第五十一話 スピリチュアルヒーラー

奥様はブラックホールシールを貼った後の後遺症が次の日の診察日(2017年11月2日)にも残っていました。手のひらの感覚が鈍く、そしてシールを貼った右手の温度が左手よりも低いままでした。疲労感もとれず右手に力が入りにくいという状態でした。まるで右手から精気を吸い取られたようだと言います。

「こんな状態で大丈夫だろうか?」と奥様の今日の診療業務のことが心配です。

とはいうものの私は奥様がそこまで深刻であるとは知りませんでした。奥様は心配かけまいとして平静を装っていたからです。

「〇〇さんにご加持をお願いしていいかなあ」と奥様の不調に勘づいていない私は普通に依頼してしまいます。

「あ、はい、わかりました。」と弱々しい返事に、私は少し変だなあと思いましたが、まあ、お腹がすいているのだろうくらいにしか思いませんでした。

奥様がご加持した後、少し機嫌よさそうに私に話しかけてきました。

「あのね、何だか体が軽くなって右腕が調子よくなってきたみたい。どうやらご加持すると患者さんだけでなく、私も一緒に調子よくなるみたい。」と嬉しそうにしているではありませんか。

 でも考えてみれば不思議です。自分の体内から波動を作り出して患者を治療すると、体力は消耗し気力が低下するのが普通です。ところが奥様はすでに気が抜けた殻のような状態だったのに、患者に波動を送って差し上げると、体力は消耗するどころか逆に元気が満ちてきます。その波動ってどこから来るの? と考えざるを得ません。

 後日奥様は偶然にもインターネットサーフィン中に「スピリチュアルヒーラー」という言葉にヒットしました。そして嬉しそうに私のところに来て話しました。

「すごいこと発見した。ヒーラーにもいろいろあって、気功師や普通のヒーラーは自分の気を練って波動で治療するんだけど、スピリチュアルヒーラーっていうのは、高次元世界のお医者さんがいてそこから波動を送っていてその波動で治療できるんだって。そういう場合は波動が送られてくるから治療をしても疲れないで、逆に気力に満ちるんだって。そういうヒーラーはめったにいないって書いてあったんだけど。私の場合、患者様に波動をおくると元気になるんだからそれかなあ。」と。

 ご加持をすれば波動が満たされるという現象は、明らかに外部からエネルギーを受けているということです。奥様の気がからっぽになったという事件があったからこそ、そのことがはっきりしました。その波動がどこから来る何なのか? 今の私たちにはわかりませんでした。そしてこの頃は奥様が「今後たぐいまれな霊能者としてどんどん成長していく」ことになるとは私は夢にも思っていませんでした。