修復速度を上げる治療へ駒を進める

修復速度を上げる治療へ駒を進める

打撲、捻挫、骨折、腱鞘炎、関節炎、肩関節周囲炎、椎間板ヘルニア… この中で積極的に注射などの治療をしてもよいのはどれですか?と尋ねると、一般的な教育を受けた医師は例外なく「打撲、捻挫、骨折などの外傷には注射はしない」と答えます。しかしながらこの答えには論拠がありません。
日常損傷病学では修復速度を妨げるあらゆる病態が治療対象で あり、将来高齢になったときに損傷速度を速めてしまう症状のすべてが積極的な治療対象です。 炎症が長引けば活性酸素などの修復できない炎症産物が多く蓄積されます。よって外傷であっても炎症をできるだけ早期に消退させるのが医療の責務です。当然ながら外傷も積極的治療の対象でなければならないという考え方です。
外傷は損傷が瞬間的に起こったものであり、腱鞘炎や関節炎は繰り返しの損傷でじわじわ起こったものです。よく考えてみれば腱鞘炎や関節炎も体内で起こっている外傷であり打撲や捻挫と垣根がありません。異なるのは損傷が瞬間的か、時間をかけてか?だけです。よって打撲、捻挫、骨折に積極的な治療をしないという理屈は通用するようで実は論拠がありません。
私の場合、例えば橈骨遠位端骨折後の関節浮腫には手関節内に積極的にステロイド入りのキシロカインを注射し、痛みと腫れを即座に除去してさしあげています(多くは受傷後1~4週)。すると骨折部は驚くほど痛みが消え去り、リハビリがスムーズに進み、手関節のRSD(反射性交感神経性委縮症、最近は複合性局所疼痛症候群とも言われる)になることがなくなるのです。 強い痛みを訴え続け、関節の可動域が著しく低下している状態に、このような注射をすることで劇的に改善します。ですが、こうした治療をするのは世界中探してもおそらく私だけではないでしょうか。
同様に、整形外科医は肩関節周囲炎には注射しますが、外傷性の腱板損傷には通常注射をしません。よって外傷性で肩が動かなくなった患者は数か月間、苦痛で肩が動かせなくなるということが世界中で生じています。 転んで腱板を傷めれば治療をせず、重いものを持って腱板を傷めると治療をするという実に論拠のない治療方針が世界にはびこっているということです。日常損傷病学はそうした悪しき先入観を打破します。
外傷が原因であっても局所の炎症性浮腫を早期に改善させてあげることは修復速度を速めます。よって外傷にも局所にステロイド入りキシロカインなどを注射することは非常に有意義なのです。スポーツ選手などでは修復速度を速めることは死活問題であり、医師の勝手な先入観で「捻挫や打撲などの外傷に積極的な治療せず」では医師をやっている意味がありません。外傷などへの積極的な治療法にどういうものがあるかは各論で述べます。

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