第三十六話 亡霊を連れてくる患者

 私の診療所に通院する患者様の中にはいつもと様子が違う方もおられます。奥様は「様子が違う」ことを霊感でわかってしまいます。

 特に、患者様が霊(意識体)を引き連れている場合、奥様の近くをその人が通ると奥様の全身がざわっとして鳥肌が立ちます。めったにありませんが、稀に円を描くように上半身が動き出すと、これは外部の意識体が第7チャクラを通して奥様に入り込もうとしているサイン。入り込むときに波動が渦を巻き、体が旋回すると言われています。

 ある日、突発性難聴の男性患者が受付の前に来た時に奥様はざわっと鳥肌が立ち、霊(意識体)がこの患者についていることを察知します。

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 霊(意識体)は奥様に入りたがっているようです。何かを伝えたいときに霊(意識体)が奥様の体を借りようとします。

 しかし、霊を降ろしてしまうと通常の医療事務ができなくなるので奥様は一旦、霊の意志を無視し拒絶します。

「でも霊が何か言いたがっている。かわいそうだからしゃべらせてあげよう」と今回だけは奥様のお慈悲で霊に体を貸してあげることにしました。この頃は霊体を自分に降ろすことの危険性をまだ知らない時期でしたので、奥様もわりと気軽に霊に自分の体を貸してあげていました。

奥様は患者に向かい「あなたには何か知りませんが霊がついてきているようです。私に降ろしてしゃべらせてあげるので驚かないでください。」と言い、霊の要求を受け入れることにしたそうです。私はその時、となりの部屋でブロック注射していました。

 奥様は隣の部屋で男の声色でしゃべりはじめたので「降霊をしたな」とすぐに気づきました。

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「ん~~。無念じゃ。娘を頼む。」

とそれだけ言うと、霊は奥様の体から離れていきました。

奥様は患者様に向かって

「最近どなたかお亡くなりになられましたか?」と尋ねます。

「はい、2日前に妻の父が亡くなりました。寝ている時に心臓発作を起こして急に。」

「そうですか。お父様は娘様のことが気がかりなようです。奥様をしっかり支えることをご霊前でお伝えするとよいですよ。急に亡くなってしまったことで心の準備ができていなかったのだと思います。自分の思いを伝えることができたのでご安心されたと思います。おそらく診療所に私のような霊能者がいることを知り、お父様がここまでついてきたのだと思います。」

 さて、奥様は診療所で降霊し、亡くなったお父様の無念を伝えてさしあげましたが、普通の病院でこれをすれば解雇されるでしょう。第一、患者が驚きます。しかし私たちの診療所では患者はあまり驚きません。その理由はそもそも私たちの診療所は西洋医学では治らない症状を「奇蹟を起こして治す」所であるので超自然現象が目の前で起こっても、患者たちはある程度、心の準備ができているのだと思います。

 降霊をしてさしあげた患者様は、その2週間後にも来院されましたが、その時は霊(意識体)を連れてきていませんでした。

 霊能者はこのように、この世に未練を残して死んでしまった方の言葉をこの世の方々に伝える能力を持っています。この能力を使えば、未解決の殺人事件を次々と解決することが可能です。しかし、霊能者の誰もそれをやらない理由があります。降霊にはリスクがあるからです。しかも恨みを残して成仏していない方を降霊すると命を持っていかれることもあるのです。この頃はそう言うことも知りませんでした。