延髄性高血圧症に対する根治療法の報告

はじめに

高血圧の原因のほとんどは不明であり原因不明の高血圧症を本態性高血圧と呼びます。対症療法として降圧薬の経口投与がありますが、服薬をやめると元の高血圧に戻るため、降圧薬は一生飲みつづけることが常識となっています。今回、私は世界で初めて頸部の交感神経節ブロックで高血圧を根治的に低下させる治療法を発見しましたので報告します。ブロックで血圧が正常化する事実より、高血圧の原因として延髄由来性のものがあると思われ、これを延髄性高血圧と仮に名付けることにします。

症例66歳 男性 主訴:ふらつき・腰痛

腰痛を主訴に私の外来をH26.06.05初診。腰の痛みを訴えると同時に、2年前から「まっすぐ歩けない、体の向きを変えると後ろに倒れそうになる」というような「ふらつき」があることを訴える。この「ふらつき」については近くの総合病院やJ医大付属病院の脳神経内科で検査を受けるが異常なしと言われ原因不明のまま放置されていた。私はこれまで、4~5名のふらつきを主訴とする患者をブロック療法で完治させた経験があるので彼にブロック治療を勧め、彼がそれを承諾したため治療を開始する(降圧目的で治療を開始したわけではない)。

治療

上頚神経節ブロック(人体で最上部の交感神経節) 1%キシロカイン1cc×左右を1回/週で行う。

治療経過

  • 6/12 ふらつきあり、改善なし
  • 6/19 ふらつきが少しよくなった気がするがまだわからない
  • 6/26 ふらつきがない時もある
  • 7/3 1日中ふらつきが全くなかった日があった
  • 7/10 ふらつきがなくなってきたと実感
  • 8/7 ふらつきは全体の15%~20%改善したと感じている。とのこと。
  • 彼はゴルフのスイング時にふらつかなくなることを目標に置いているので「彼の言う15~20%の改善」は理想が高いために低く見積もられている可能性がある。
 
 

血圧の変動グラフ (121日間)

起床後30分に計測している。2014年3月、5月、6月、7月(4月分は省略した) 血圧変動グラフ この症例患者は3月1日から27日まではブロプレス4mgを規則的に服薬、その後、5月はほとんど服薬せず(4月は5月とほぼ同様なので省略)、6月、7月とそれぞれ1週間のみ連日服薬と、大変不規則な服薬をしています。この変則的な服薬が、逆に経口薬を服薬する状態と服薬しない状態の対照を行うことができ、経口薬とブロックの効果比較を可能にしています(患者が不規則な服薬をしてくれたおかげで偶然にも薬やブロックの単独使用の比較ができました)。

平均血圧の比較

薬あり 薬なし ブロック前半 ブロック後半
収縮期血圧 133 142 143 131
拡張期血圧 85 91 92 83
計測日 3/1~3/27 3/28~3/315/1~5/15 6/13~7/2 7/10~7/30
この表は①経口薬を規則正しく服薬していた期間の平均血圧(収縮期・拡張期)、②経口薬を全く服薬しなかった機関の平均血圧、③ブロック治療を行い経口薬を服薬しなかった期間の平均血圧(前半)、④ブロック治療を行い経口薬を服薬しなかった期間の平均血圧(後半)を比較したものです。
 

上記の表をグラフにしたもの

平均血圧グラフ 薬を飲む場合と飲まない場合では収縮期血圧で10mg近くの差があることがわかります。ブロック前半は薬を飲まない時とほぼ同じ平均血圧で、ブロックの降圧効果は全くないと言えます。しかしブロックの後半、つまりブロック6回目以降は薬を飲んでいる時よりも低い水準となっています。この結果より、上頚神経節(頚部交感神経節)ブロックは血圧を正常化させることに貢献していることが判明しました。

考察

上頚神経節は延髄・脳幹・脳への血管を支配する交感神経の中継地点であり、ここをブロックすることでこれらの箇所への血流量を増加させる効果があります。その作用時間はわかりませんが、数時間以上の効果時間と思われます。血圧を調整する自律神経の中枢は延髄にありますが、延髄への血流量低下は神経核に不具合を生じさせ、血圧を不安定にさせると思われます。
上頚神経節ブロックで血圧が低下する理由は、延髄の慢性的な血流量低下が根底に存在し、それが血圧を高めにキープする生理現象を引き起こしているからであると推測します。よってブロックによって血流量が一時的にでも増加することで、延髄に生じている神経核の血行不良による不具合の悪循環が解消され、血圧が正常化すると思われます。
ブロックを5回行っても血圧が正常化せず、6回目以降にようやく効果が出現する理由は、延髄の神経核の不具合が解消されるのに、不具合の程度に応じた治癒期間が必要であるためと思われます。
なぜ、延髄の血行不良が起こるのかの理由は、兼ねてから私が何度も提唱している「脊髄・脊椎不適合症候群」がこうした症例の根底に存在しているからと思われます。つまり、脊髄が尾側に引っ張られることにより、延髄にそのストレスが伝わり、その張力が原因で延髄断面積の縮小→栄養血管の断面積の縮小→慢性の血行不良→延髄神経核の不具合→高血圧、のメカニズムを推測します。
推測が正しいか誤りかにかかわらず、上神経節ブロックには血圧を正常化させる効果があると思われますので、高血圧症の根本治療に寄与できると思われます。

延髄性高血圧についての仮説

延髄が脊髄により引っ張られ延髄の神経核周囲に微小な繰り返しの損傷が起こり、これが慢性化し、延髄神経核の血行不良→機能低下となることが根本原因と思われます。自律神経失調症(発汗異常や顔面紅潮)を併発することもありますが、単独で血圧不安定の症状が出現する場合もあるでしょう。延髄の慢性損傷→慢性の炎症は血圧不安定を生み出し、繊細な血圧調整が困難になると思われます。すなわち、感情(興奮など)による血圧の上昇、急な動きに寄る血圧低下に対しての昇圧処置などの能力が低下すると思われます。私は小児にしばしば起こる起立性低血圧も成長期の延髄牽引による血圧調整能の低下と推測しています。
生体防御反応として、延髄神経核周囲に慢性の炎症が生じ、機能低下に陥った場合、血圧が低下することがあり得ないように仕組まれているはずです。低下は致命的だからです。よって延髄機能低下が生じた場合、自動的に血圧は高くなるように設定される必要があります。なぜなら、起立時などに急に血圧が下がる時に失神しないでいるためには血圧が常に高くある必要があるからです。
延髄に炎症が生じた場合、血圧が高く設定されることが延髄性高血圧症の病態生理と推測します。 全国には降圧薬を服薬し始めてから、失神や意識消失を日常的に何度も経験するようになったという症例が多発しており、降圧薬を服薬し続けることを疑問視する意見が世界中から沸き起こっています。 それらはこの延髄性高血圧の症例ではないかと推測します。
つまり、延髄機能低下により急激な血圧低下時に昇圧して血圧を保つシステムが作動しないため、失神が起きる。普通なら失神しないように血圧を高く保つ対処法が働きますが、それを降圧薬で低下させるために、失神を引き起こすというシステムです。
私は実際に、降圧薬で失神を起こすという症例に上頚神経節ブロックを行い、既に4~5名を完治させた経験があります(私は整形外科医ですから症例が多く集まりません)。ですが、完治への導入率は100%です。 延髄性高血圧症は本態性高血圧症の中のかなりの割合を占めているのではないかと私は予想しています。

延髄性高血圧症の診断基準

  • 気候・天候の変化で血圧が上昇する
  • 特定の動きをした際にふわっとする
  • 降圧薬を服用して失神しそうになったことがある
  • 発汗異常や顔面紅潮などの自律神経失調症状を伴う
  • 頚部交感神経節ブロックでこれらの症状が軽快する
 

本症例のふらつきについての考察

本症例ではふらつきの原因がはっきりしていません。ゴルフのスイング時にふらついてまっすぐに立っていられないという主訴からは小脳失調も考えられますが、これはすでに脳神経内科を受診して「異常なし」と言われています。ただし、原因がはっきりしないものの、すでに上頚神経節ブロックで15%~20%回復したと本人が報告していることから、本ブロックがふらつきに有効であることは間違いないようです。ふらつきへの根本治療法は世界に存在しませんので、本ブロックが現在のところふらつきに対する唯一の治療法であるようです。

今後の課題

本治療を中止した場合、症状がどの程度の期間をおいて再燃するのかを研究していく必要があります。また、本ブロックは誰にでも簡単に行える手技ではないため、本治療法がどれだけ普及するかは未知です。本ブロックが高血圧を根治させることができるとしても、ブロックを行える医師が少なければ普及のしようがありません。またブロックのリスク(デメリット)とメリットを差し引いて考えると経口薬の方が勝ることもあります。ただ、それにしても本ブロックが血圧治療の発展の一助となることは間違いないでしょう。

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