第四十八話 お茶を濁す

 腱引き師範のO先生は月に2回、金曜日にコラボ治療に来ていただいています。そしてO先生のVIP患者をたまに紹介してくれるのですが、その中にはプロスポーツの第一人者で有名な方もいます。

今日はプロのVIP患者様に私は膝の注射をしてさしあげ、そして奥様がご加持のをしてさしあげます。この患者と私たちは以前に講演会で面識があり、奥様に超能力があることを彼はご存じです。奥様の超能力を素直に信じる方があまりいないという中、超一流のプロスポーツマンともなれば、健康管理は命ですから、本物を見抜く目があるのだなあと感心します。

ご加持を始めるとなんと奥様の上半身が旋回し始めます。これはまさに彼に霊(意識体)が憑いているサインです。しかもその霊体は奥様を乗っ取ろうとしています。VIP患者様なのでいきなり霊(意識体)を降ろすと失礼にあたると思った奥様は、意識体を降ろさないことに決めます。

「有名で人気な方は背負うものも大きいのでいろいろと(霊体を)引きつけることがありますよね」

とお茶を濁して終わらせました。

霊体にはただ憑くだけのものと、奥様を乗っ取ろうとするものがあります。この二つは似て非なるものです。「憑く」というのは「寄生」であり、奥様の欲望や満足、快感、気のエネルギーなどを、奥様にくっついてこっそり吸い取ることです。乗っ取りは奥様の脳の操縦席に座り込み、つまり「憑依」して奥様を操ろうとすることです。

回旋は乗っ取りであり、乗っ取られると奥様は自分の意志と霊体の意志の半々状態となり、奥様がその霊体に体を貸してあげれば、乗っ取った霊の人格に奥様が変身します。

今回のように奥様が回旋する場合、その霊体は奥様に憑依しようとしているわけであり、奥様の口を借りて何か伝えたいことがある(しゃべりたい)のだと思われます。

「伝えたいこと」の内容は本人のプライベートな部分に踏み込んでしまう場合があり、霊を降ろすことが失礼になる場合があります。だから奥様は「今回は憑依させるのをやめよう」と結論を出したようです。

霊体と奥様のやり取りは一瞬なので彼はこんなやりとりがあったことなど全く知りません。

彼のご加持の後にO先生が診療所の受付にやってこられました。彼の様子を伺いに来たようです。

 O先生は入るやいなや

「うわ~何この曼荼羅、ビリビリ来るね。以前より強くなってるね。」と受付の後ろにある曼荼羅を指さして言います。これはもともとO先生が自身の部屋に飾ってあった曼荼羅です。それを奥様にプレゼントしたわけです。だから自分の部屋にあった時と今の状態とを比べることができるのです。奥様にプレゼントした曼荼羅はそこから発する波動が強まったということをO先生は感じたということです。

「たぶん、Kさん(奥様)と曼荼羅が共鳴し合って波動が強くなっているんだと思います。」と私が言うと

「Kさんの霊力は底なしにどんどん上がっていくってT先生が言ってたよ。普通の霊能者は一定のところで止まるんだけどね。」

私は奥様がT先生(奥様が巫女であることを予言していた先生)から「能力が上がり続ける」と言われていたなんて知りませんでしたから、この話を聞いてうれしくなりました。でも、どうして奥様の霊能力が天井なしにどんどん上がっていくってわかるのだろうと不思議に思います。この時は一つの社交辞令だろうと思っていましたが、この後、奥様の霊能力は本当に天井知らずでぐんぐん上がっていくことになります。

 それにしてもO先生も不思議な方です。

「O先生は絶対に普通じゃないですよ。曼荼羅の波動を感じることができる人が普通な訳ないじゃないですか」と私が言うとO先生はとぼけたように

「嘘だろう。だれだってびりびり感じるよ。」とO先生は笑って言いました。

「いいえ、感じません。私は全く感じませんから。」とO先生のお弟子さんがつっこみを入れます。 そうなんです。やはりO先生は波動を感じる能力があるのでしょう。そうでなければ、類は友を呼ぶかのように霊能者がO先生の周りにあつまることなどないはずですから。また、O先生のお弟子さんの中にも波動(霊)を感じることができる者が数名いるそうです。息子さんも幽体離脱の経験者ですし、やはり遺伝的に波動の感受性の高い家系なのではないかと私は思っています。