上頚神経節ブロックの作用・副作用

はじめに

上頚神経節の役割や解剖学的位置については「上頚神経節ブロック手技」をご覧ください。私は現在、平均して1日に5例前後、上頚神経節ブロックを行っています。これは年間で約1000例前後というペースです。上頚神経節ブロックをはじめて行ったのが6年前で、歴史の浅い新治療です(トータルで2000例程度)。よって、本ブロックを安全に行うために、これまでに発生した副作用を詳しく報告します(2014.8.9.現在)。現在までに重篤な合併症を生じた例は1例もございません。

 副作用報告



 嗄声・眼瞼下垂・耳介周辺の麻痺など

ブロック後にこうした症状が一時的起こることは普通にあります。私の場合は極めて少ないほうで、100例に1例程度ですが、狙った箇所へ針先を導く技術が未熟なうちは、しばしば生じるでしょう。しかしこれは注射ミスではありませし、副作用と言うべきものでもありません。1時間後には元に戻ります。

出血・感染

0件、まず内頚動脈を同定し、その後方を刺入しますので、同定をしっかり行えば内頚動脈を刺してしまうことはありません。次にC2またはC3の横突起を同定し指圧し筋組織を指で圧排し、27G針を10~15mm刺してキシロカインを注入します。この深さでは椎骨動脈までは達しませんので同動脈を刺すこともありません。針の細さも手伝って、ブロック後に皮下血腫が発生したことはなく、感染もありませ。

急性キシロカイン中毒

上頚部は脳に最も近い箇所で、しかも血管が豊富な箇所ですので、注射してから周囲の血管に吸収され、脳にキシロカインが短時間で移行します。その際に酔った感覚、ふらつき、めまいなどが発生することがあります。ブロックを行った5人に1人は多少の浮動感を数十分間ほど感じます。 キシロカイン中毒はアルコール中毒と同様に、個人差が極めて激しく、0.5%のキシロカインを0.5cc注射するだけでもめまい、ふらつき、嘔気が生じるという過敏反応を示す方もおられます。その際は静脈確保の上、維持輸液を行いつつ30分ほど経過観察します(必須ではありませんが)。 こうしたキシロカインの過敏反応は50例に1例程度の稀なものですが、繰り返しのブロックで、ある日突然過敏反応が生じることがあり注意しなければなりません。この場合、注射量を減らす、または濃度を薄くするなどの対策をとり、中毒症状を回避します。不思議なことに、上頚部以外へのブロックでは中毒症状はほとんど起こりません。よってキシロカインに対するアレルギー反応ではないと言えます。

動悸・悪寒、ふるえ

本ブロック後5~6時間以降(つまりキシロカインの効果が完全に切れた頃)に動悸・悪寒・ふるえなどの自律神経失調症状が数分~数十分間起こることがあります。原因は不明ですが、一旦延髄への血流量が増し、それが元に戻る際のリバウンド現象と推測しています。ほとんどの患者は、こうしたリバウンドを感じることがありませんが、自律神経失調症状がしばしば起こる症例で稀に起こります。特に処置は不要で、安静にしているだけで問題はありませんが、ブロックをした患者全員から、こうしたリバウンドが起こっていないか問診しておく必要があります。

原因不明の片頭痛

極めて稀な1例報告として、ブロックの8時間後に「頭の中でプチっと音がして、その後にきらきらした線が見えて(閃輝暗点)頭痛が起こった」というものがありました。この症例はその後脳のMRI検査を行い、脳に異常がないことを確認しています。「プチっと音がして」というのは血管が切れたわけではありませんでした。これもリバウンドの一種と思われます。しかし同様な症状を訴えた患者はこれまで1例もおらず、偶然かもしれません。

脳出血の可能性は?

基本的に本ブロックは血管を拡張させるので血圧を上昇させることはありません。延髄の機能を回復させることで、逆に血圧を低下させると思われます(「延髄性高血圧症に対する根治療法の報告」参)。よって高血圧による脳出血を生じさせることはないと考えます。しかしながら、ワーファリンなどの抗凝固剤を服薬している場合はブロックの血管拡張作用と相乗効果があり、脳出血の可能性が高まるでしょう。よってブロックの際は、抗凝固剤の一時使用中止を強く勧めます。

 作用と使用方法について



効果発現の時間差に注意

上頚神経節ブロックではブロック直後に効果が現れる場合と、効果発現までに数カ月かかる場合があります。眼精疲労や視力障害、突発性難聴などの場合、ブロック直後に劇的に改善してしまうほど即効のこともあります。しかしながら長年経過している症状の場合、効果発現には5回10回と繰り返し行わなければならない場合があります。この場合、最初の4~5回は全く効果なしですから、短気な患者では医者不信に陥り、勝手に通院しなくなります。よって、本治療を開始するのであれば、まず患者の性格を審査し、長期間の治療を行う精神力があるかないかを調査する必要があります。ないのであれば治療は無駄に終わりますので勧めません。

効果は2~3日

本ブロックの作用はたいてい2~3日です。例えば視力障害の症例はブロック後2~3日視力が回復しますが、その後は元に戻ります。しかしながら、元に戻るとはいうものの、完全に戻るのではなく。初診時よりは多少回復します。よってこれを毎週繰り返すことによ手治療効果が累積し、いずれは効果日数が延長され、やがてブロックを止めても軽快した状態(治癒)となります。

ブロックしても元に戻るを繰り返す場合

上記のように、治療効果が累積する場合は問題ありませんが、2~3日効果があってもその後完全に元に戻ってしまう場合が、社会人に多く見られます(働いて酷使するからです)。この場合、週に1回の治療では改善に向かわせるパワーが、患者自身が悪化させるパワーと比べて足りていないことを意味します。この場合は週に2回以上の頻度でブロックを行います。回数を増やしていけばほとんどの場合改善に向かいます。

血流量増加はせいぜい4~5時間

上頚神経節ブロックで延髄・脳幹・脳への血流量を増やすことができる時間は多くて4~5時間と推測します。つまり、その後は元の血流量に戻ります。これでなぜ効果があるのでしょうか。それは4~5時間でも治癒力を高めることができるからです。人の体に不具合が起こるのは損傷と修復のバランスが崩れ、損傷に傾くからです。そのバランスを修復側に傾けて上げるだけで、不具合は修正される方向に動き出します。それが人の体です。たとえ4~5時間でもバランスを修復側に傾ければ、不具合は修正される方向に動きます。ただし、不具合が蓄積されていて、不具合の量が多い場合、修復に傾けたとしても、不具合修正には時間がかかります。

ブロックをやめても悪化しない

これは私がいつも言うセリフですが、「治療をやめれば元に戻りますか?」と不安感を抱いている方が大勢います。真実はこうです。不具合を一旦修復してしまえば、損傷-修復の好循環が構築されますので多少の損傷はすぐに修復されるので不具合が起こりにくくなります。これは口内の粘膜を奥歯で噛んでしまったときと同じ原理です。噛んで腫れてしまうと、何度も噛んでしまいますが、一旦腫れが完全に引いてしまえば、噛みようがありません。この原理より、ブロックで一旦、好循環を作ってしまえば、不具合が生じにくい状態になります。このことが理解できない患者、医師を信じない患者には本ブロックを行うべきではありません。治りにくい病気を治すには、患者の理解力があることが極めて重要です。理解力のない患者に治療を行えばトラブルが絶えません。私は理解力のない患者に対しては「とにかく私を信じることです」とまるで宗教家のような言い方で説得を試みています。が、やはりそういういい方をしているとトラブルに巻き込まれます。しかし、私はトラブルが自分を成長させる修行と考えていますから、「信じなさい」という言い方をします。が、他の先生方は真似しなほうがいいでしょう。

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