第五十八話 不動明王降臨

今日(2017年12月中旬)は奥様、朝から浮足立っています。その理由は「奥様が能力を身に着けることを半年前から予言された」T先生(霊能者)が治療のために名古屋から来院されるからです。T先生は以前にもお話しましたが、神仏と交流する能力がずばぬけており、意識体(霊?)を可視でき、さらに意識体と普通に会話ができてしまいます。会った瞬間にその背後にあるものを可視できるので私や奥様の背後にある神仏をすぐに見抜いてしまうという超級の能力者です。日蓮上人や、龍神様など天部の方々の意識体と「会話」ができると言います。

T先生はいつも私たちに

「私はね、いつもダメ出しばかりされて叱られっぱなしなのよ。根本がなってないとか言われるのよ」と茶目っ気たっぷりに話されるのですが、高次元の意識と通信できるだけでもすごいことなのに、会話ができて叱責までされるというのは「あまりにもすごすぎる話」なのです。そのあまりにもすごいことを茶目っ気で言われるのでさらにビビッてしまいます。T先生は得度されており、僧侶として法華経を基軸として信者様方に説法しています。つまり全国に信者さんもいるというクラスの先生です。

 私は奥様に

「当然だとは思うけど、T先生にもご加持するんだよね。」と念を押します。

「いやあ、恐縮すぎて、恐れ多いです。」というのですが

「そうだよね。そんなやり方ではなってないわねって言われるかもよ。」と半分冗談を言いますが

「どうしよう。」と奥様は本当に緊張しているようです。

 そんなことを話しているとT先生がお見えになりました。和服で凛々しいお姿です。T先生もご祈祷で病人を救うという目的で全国を飛び回っておられる先生で霊障治療の大先輩です。そういう先生に来院していただけることは私たちも光栄の極みです。

さっそく診察に入っていただきましたが、私も奥様も緊張気味でした。まずは奥様が軽くご加持で診察を行います。いつものように頭頂部に手を当てると奥様は前後に縦揺れします。脳幹や延髄に障害があるパターンの揺れ方です。そして目の奥に凝り固まった痛みを感じます。これは精神を酷使されていて気が滞っている時に見られる反応です。

 T先生は網膜の調子が悪く、眼科ではこれ以上の処置ができないとのことですので腱引きのO先生に私のブロックを勧められて来院されました。

 私たちは症状改善のためにどうしても奥様のご加持を受けていただきたいと思っていました。ですが、相手は立派な霊能者ですからさしでがましいことをして気を悪くされないか心配でした。そこで私は遠回しに、

「私たちは初心者ですが、念を送って治療するということをさせていただいています。難治性の病気を治すためにやっているのですが、こういう治療もあなどれないんです。」と説明しました。するとT先生は

「そうなのよ。本当にあなどれないのよね。」とあいづちをうちます。すると間髪入れずに奥様が

「そうだ。そうだ。その通り。がんばりなさい。」

と少し低い声で突然言い出します。何かが奥様に降りていることがすぐにわかりました。が、T先生はいつものことのように全く平然としていました。奥様が後になって「降りた方がだれなのか」をT先生に訊ねると「それは私の育ての母親なのよ」と教えてくれました。「いつも私にくっついてきているの。」と言います。さすが霊能者同士の会話です。普通なら二人とも気が変だと思われます。

 もちろん私もいつものことなので、その後、少しもビビらず冷静にT先生にブロックをしました。「あら、何だか視界がくっきりしますね。」と言ってくれました。

 さらにその後、奥様がしっかりご加持を行います。奥様は精神を集中させ、強い波動を送るためにご真言を唱えます。奥様よりも大先輩の先生にご加持することは恐縮ですが、やはり治療成績を高めるためには恐縮などとは言っておれません。

 真言を唱えている時に奥様の右腕はぞわぞわし、「何かが来ている」ことを察知します。が、今はご加持に集中しなければなりませんので気配に意識を向けることなく続けました。。そして奥様は

「院長のブロックがさらに良く効くようにお唱えしました。」というとT先生は

「あなた、そこにお不動様が立っていらっしゃったのに気づかなかった?」

「えっ、お不動様ですか?」

私には見えているのだけれど、奥様も能力があるのでもしかしたら気づいているかもと思ってT先生が奥様に訊ねたようですが・・・もちろん、奥様に見えていません。

「何か来ているなあ~っとは思いましたが、治療に夢中で、お不動様だとは思いませんでした。」と、奥様は驚きとうれしさでいっぱいになります。

まだ、お不動様のお告げを聞けるほどに成長しているわけでもなく、見ることもできない奥様にとって、「ご加持の時にそばに来て見守ってくださっている。」というお話は、身に余る光栄でした。

「でも、立っていたのよ。そこに。」とT先生。奥様はしかし心当たりがあったのでT先生に分身の話をします。

「実は私の師匠の僧侶の方に「分身を私に与えるように」とのお告げがあって、お不動様の分身をいただけるようになったんです。そのせいでお不動様がここに来られたのかもしれません。」

「そういうことだったの。やっぱりね。素晴らしいじゃない」と、あっさりT先生はおっしゃいます。

あっさり言うものの、修行も積んでいないまだまだかけだしの奥様のそばにお不動様が来られたとなると、それは奥様が将来的に偉業を達成されることへのエールかもしれないと私は考えました。以前、私は日蓮宗の上人がT先生のことを「日蓮上人と話ができるなんてホラを噴く人がいたら私があばいてやります」と激怒していたのを思い出します。

しかし私は「奥様が巫女」であることを、奥様の能力が目覚める前から予言していたT先生の言動は信じるに値すると思っています。だから私は素直に今回のことを喜んでいます。私は奥様のところに不動様が降りて来たと確信しています。