第三十七話 テラヘルツ鉱石

 奥様は様々な精密電気機器を誤作動させる能力があることは何度も説明している通りですが、それは「現代科学では認識不可能な波動」を奥様が自分の体から発しているからであることは否定し得ない事実です。これを否定することはそれらの超自然現象を毎日のように見ている私自身の「頭がおかしい」ことを認めることになります。逆に言うと、私の頭がおかしくないのであれば、奥様は間違いなく超能力者です。

CIAが本物であると認めた超能力者ユリゲラー

だから私は奥様から発せられる波動のエネルギーを医療に応用することを当然ながら考え始めます。なぜなら、私の診療所には「西洋医学で治らない患者」だけが集まるからです。手段は問わず、治せるものは治していく。そのためにあらゆる方法を用いるのは、害がないのなら当然するべきです。

 奥様は波動を出せますが、その波動を医学に応用できるかどうかは別次元の話です。また、応用できたとしても、その波動は四六時中患者様に与え続けることはできません。だから奥様の波動を他の何かに転写し、その転写させたものを患者様に持たせれば治療効果があがるかもしれないと考えます。つまり生身の人間を用いた「波動医学」です。

 ただし、どんな波動がどの病気を治せるのか? 波動が逆に患者を悪化させることはないか?などの検証が難しく、実現までにはハードルがいくつも存在します。

 まず、私はネットオークションで「波動転写器」とインプットしてみます。すると、低下10万円台のものが数万円でオークションに出されていました。波動転写器の信憑性は非常に疑わしいのですが、「まあ、ためしに買ってみるか」と思い購入することにしました。

 次に必要なものは奥様の波動を何に転写させるか?です。これはできるだけ強力なものがいいだろうと考え波動を発する石と言われている「テラヘルツ鉱石」を購入することにします。鉱石に奥様の波動を転写し、患者にその石を持たせて治療するという方法を私は思いつきました。

 発注した翌日、宅配便が来ました。私はその荷物がテラヘルツ鉱石であることは知っていましたが、奥様は知りません。その箱は奥様の左後ろ2mのところに置かれてあります。

 私の診療所では受付の棚の後ろの壁に曼荼羅が飾ってあるのですが、私はこのテラヘルツ鉱石に曼荼羅の波動を転写させたいと思い、曼荼羅の目の前に箱を移動させました。そして昼休み時間に奥様の前でそのテラヘルツ鉱石の入った箱を開けます。

 すると奥様の上半身に鳥肌がたち、びりびりとしびれ、悪寒が走ります。「何これ!?」と驚きと不快感と不安をあらわにします。

「波動石だよ。テラヘルツ鉱石と言って波動を発していると言われている石だけど・・・」

奥様は嫌悪感丸出しでその場を逃げ去ります。その石の波動が奥様には害をもたらすようでした。

「やめてよ、そんなの買ってくるの」

「ごめん、わかった。今すぐ捨ててくるよ」

と言って、私はあわてて少し離れたゴミ捨て場に捨ててきました。

私も驚きでした。石からはかなり強烈な波動が出ているらしく、それが奥様の肌に合わないということがわかると同時に、石という無機質なものに、奥様をここまで嫌がらせる波動が存在しているという事実に驚きました。現在の科学では考えられない出来事です。

 石と言えば、「運を変える」「健康保持」「安全祈願」などのためにパワーストーンを身に着ける人が後を絶ちませんが、案外危険なものかもしれません。ご利益がある場合もありますが、害になることも多々あると思われます。パワーストーンは軽はずみに着けるものではなさそうです。

 また、石は石固有の波動を発していると思いますが、様々な波動を吸収しやすく、悪い波動を吸ってしまうと、それは悪運の源にもなり得るでしょう。

奥様は私にいいました。

「O先生(奥様の師の僧侶)は石は絶対に身に着けてはいけませんとおっしゃってたの。それに私も石や貴金属はもともと好きじゃないし、以前、ブレスレッドをつけたときに体調がおかしくなってたいへんなことになったのよ。だから私はネックレスも指輪もしていないでしょう? あまりお金かからないね(笑)」ですって。最後に奥様はボケてくれました。

 世の宝石店の方々には申し訳ありませんが、特殊な石は取り扱いが難しいようです。ご注意ください。ということで、波動転写機も今は倉庫で眠っています。いずれ利用価値が出てくるかもしれませんが、もう少し研究してからですね。