考え方を変えざるを得ない外傷学

考え方を変えざるを得ない外傷学

挫傷、骨折、捻挫などの外傷の治療は、これまで固定と安静をのみという消極的なものでした。しかし、今後の医療は一歩進んで「外傷を可能な限り回復を早める」ために積極的に治療をすることが望まれています。なぜなら 患者は外傷のために通常の社会生活を送れなくなっており、解雇されたり成績を残せなくなったりするリスクにさらされているからです。捻挫や筋の挫傷ならば3週間、骨折ならば1か月以上、局所を安静にさせるという消極的な治療がこれまでの主流です。しかし患者のQOLを向上させるために積極的治療をすることが時代のニーズです。
私は高齢者の手関節骨折などで手が非常に腫れている場合などにステロイド入りの手関節内注射などを積極的に行ってきました。効果は抜群であり、注射後は腫れが劇的に引き、痛みが激減します。手関節の骨折後は一部、非常に治りの悪い場合があり、骨萎縮や血行障害を伴って長期間痛みが軽快しない例があります。このような難治性の骨折後後遺症に関節内注射が極めて有効であることはまだまだ整形外科医には知られておらず、未来の医療として広げていく必要があります。
このような「外傷に積極的治療」という考え方はこれまでの医学に皆無でした。積極的に治療をすると社会復帰までの期間が半減したり、リハビリにかかる時間が半減したりします(骨癒合も早まると思われますが、要検証)。私はそうした実例をこれまで孤独に作ってまいりました。 孤独である理由は、そういった外傷への治療は保険で認められていませんし実例がないことだからです。外傷後に積極的に除痛、消炎の治療を行えば社会復帰までの期間がかなり短縮し後遺症も軽減させることができます。
私は捻挫後、足の痛みがあちこちに現れ、ダンスが踊れないという学生にも腱鞘内注射などを積極的に行いダンスができるようにさせるなど果敢に取り組んでまいりました。外傷により肩が上がらなくなったという患者にも積極的に外傷翌日からステロイドの注射などを行い、可能な限り早く腕が上がるように回復させました。しかし、私の行った「外傷後にできる限り素早く積極的治療を行う」ことは医学界では非常識そのものでした。
例えば、これまでは五十肩に注射治療は積極的に行われていましたが、外傷性の腱板損傷には注射をしません。腱鞘炎には注射をしますが、捻挫後の腱鞘炎には注射をしません。保険が外傷に注射をすることを認めていません。これらは原因が外傷か自然発生かの違いでしかなく、組織に炎症が起こっているのは両者とも同じです。外傷に積極的治療をしないのはこれまでの固定観念のせいです。この非常識を常識に変えるのも時代の流れです。外傷による労働力の低下は本人にとっても、その周囲の社会にとっても大きな損失です。よってこれを「緊急に積極的に治療すべき症状」ととらえて治療することは社会に求められていることなのです。

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