第二十八話 二座式供養の翌早朝の出来事

信貴山旅行の1週間後の話です。奥様の通っている師のお寺では先祖の霊を救済する供養があります。この供養は祈祷者の精神疲労が激しく、威力が絶大で秘法とされているものだそうです。奥様は私の先祖も含めてこの二座式供養をしていただけるように師の僧侶先生に依頼していました。8月28日の午後3時から供養が開始になり6時に終わりました。

供養が終わったころの時刻は、診療所が終わり、東京駅に切符を買いに向かうところでした。私と奥様は東京駅近辺で食事をし、午後7時に私が「7時だし、そろそろ切符を買いに行こうか」と言ったところ、奥様は「まだ6時じゃないの?」といいます。「えっ? 時計が止まってるよ。それ! でも買ったばかりの時計だよね」「もしかすると・・・」私と奥様は顔を見合わせます。「そうだ丁度二座敷供養が終わった時間だわ」と。

おそらく、奥様はお寺からの強い波動を受け、知らない間に奥様から特殊な波動が出たために、クオーツの時計が止まってしまったのだと推測しました。買ったばかりの電池がしっかり入ったクオーツの高級時計が止まるはずないのに・・・これは偶然ではないと私と奥様は勘づきます。

その夜は特に奥様には何事もおこりませんでした。

ところが・・・供養の翌朝5時ごろ、奥様はすやすや眠っていたのですが、いきなり布団の中で足が震え出し、震えがどんどん頭の方まで移動し、今度は体の上半身が振り子のように上下動し始めました。本人もこれを止められません。なんとか起き上がろうとすると今度は上半身が回旋し始め、布団の上で寝返りを打つように右へ左へゴロンゴロンと動きだしました。私もそのころ、やっと目覚め、奥様の異変に驚きましたが、常日頃こういうときには「無理に私の動きを止めないでくださいね」と言われていましたので、私はただじっと見ていました。

 奥様は自分に起こっていることが昨日の供養と関連しているのではないかと察知します。

しかし考えてみてください。寝ている時にいきなり何の前触れもなくトランスに入るという現象。普通の人に起こればてんかん発作だと勘違いされるでしょう。また、自分に起こったトランスの原因が先祖の霊を供養したために起こったと考えるのも普通の発想ではありません。さらに、供養を行ったN寺はここから100キロ以上離れています。それなのに、距離を飛び越えて時計が止まったり、トランス状態が起こったりしたこととお寺の供養を結びつけるのはその着想こそが異常であると。

 結びつけないとしても、今回のトランスは私が驚愕するほど強いものでした。奥様がここまで強く揺れ動いたのはお正月に起こったトランス以来二度目です。

 しかし、奥様に起こった今までの奇怪な現象を目の前で見ている私からすれば、まあ奥様に起こる普通の出来事です。

 この時期、私たちは二座式供養がどういうものなのかを全く理解していませんでした。二座敷供養が先祖の霊に及ぼす強い影響を知るようになるのは、1年も先の話です。今はその全貌を明かしません。読み進めていくとわかるようになると思います。

奥様はトランス状態が収まった後、すぐに飛び起きて、朝の5時半だというのに奥様の師であるO先生に電話しました。するとこんな時間なのに偶然にもO先生が電話に出てくれました。

 奥様は息の整わないたどたどしい話し方で「ありがとうございました。供養の効果がすぐに出たようで、私に反応が出ました。」と伝えました。一般的に考えればこの会話の内容は全く意味不明です。しかし、O先生は奥様に二座式供養が原因となって霊障が起こったことをすぐに察知したようです。なぜなら、O先生はすでに二座式供養後にいろんな怪奇現象が起こることを何年も前から経験しているからです。

 O先生は奥様に霊能力があることを知っていましたので、全く驚いた様子はありませんでした。

しかし科学者の私はこのあたりから距離を飛び越えることのできる未知なるエネルギー(波動)があるのではないかと考えるようになりました。「距離を飛び越える」とは高次元世界が存在することを意味し、まさに現代最新物理学である量子力学の理論です。

神仏のエネルギーは高次元に存在する可能性があることを考えざるを得ない出来事でした。