第三十一話 誰が母を追い詰めた?

私は大阪の東大阪市の出身です。高校時代までそこに住んでいました。母親は私が21歳の時に亡くなり、大阪の実家はもうありません。ですが、実家付近の夢をたびたび見るものですから、実家付近が今どうなっているのか気になります。大阪に来た時は一度は実家付近を散策したいと前から思っていました。

 そこで私はグーグルマップで自宅近辺を調べ、今はどうなっているのか見ていました。すると私はあることを思い出しました。そういえば私の実家から50mくらいのところににわ鶏の屠殺場があったことを思い出しました。小学校に行くにはそこの前を通らなければならず、雰囲気が不気味で気持ち悪く、鶏をゆでるにおいがするので、息を止めて走って通っていたことを思い出します。

もしかして私の実家の近辺にはとても悪性の波動がうごめいていて、そのせいで母親が若くして(57歳)死んでしまったのではないか?という疑念が浮かぶようになりました。もしかすると母親は土地の波動に殺されたのかもしれない。そう思うと怒りがこみあげてきました。そして真相を突き止めたい衝動にかられます。私は奥様に事情を説明して頼みます。

「母親が死んだ原因を突き止めたいんだ。ぼくの実家付近の波動調査につきあてくれないだろうか?」と。

奥様は「波動が悪そうなところには行きたくない」と言います。それはそうでしょう。波動の影響を強く受けやすい者にとって、悪性の波動の場所へ行くことで命を奪われることもあるからです。私は実家に行くことをあきらめるのですがとてもイライラした感情になります。そして眠れません。

 夜中の1時を回った頃、私は奥様に「やっぱり、実家近くまで一緒に来てくれないか」と頼み込んで説得します。レンタカーを借りているので車で移動します。

私の実家は近鉄奈良線のH駅が最寄駅です。土地勘がありますから、高速道路を使わず下を通りました。H近くの近鉄奈良線の高架を超えた地点で奥様は「何かわからないけど嫌な気を感じる」と言い出しました。

まだ目的地までは2キロくらいはあるという場所でです。どよんとした重さと寒気、くらい雰囲気と言います。その時は奥様の言葉の意味がわからず、無視して進みました。

Rの交差点を東に向かい旧高野街道を超えたところから奥様の様子がさらにおかしくなります。

私の通ったN中学校のある付近からです。嫌な気がさらに急に強くなると言うのです。私にはわけがわかりません。まだ実家付近までには距離がありますし、奥様が波動を感じるとしても、その区域があまりにも広いからです。こんな広域で悪い波動を感じ続けるなどあり得るのでしょうか?

 私は夢に良く出てくる子供の頃遊んだO公園の前に車を止めました。夜中の2時です。奥様が言うには悪質な波動が最も強くなる時刻だと。

 私の実家はここから歩いて200メートルくらいのところです。車を降りようとしたところ、奥様の顔が激しく歪みだしました。高野山の胎蔵曼荼羅の前に行った時と同じ現象です。

「ごめん、ちょっと耐えられない」と奥様が体調不良を訴えます。「わかった。帰ろう。この辺がやばい波動に満ちていることはわかった。もうあきらめるよ。」と言ってすぐに車をUターンさせ、その場を逃げるように走り去りました。やはり、私の実家付近は悪い波動に満ちていたのか・・・母親の弱ったからだにとりついて、母を死に至らしめた可能性があると考えるに至りました。

 奥様の顔が激しく変形するという現象は恐らく「よいことではない」ことなのでしょう。するとあの胎蔵曼荼羅は悪意の住処になっているのだろうか?などとよからぬことを考えてしまいます。まさかねえ・・・高野山にある宝物に悪意が潜むはずもないんだろうけどなぜなんだろうと悩みます。

 本当は実家の前まで歩いて行きたかったのですが、奥様は近寄るほどもできないほど悪質な波動を感じるし、私はやるせない思いを抱き夜中の大阪を帰りました。今回は残念でしたが奥様ありがとう。恐怖の波動スポットに誘ってごめんなさい。でも実家の場所なんですよ。そこは・・・。おそらく全国には悪い波動に覆われている地域が点在するはずです。風土病と言われている病気の中には波動が原因であるものもあるのでしょう。なにせ、日本全国が人間同士の戦場だったわけですから。