生体脆弱性

1、生体脆弱性

持って生まれた個体の性能には大きな差があります。農耕馬がサラブレッドにはなれないのと同じです。同様に高齢者の様々な箇所の関節のXPを撮影すると極めて激しい個人差があることが見てとれます。特に重労働をしてこなかったにも関わらず、壊滅的に変形した関節もあれば、重労働ばかり行ってきたのに変形がほとんどない関節もあります。まさに持って生まれた個体差によって、同じように生活を送っていても変形の現れ方に大きな違いがあります。こうした遺伝的な個体差が高齢になるとどのような影響を及ぼすのか?についての研究はほとんどなされていませんでした。 しかしながら高齢化社会がここまで進むと研究しなければなりません。すなわち、生まれた時点で生体脆弱性につて考え、どのようなことに注意して生きていけばよいかを小児期から指導していこうというのが日常損傷病学の立場です。
家族的に肥満体質の家系、高脂血症の家系、糖尿病の家系、低身長の家系、O脚の家系、脊柱側彎の家系など…調査して小児期から生活指導をしていくのです。 そのためには先天異常という考え方を捨て去らなければなりません。先天異常はボーダーラインを決めて、個々から先が異常、ここより前は正常」というようなライン引きがありますが、厳密に言うとラインなど存在しません。 前に述べたように、少ししか異常がなくても、掛け合わせることで症状が出現しますので各個人において「ここが異常、ここが正常」と線引きするのではなく、総合的な視野で判断すべきでしょう。総合的な視野はこれまでの医学概念にはないものですから、今後、確立していかなければなりません。
例えば潜在性二分脊椎のXPを見ても、それがどんな症状を将来的に引き起こしていき、日常生活にどのような影響をおよぼしていくのかはわかりませんでした。それを研究していくのです。二分脊椎がある人は自己免疫疾患にも罹患しやすいなどの内科的な関連もあるかもしれません。そうした関連性を見つけ出していかなければなりません。 そして「症状が出る前に予防する」ための日常生活指導要領を本格的に作成していかなければなりません。中でも4本柱となるのが食生活、住居内生活、社会生活、治療生活です。これらは生体脆弱性と密接な関係があります。
食生活は非常に誤解が多い世界です。「この食べ物は○○によい」と言われていたものが数年後には「○○に悪い」と言われ世界全体がマスコミに踊らされています。例えば20年前は「コーヒーは膵臓癌の危険因子」と言われ10年前は「コーヒーは肝臓癌を防ぐ」と言われちまたをにぎわしました。こうした誤解を解くには総合的な視野で食べ物の偏りを研究していくしかないでしょう。偏った食材でどのような悪影響があるかを研究します。
例えば現代では食生活の欧米化にともない、動物性脂肪過多に非常に偏っています。そうした中、高コレステロール血症が国民病になりつつあります。 骨訴訟の予防に乳製品を多くとる風潮にありますが、乳製品が高コレステロール血症の原因になることを知らない人が多いようです。
住居内生活は姿勢指導や寝具・椅子などの家具の調整も含まれます。脊椎に生体脆弱性のある人は寝具が悪いだけで様々な症状を引き起こします。寝ている間に悪化することもあるのですが、にもかかわらず薄い布団寝るのがよいというような根拠のない俗説があったりし、混迷しています。睡眠時間も生体脆弱性に大きくかかわります。椅子に座っての勉強も脊椎に脆弱性のある人にとっては大きな負担になります。 なにより人生の半分近く住居内で過ごすためその生活指導をしっかり行うことが高齢者になってからのQOLをアップさせます。
社会生活は学校・職場・クラブ・趣味などで団体行動する時に問題になります。スポーツなどもこの範疇に入ります。 人は人生において自分の優位性を示すためにスポーツや芸術の世界で特殊技術をみにつけるために訓練や修行を行います。しかしながら農耕馬がサラブレッドになれないように向き不向きがあり、軽い動作でも不向きな人には大きな障害を残すことがしばしばあります。まさに生体脆弱性のために耐えられない動作があるのです。そうした生体脆弱性のことを考慮せず、親は子供に「身体的に不利」なスポーツをさせていたりするものです。不利な動作は関節を崩壊させ、20歳になる前に変形が完成したりもします。
また、むち打ち損傷事故でも生体脆弱性は非常に重要で、脊椎に生体脆弱性を持つ人は明らかに症状が重く長引きやすくなります。そうした個体差を考慮して社会生活の指導をしていかなければなりません。 治療生活は食生活と密接に関わっています。現在は食生活の偏りによって発生している高脂血症、高コレステロール血症などを、食生活の指導もせずに治療薬だけ延々と処方する医師が増えており非常に困った状況です。つまり、食の偏りを経口薬でごまかしており(根本的な治療ではない)、飽食・美食による食害を経口薬で対処して根本治療をしない世の中になっています。
現在、こうした治療薬は一生飲みつづけなければならないため、生活の一部となっています。つまり長年服薬しなければならないのですが、これまで長年服薬し続けたときに起こりうる薬害については研究されていません。例えば、ビタミンDやビタミンKなどの脂溶性ビタミンが体内に蓄積される害、高コレステロール血症治療薬で動脈硬化は防げても、コレステロールから生合成されるホルモン(性ホルモン、ステロイドホルモン)などのバランスを崩す問題など、未知で未解決なものが山積みです。
ここでは再度治療について考え直さなければなりません。生活の一部となった治療が果たして患者本人の幸福に貢献できているかどうかを。その中に副作用の方が大きく、期待されたような効果が発揮されていない治療がないかどうかを。 持って生まれた生体脆弱性を治療で補うという考えは悪くはありませんが、そのために何かを必ず犠牲にしているという考え方もしなければなりません。長期安全は確立されている薬剤でも、超長期では安全性が崩れるものが多数あるとの考えの元に、個々の薬で研究をしなければなりません。それが高齢化社会に対する医療のけじめです。

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