第三十三話 お告げのあった醍醐寺参拝

醍醐寺参拝は先月奥様にお告げがあった場所ですから、ここに来ることは私たちの念願でもありました。当日早朝は雨が降っていましたが、醍醐寺が開門するころには運よく雨が上がりました。

これが醍醐寺全景です。この地図では狭い敷地に見えますが、実は山のふもとから山頂まで極めて広大な敷地が広がっていて、山頂に行くには標高にして500mくらい登らなければなりません。私たちはそのことを知らず、わりとおしゃれな軽装でした。革靴だったら大変でした。

醍醐寺は真言宗醍醐派の総本山です。奥様は真言宗の信者でしかも人を治療するという仕事のサポートをしていますので、本尊が薬師如来であるところにも通ずるところがあり、ここに来ることはまさに念願でした。そしてお告げ(啓示)の意味を知りたいという気持ちに多少のあせりもありました。

霊宝館の外観

 私と奥様は霊宝館を参観しますが、ここにある仏像には特に強い波動を感じませんでした。

 仁王門には金剛力士像が両側にありましたが、全く波動を感じません。仁王門を抜けると高い密林が道の両側にそびえたち、とても心地よい気が漂っていました。それは私のように気を感じることのできない人間にもわかるほどです。

 その奥に五重塔と金堂がありましたが、奥様は金堂からわりと強めの波動を感じました。しかし、高野山ほどではありません。

 お告げのあった感覚とはどれも全く違うと言います。お告げの発信主を見つけることができず収穫なしです。

 私と奥様は霊宝館の喫茶店でカフェオレを飲み、一息つき、そして上醍醐へと登山をすることになります。

 登山口には両側に高い杉の木が生い茂り、奥様はここで明らかに強い波動を感じます。そこには結界があるようで、結界の中に入った瞬間に大きな波動を感じたと言います。

さてここから山頂まで山を登るのですが、山道があまりに急で険しく、奥様の心臓を破ります。急な坂がずっと続くのですが、普段全く運動をしていなかった奥様には非常につらい登山です。二人には会話もありません。途中、まだ2割くらいしか登っていない場所に小さな滝(不動の滝)があり、そこの水は冷たく、とてもおいしくいただきました。

奥様にとっては救いの水だったようです。登山の坂道があまりにも急なので私たちは休み休み登り、山頂までまで2時間近くかかったと思います。

 ようやく薬師堂、五大堂、如意輪堂、開山堂と巡ることができました。しかし、波動は感じません。驚くほどさびれていて手入れも行き届いていません。これほどのお寺が、一体どうしたことでしょう。しかも苦労して登った山なのに、お告げに呼応した波動は全く感じられず、奥様は疲れも重なって非常にがっかりしていました。

 山頂付近の開山堂で「もう帰ろうか」と私は言います。ですが奥様は「あっちにも何かあるみたい」といいます。

 ここまで来たのだから少しくらい寄り道しても罰はあたりません。奥様の歩くまま、私はついていきます。

 少し歩くと石畳があり、石柱の柵があり、奥様はそこで激しく反応し始めました。「ここすごい!」

 石柱の柵の向こうからとてつもない波動を感じると言います。

「この感じ、お告げのあったときの波動と同じ!」

全身に衝撃波が走り美技手が強くビリビリしだします。奥様がめったに感じることのできない高次元(大いなる意志)の波動です。

奥様へのお告げはこの場所から発していたのだと、ここから呼ばれたのだと奥様は感じます。はるばる東京からやってきて、きつい登山の後、ようやくここに導いた主と出会うことができた。その嬉しさ、感動は言葉にできません。奥様は涙を流します。

 私は横にある立て札を読みます。そしてここが白河皇后(藤原賢子)のお墓であることを知ります。奥様はどういうわけか、白河皇后に導かれたようです。

 奥様は白河皇后陵を前に自分の所在を名乗ります。

「私は東京都中央区〇〇町の〇×〇×と申します。光栄なお導きのもと、参上させていただきました!ありがとうございます!隣にいるのはパートナーの〇〇〇〇です。江戸川区に位置する診療所で共に手を取り、難病患者さまへの治療に全力で専念させていただいております。今後も引き続き精進します!お見守りしていただければ幸いです」と半分トランス状態になって揺れている体、震えている声で必死に声を出します。

 と、丁度その時です。パタンと大きな音がします。奥様は音がしたことしか気づいていませんでしたが、私は後ろの石のベンチに置いたカバンとペットボトルが落ちるのを目撃しました。ベンチは谷側に10度くらい傾いておりペットボトルが谷側に落ちていました。それは自然に落ちたとしても理解できるのですが、カバンは山側に落ちているのです。つまり、板を割ったように、まるで真上から物理的な力が加わったかのように二つの物体が分断されて両側に落ちたのです。あり得ない物体の落ち方を目撃してしまいました。

写真はイメージです

 この理由を考えることは意味がありません。ただただ、意味があることは、お告げを受けてここまでやってきて、皇后陵の前であいさつをするとそれに呼応するように物体が物理の法則を無視して落ちたことです。これの意味することは私にも奥様にも今のところわかりません。しかし、その意味を調べなければ、気づかなければ、ここに招いた方の意志を無意味にしてしまいます。

ここに来た意味はまさしく白河皇后のご意志なのだということを私と奥様は感じました。そして今後の二人の人生はこの啓示に沿って歩むべきであると言われた気がしました。それが何なのかを調べることは私と奥様の宿題となりました。今はまだ私たちが具体的に何をすべきであるのかわからないからです。 この後、白河皇后をモデルにして作られたのが十一面観音菩薩像であることを知ったのですが、なんと十一面観音菩薩像は医と健康を司る仏様だったのですから驚きです。

この頃は奥様にご加持の能力がまだ芽生えていませんでした。だからここに来た意味は全く理解できませんでした。しかし、奥様の人生は、ここからいろいろと変わっていき、後から考えるとこの皇后陵と無縁ではなかったことが判明していきます。