第二十七話 過去最大の波動

2017年7月中旬に実行した2泊3日の今日は大阪旅の最終日です。午後の便で発つため、午前中しか観光ができません。私は奥様に「どこに行く?」と訊くと

「信貴山」といいます。


信貴山の山頂にあるお堂がどうしても気にかかるとのことでした。

 朝一でホテルの食事を済ませ、その足で車に乗ります。しかし・・・車のナビが最初から誤作動し200メートルくらい車の位置がずれています。そうなるとナビは道のないところを走っていると勘違いしますから「正しいルートを走行ください」とアナウンスがなりっぱなしになります。


 奥さまから気が発せられているとナビが誤作動を起こすことはこれまでも何度も経験していますので、ナビを無視して走ります。レンタカーに搭載されている最新のナビですが、奥様の力により誤作動します。

しかし私は大阪で生まれ育ったので地図なしで運転できます。

 阪神高速に乗ったころにはナビが正常に戻りました。が、阪奈トンネルにさしかかる手前から、再びナビが誤作動。地図では道なき道を走っています。慣れているのでナビ無視です。

 途中、セルフのガソリンスタンドに寄りました。セルフなので自分で車の給油口にピストル型のノズルを突っ込みます。そしてレバーをいつものように握り、給油開始。ところがすぐにレバーがロックされてしまい給油ができません。何度行ってもロックされます。そこで店員を呼び、「給油されない」ことを言うと、「ガソリンタンク口の形の違いでガソリンが入りにくいことがある」とのこと。しかし、今までそんなことは一度もありませんでした。

 店員がガソリンを入れようとしてもやはりすぐにロックされます。店員も不思議がっていましたが、数分経過すると自然にロックしなくなりました。おそらくこれも奥様の波動が原因です。これも気にせずそのまま信貴山に向かいました。


 今日は時間がないので山頂への道を寄り道せずに登ります。山道にはたくさんの鳥居がありました。

山頂が近づくと右手に信貴山城跡の碑が立っていました。

そして階段を上ると右手に売店。それを超えると山頂に祠があり、その周辺は見晴らしの良い高台になっていました。真ん中の祠を中心に小さな祠がたくさんあり、その全てに賽銭をあげ拝んでいきます。

 時計回りに拝んでいましたが、奥様には特に大きな変化がありませんでした。


 ところが奥様は目を離した隙に単独行動をします。美しい羽根をした鳥が奥様の前をうろつき、少し奥の祠にまるで「こっちへおいで」と言っているように進んでいったからです。

*写真をよく見ると白いもやが蛇行するようにかかっているのがわかります。右下に鳩がいます。


私は奥様を見失います。奥様はすかさずスマホにその鳥を撮影、その後に私と合流し「鳥が私を案内するようにここに導いたのよ」と、その時の写真を私に見せ、教えてくれました。ました。奥様は鳥が導いた祠に近づきますが、そこには蛇の形をしてとぐろを巻いている石像が祀ってありました。


奥様は石像に近づくと手・両腕・首に強烈なビリビリを感じると言います。そして大胆にも奥様はその石像を愛着のあるぬいぐるみのように触りに行きます。へびのとぐろ、口、頭から強いビリビリを感じると言いながらなでまわします。普通の人なら祟りが怖くて触れないと思うのですが、奥様はまるで愛しいペットを触るがごとくなでまわすのでした。


祠には「空鉢宝龍」と書いてありました。そして横に石碑があり「御祭神の巳さんを触られた方は身体健全諸願成就を叶ひられます」と書かれていました。奥様はこの石碑を読むことなく直感で触っていました。奥様さすがです。


 奥様は「空鉢宝龍」の右横の祠からも強い気を感じると言います。そこには八重姫大神と書かれた石碑がありました。私は奥様から少し離れたところにいたのですが、「八重姫大神」の石碑の前でトランスに入ってしまったそうです。その時に奥様は「ウオー」と雄たけびを上げたそうなのですが、私はそのおたけびにも気づきませんでした。

*この写真にも白いもやがかかっています。


 奥様はそのトランス状態を自分で解除したそうです。その後に私と合流。私はさっき奥様がスマホで見せてくれた鳥のことが気になって仕方ありませんでしたので、すぐ横の売店に行き、売店のおばさんに訊ねました。

「あのう、すいません。そこの「空鉢宝龍」って書かれてある蛇の像の由来を教えていただければありがたいのですが・・・それから、ここでは鳥が住み着いていますか? 先ほど鳥をみかけたもので・・・」と。

 ところが・・・売店のおばさんが喉の奥を苦しそうにして咳をこらえていて返事がありません。

「ちょっと、のどが苦しくて声が・・・」


その後に少し落ち着いてから「空鉢の由来は命蓮上人が鉢につけて飛ばした神霊の話から来ていまして・・・

そちらに書いてあります。それから、ここには野生の鳩が3匹住み着いているようです。お供えのお米とか食べて住んでいるみたいです。」と説明してくれました。 


ちょうどその時です。奥様に2度目のトランスが入り、「ハハハハハ」と笑い出しました。

 なんとその後に奥様はかなり大きくのけぞりました。とても強い力です。私は奥様が倒れないように必死で支えていました。しかし私の手を嫌がるようにガニ股で階段を上ろうとします。

そして私に向かって「手を離せえ!」と図太い声で叫ぶのです。

 思わず私はびびってしまい、奥様から手を離してしまいます。奥様はそのまま階段を登り、空鉢堂の正面に移動し、そこで「精進せえ!」と一言言い放ち、奥様は正気に戻りました。憑いていたものが奥様から出て行ったようです。

 それを見ていた境内を清掃していた信者のおじさんが「なんか悪い者が憑いてはんねんわこの人に」と奥様を悪霊を見るような目で見ていたことが極めて屈辱的でした。


 周囲には参拝客が二組ほどいましたが、その二組も恐ろしいものを見るように少し離れたところで私たちを見ていました。売店のおばさんも一部始終を見ていました。

 その後、私たちは何事もなかったように売店に向かい、奥様はお守りを購入しようとしました。するとそのとき売店のおばさんはこう言いした。

「私は20年ここで働いてますけど、今日みたいに声が出なくなったのははじめてです。近づいてきはったときから体が動かなくなりました。もうびっくりしましたわ。」


「すいません。霊力の強いところに来ると彼女のチャンネルが開いて強い波動が出るみたいなんです。その波動の影響で金縛りになったんだと思います。」と私は一応弁解しておきました。奥様は霊の媒体になることはあっても「人を金縛りにするまでの法力」は持っていません。しかし彼女に霊が乗り移ると、その霊が放つ波動で第三者に影響を及ぼすことがわかりました。後に奥様の放つ超能力の原点がこの召喚であることがわかるようになってきます。奥様が超能力を操るのではなく、奥様が自分に神仏を召喚し、召喚された者の発する超能力で第三者に影響を及ぼすことです。しかし、当時はそのことが全く分からず、奥様の金縛り術のすごさに私はただ驚くばかりでした。


私は売店のおばさんに少し申し訳ないと思いながらも

「私は東京で難病を専門に治療している医師で開業しています。もし、何か困った病気に悩んだときは連絡ください。お力になれるかもしれませんので。」と伝え、名刺を置いて帰りました。


帰る途中の道で私は奥様に

「能力は確実に上がっているけど、その力は普通の人には理解できないから怖がられるなあ。掃除のおじさんはおまえに悪霊が憑いてるって本気で思ってたぞ。金縛りにあったおばさんも、悪霊をつれてこられたせいでそうなったと思われたらやばいよな。注意しないと悪いようにも受け取られる。ここからは慎重に行こう。」と話しかけながら歩きました。


 奥様が普通に戻って階段を下りていると「あっちへの方へ行きたい」と信者の方々の休憩所(千手院)を指しました。

「いいよ。行こう。」と言って休憩所に降りると、そこには袈裟を来た僧侶がいました。一人はまだ若い男性、一人は中年の尼僧の方でした。

 奥様は今日起こった不思議体験を解明したくて、僧侶の方と話がしたかったようです。ですが、尼僧に近づくと再びトランス状態に入ります。


 尼僧の方はこういう状況に慣れておられ、すぐさま奥様の手をとり真言の念仏を唱えます。しかしながら今回のトランスはかなり強力で、尼僧の方もてこずっている様子でした。なかなかトランスが解除されません。そこで錫杖という(先端に金属の輪がいくつもついている)杖で奥様の背中を叩き突き、憑いていたものを払ってくれました(後で奥様、とても痛かったそうです)。


 もしかすると山頂で奥様に憑いていたものがまだ十分に抜け切れていなかったのかもしれませんし、尼僧に奥様が近づいたことでチャンネルが開き、再び異なったものがついてしまったのかもしれません。が、今回はすぐに払ってしまったため、憑いたものが何であったかはわかりません。


 奥様は尼僧の方にお礼を言うとその方は

「困ったときは毘沙門天の真言であるオンベイシラマンダヤソワカを唱えると大丈夫ですよ。」とアドバイスしてもらいました。本当にありがたいことでした。


 奥様に降りてきた霊(波動)はおそらく戦国武士であり、そこで亡くなった松永久秀の家臣ではないかと私は考えます。家臣と言えど位は高かったと思います。もしかすると松永久秀本人かもしれません。そうでなければ「精進せよ」という上から目線の言葉を言いませんから。


松永久秀はこの信貴山城に拠点を置き、戦国時代に織田信長に滅ぼされています。空鉢堂はその本丸だったと言われています。

 そして空鉢堂の周囲には結界があり地縛霊は近寄れないようになっていたのでしょう。その地縛霊が奥様の体を借りて結界を破り、そして本丸のあった空鉢堂へと入り込んだのではないでしょうか。

 真相は謎ですがここには未成仏の武将の霊がさまよっているようです。私はただただ驚くばかりですが、奥様の計り知れない能力に尊敬の念を抱きました。


 後日東京に着いたときに奥様が

「あれ? 信貴山の頂上で買ったおまもりがない。」と気づきました。

「もしかして置いて来たか? まああきらめるしかないなあ。」と。

 その数日後、空鉢堂の売店のおばさんから手紙が来ました。そこに忘れていたおまもりが同封されており

「あの時はとてもびっくりしてご購入いただいたお守りをお渡しそびれてしまいました。申し訳ありません。人生で初の貴重な体験をさせていただきありがとうございました。」と書かれてありました。

「よかったね。貴重な体験っていうことは、悪いものだとは思ってないってことだからね。」

丸く収まりおまもりもあって幸運でした。