全く同意できません。
そもそも体細胞の新旧を入れ替えさせるために自己抗体があります。バクテリアやウイルスを食する仕事はむしろサブでありメインではありません。その自己抗体が必要以上に多量に生産されると、まだ死滅していない体細胞にまでオプソニン作用を示す可能性があります。これがここでいう「損傷細胞処理の鋭敏さ」の問題です。 鋭敏さは個体差があるはずです。少し損傷しただけで自己抗体が処理活動を開始するほどの鋭敏さを持つ人もいれば、完全に細胞が死滅しなければ処理活動をしない鈍感な自己抗体を持つ人もいます。
鋭敏な人は自己免疫疾患として炎症症状が現れ、鈍感な人は損傷の激しい細胞でも処理せず放置するので古びた細胞が体の中を支配するようになるでしょう(若くして老けて見えるでしょう)。 よって年相応よりも若く見える人は自己抗体が鋭敏で細胞寿命も短く、ターンオーバーが速い可能性があります。そういう方は不衛生な地域で生きることは不利となるでしょう。感染症が多いと常に誇大な炎症反応が起こることになるからです。
アトピー性皮膚炎などは鋭敏すぎる自己免疫により皮膚が常に炎症を起こしている状態であると仮定すると、彼らは無菌状態、無アレルゲン状態の世界では「もっとも美しい・若々しい肌」を100年近く維持できる可能性があります。つまり彼らは無菌・無アレルゲン状態に非常に適合した遺伝子を持っているという意味です。
自己抗体が鋭敏すぎても鈍感すぎてもどちらも個体には不利と思われます。 例えば、感染症が激しい地域(開発途上国で不衛生な地域)では自己抗体が鋭敏であると個体にとって不利です。なぜなら、感染症によって細胞は日常茶飯事に損傷を起こします。それを自己免疫でいちいち鋭敏に処理していては、体中で炎症が起こり、高熱が発生し、日常生活で重篤な症状となってしまうからです。だから彼らはコレラ菌を少々食しても下痢さえしません。 逆に環境が清潔で衛生的な先進国では、感染症で細胞が損傷を起こしにくいでしょう。ならば自己抗体が鋭敏に反応してくれなければ、逆に体細胞が入れ替わることなく、古びた細胞で埋め尽くされるようになり、新陳代謝が停滞し不利になるでしょう。
人間の自己抗体はこうした環境変化に応じて有利・不利があると考えます。 先進国では衛生的なので自己抗体が鋭敏であるほうが有利に生きられ、開発途上国は不衛生なので自己抗体が鈍感であるほうが有利に生きられると考えます。また、北極などの寒冷地帯にはアレルゲンは少なく、アトピー患者も発症せずに快適に過ごせるでしょう。逆にアレルゲン、寄生虫、細菌が常に存在する熱帯雨林地帯では自己抗体が鈍感であるほうが有利であり、熱帯雨林に生きていた人が寒冷地帯に住むと、新陳代謝が極めて遅くなり、生きるのに不利になると思われます。
私のこの仮説はアトピー性皮膚炎や喘息などが開発途上国よりも先進国に多い理由に直結します。 つまり自己抗体が多く鋭敏であると、わずかに傷ついた体細胞も抗原とみなし、そこに補体が吸着し、さまざまな炎症を引き起こすと考えます。しかし、先進国では労働や気候、環境が過酷ではないので、自己抗体が鋭敏であっても問題は生じにくいのです(細胞が損傷しにくいから)。細胞が損傷しにくい環境では、自己抗体が鈍感であると、細胞寿命が長くなり、体細胞が古いもので占領されます。古い細胞が多い肉体は老化を進めますから、先進国では自己抗体が鈍感であることは不利であると思われます。よって自己抗体は環境に適応する能力を備えていると考えます。この辺の研究はもっともっと進めていくべきです。
さらに、自己抗体の産生には各種ホルモンが関与されていると推測されています。つまり遺伝的な体質だけが自己抗体の数を左右するのではなく、副腎皮質ホルモンなど(環境因子)も密接に関与していると思われます。この辺に関して医学はまだまだ後進です。
私の研究では高コレステロール血症の人はコルチゾールの分泌が少なく、外部からステロイドを投与するとACTHやコルチゾールが極端に低下しやすいということが判明しています(「ケナコルトの安全性と副作用に関する調査」参)。食生活の変化によりコレステロールの多い食品を食する機会も増えており、食生活と自己免疫疾患の関連もおそらくあるでしょう。よって自己免疫疾患を治療するには食生活の改善も必要と考えます。

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