第七十六話 涙

私の診療所には突発性難聴で一か月以上経過して手遅れになった方がたくさん来られます。突発性難聴は難病ですが、治る時期を過ぎて一か月以上経ってから「どうにかしてほしい」という人が後を絶ちません。私たちはそこから難聴を改善させるので究極の治療力があると言ってよいでしょう。

 一日の外来患者の中のなんと半分が突発性難聴というすごい診療所となっています。

 そんな中一人の突発性難聴の女性患者が私に不具合を訴えます。

「ブロックをしてから涙が止まらないんですけど。」と言うのです。

「えっ? 今まで何千回と突発性難聴の治療をしてきましたけど、涙が止まらないとおっしゃった方は初めてです。」と私は正直驚きを隠せません。

「いつからですか?」と訊くと、前回ブロックをした日からなのですが、それはちょうど奥様がこの方に初めてご加持をした日でした。

「まさかとは思いますが、ご加持によるものかもしれませんので様子を見てください」と言ました。

 その後に奥様のご加持を行ったのですが、すると

「涙が出てきました」とご加持中に言います。

「やっぱり、これはブロックのせいではなくご加持のせいですね。おそらくあなた様は波動に感受性が高いのだと思います。」と私は説明しました。

「宗教は何かやってますか?」と奥様が患者に訊きます。

「父が真言宗をやっています。」と

「やっぱりそうですか。真言宗つながりですね。」と奥様。

「やはり、真言宗をやっておられる方は波動の影響も受けやすいのだと思います。おそらく涙でのデトックス作用もあると思いますので大丈夫だと思いますよ。」と私は説明しました。

 ご加持中に泣いてしまわれる方は少なくありませんが、感情失禁もなく涙だけ流されるという方ははじめてでした。

 そんな中、今日はリウマチに悩む若い女性が来られました。私はリウマチ患者に免疫抑制剤系の処方はしません。リウマチで関節炎、滑膜炎が起これば、その起こった箇所に随時関節内注射をして治していきます。それが体にはもっともよいからです。ですが今日はこの女性患者は全身を痛がります。両手・両肘・両膝・両足関節です。膝の注射以外は難しい注射ですので、これだけたくさんの個所を一度に訴えるとさすがに治療しきれません。おそらく患者は年末なので仕事で無理をしたのだと思います。これまでは何とか注射でまかなえたのですが・・・

 そこで私は最も痛みの強い三か所の関節に注射をし、後は奥様のご加持に任せます。奥様はリウマチ患者の痛みや腫れを改善させる実績があるからです。奥様がご加持すると彼女の痛みの個所と痛みの強さが奥様にわかります。

「こんなに熱を持って、痛いでしょう。大変でしょう。」と声をかけると彼女はせき切ったように声をあげて泣きだします。大人の女性が大声で泣くという光景は奥様のご加持では普通にみられる光景です。

天国への郵便配達人より

「いいんですよ。泣いて。魂が喜んでいるんですよ。」と奥様がやさしくいうと彼女はさらに奥様の肩にほほを寄せて泣きじゃくります。奥様も抱きしめます。診療所の一室とは思えない感動の涙がここにはあります。

 全身の関節がここまで腫れてしまうわけですから相当つらかったのだと思います。奥様のご加持は関節を治療するだけでなく心にしみわたるようです。涙を流すことで魂が洗われます。痛みの治療だけでなく、心の治療もできるご加持は本当にすごいなあと思いました。