第六十三話 おつりゲット

 奥様のご加持には正確に言えば2種類あります。一つは病状を調べるために相手の波動を自分に入力する受信のご加持。これは患者の波動を自分の体にコピペすることでリアルタイムに不調部分を察知するというもの。もう一つは奥様から患者へ波動を送信し、細胞を気で満たして元気にさせていくものです。受信と送信は一度に行うこともできますが、奥様はそれを敢えて分け、入力と出力のスイッチをしながらご加持をしています。

 奥様はこのご加持の能力については

「波動を感じるのは私だけど、治療する波動を出しているのは私ではなくお不動様のお力です。私は自分の能力で治療しているのではなく、お不動様に気のエネルギーを注入していただき、そのエネルギーをあなた様に注いでいます。」と患者に説明します。

私は奥様から送信される気のエネルギーが自分由来なのか他者由来なのかを調べたい欲求にかられます。ですが、現時点でそれを知る手段がありません。だからネット検索をかけ、ヒーリングについていろいろと調べてみました。するとヒットしたのがヒーリングで一世を風靡したサラリーマンヒーラー高塚光さんでした。三浦友和主演の映画にもなったています。日本でもこういう治療が信じられた時代があったのだと私は驚きました。

 奥様に高塚光の話を持ち出すと「そんなのと一緒にしないで」と怒ります。

「私はマスコミに出るなんてまったく考えてないよ。私はお不動さまのお力で人様への貢献と恩返しをするだけ。」と奥様は一蹴。

 私は「学ぶところがあれば他の人からも学んでほしい」と思っていたのですが、どうやら奥様の信念はお不動様一筋でした。誰かから学ぶのではなく、お不動様のご意志に沿って学んでいくという信念があるようです。そうした信念は他と比較できるものではなく、高塚光を引きあいに出したのが私の間違いでした。

 これはあくまで私からの視点ですが、医者ができないことをたやすくできてしまう男性ヒーラーは「世にその技能を認めてもらいたい」と画策する傾向にあると思います。

 しかし奥様は「認めてもらいたい」という欲求はなく、癒しを多くの人に与えたいと思っているようです。私は奥様がそういう純粋な気持ちでご加持をしていることを認めなければなりません。

ただ、この頃の私はまだまだ未熟であり、奥様が純粋であるということをなかなか理解することができませんでした。そのために二人は衝突し喧嘩することもありました。奥様の存在は私が喧嘩できるようなレベルではないことを今後、少しずつ思い知らされることになります。

今日、私が上頚神経節ブロックをした後の患者に重ねて奥様がご加持した時、私に奥様はこう言いました。

「ご加持していると血行がよくなってポカポカしたところが私にも移ってポカポカして気持ちい」と。

「へえ~、じゃあ治っていく気を感じて自分も気持ちよくなるんだね。それってお釣りをもらったようだね。」と笑い話です。

 ご加持をすると患者の悪い部分が自分にコピーされてしまうだけではなく、良い気もコピーされるということです。

「今日、わかったんだけど、ご加持して患者さんの背中が温かくなると私の背中も暖かくなって私の肩こりもとれちゃうみたい。」と奥様はとても喜んでいました。

「これからは一生懸命ご加持して、私もその恩恵を受けることにする。」

「なるほど、やっぱりお釣りだね。お釣りが返ってきてお得だよね。」と二人で笑顔になりました。

 奥様は奥様の言うように、自分で気を練って波動を出すのではなく、高次元の世界から波動を引き込んでいるのではないかと思わせる出来事でした。だってお釣りが返ってくるのですから。自家製の波動ならお釣りで体調がよくなるなんてことはないでしょう。

 こうして奥様は日々新たな体験を積んでいくのでした。