隠蔽体質、失われた良心

以下の読み物は若かりし当時の私の暴言としてお読みください。また、当時の正直な気持ちでもありました。医療は法によって多くの制限を受けているということがわかる読み物となっています。
私は常に目の前の患者を全力で治療する。全力とは押しつけがましいものではない。患者の幸福に対しての全力なので「この人に私の治療は必要ない」と思えば「他の医師にかかった方がスムーズ」であることを進言する。患者の中には待ち時間が長いことをもっとも苦痛と感じる人もいるわけで、そういう人には待ち時間の少ない医師を紹介してあげる。決して押しつけがましくガンガン治療するのとはイメージが違う。
さて、私の外来ではブロック注射を受ける患者が90%以上を占める。整形外科というよりはペインクリニックの様相が強い。ブロック注射の後には注射部分の周囲が痺れたり力が入りにくくなったりということが起こる。もちろんこれは「一時的」なものであるが注射を受けた患者に説明しておかないと「医療ミスでしびれが起こった」と思われてしまうのでトラブルの原因になる。だから患者にこんせつていねいに治療効果や副作用について説明する。
しかし説明時間に長くかけていると患者の治療に時間を割くことができなくなるので軽く説明して残りは「読んでおいて下さい」と書面で渡す。今回はその書面の話だ。
私は注射後の諸注意の書面を患者に渡しているのだが、こともあろうにその書面を診察室に忘れて帰ってしまった。すると何が起こるか?その書面を事務長が読んでしまい私は注意を受けることになる。私の書いた書面は過激で問題点が多いそうだ。それはなぜか?ここはじっくりお話せねばなるまい。問題が起こることが実は問題なのだ。日本の医療の隠蔽体質・無責任・何気ない悪意…そういったものが見てとれるからだ。
まずは今回私が患者に渡している書面の全文を以下に記載するが、この文章の太字の部分が修正または削除することを進言された部分である。いったいどういう文章が修正・削除されるのかみてもらいたい。ちなみに私は以前勤めていた病院でもこの手のもめごとを起こした。そして医事課長のむなぐらをつかんで彼を叱責したこともあったことは前にも述べている。

腰部ルートブロックを受けた方への諸注意

  • <この注射の説明>
この注射は頚椎の神経根付近に表面麻酔剤(ステロイドを入れることもある)を注入し、局所の悪循環を断って神経根の炎症を治療する→抑えるためのものです。腰の両サイドの筋肉痛、骨盤から殿部にかけての痛み、下肢の痛みなどは神経痛であることが多く神経根への治療を行わなければ根本的に治癒しません→行うことが効果的です。この注射はそれらを治療するための→それらの改善を期待できるものです。また、しびれやだるさ、足が途中で止まるなどの症状を改善させるためにも行っています→を期待できます
  • <注射後のしびれ>
神経根に注射液が直接入ると1時間程度足がしびれて力が入りにくくなります。しかし(ほとんどの場合)すぐに元に戻りますので心配いりません。このようにしびれた状態になるほうが注射の効果が高くなりますが、しびれることを嫌がる患者様が多いので藤田医師は通常、なるべく神経根に直接注射液を注入しません。ですから多くの場合注射後にしびれは出ませんが、それでも多少はしびれることもあることをご承知ください。
  • <リバウンドについて>
ルートブロックを行うと途絶えがちであった神経根の血流が良なります。すると神経が回復し、そのおかげで今までよりも痛みを強く感じるようになる場合があります。これをリバウンドといいますが、半日から数日でおさまるもので、その後に症状が劇的に改善されます。ただし、リバウンドの症状は下半身には出現しにくいですのでめったに起こりません。万一リバウンドが現れても、それは治療上の一つの過程ですので少々ご辛抱とご理解いただきますようお願いします。
  • <腰部ルートブロックについて>
腰椎のルートブロックは通常はレントゲン透視下に造影剤を注入しながら行う大変おおがかりな治療です。おおがかりで手軽にできません。また手技が面倒すぎるため、症状がよほどひどくならない限り医師もこの治療を患者にすすめません。藤田医師はそれを指先の感覚とXP写真を頼りに数十秒で行うという離れ技を行います。ですから病気が初期の方にも気軽に行え、その効果は非常に高いものです。たった一度で完治された方も多数おられます(病気が進行している方は一度では無理です)
  • <腰椎ルートブロックの限界>
左右何本もの神経根が炎症を起こしている場合が少なくありません。その場合は1本1本を狙うこのルートブロックでは力不足となります。また、仙骨神経(S1)のブロックは針が到達しにくいため難しくなります。こういった場合は腰部硬膜外ブロックを選択します。
これらが修正・削除された箇所である。(  )内は新たに挿入された言葉。
まず、腰部ルートブロックというものがどういうものかを知らない方が多いと思う。これは神経の根元に直接注射針を刺し、そこに造影剤を入れレントゲンで神経を確認、その後に麻酔薬・ステロイドを注入する手技だ。神経根の炎症を改善させるにはもっとも効果があると言われている治療だ。
だがもっとも治療効果があるこのルートブロックにはもっともあってはいけない短所がある。それは気絶するのではないかと思われるほど痛いということだ。
一度でもこの治療を受けた者は二度と受けたくないと言う。そこまで患者に耐えがたい痛みを伴わせるのだが、さすがに治療効果は高く神経痛を治す力が十分にある。「これがダメなら手術しかないね」と言われるくらい「最終兵器」として患者に行われる。私も昔はよくやったものだ。
このルートブロックが痛いのには訳がある。それは神経に直接刺すというのもあるが、そこに造影剤を入れなければならないからだ。造影剤は浸透圧が高く猛烈な痛みを惹起させる。しかも神経内という狭い所に入れるので神経内圧も高くなる。だからはっきり言ってとても野蛮な治療なのだ。
その上、深さ10センチくらいのところの直径3ミリほどの神経を狙うわけだから手技が難しく、慣れない者がやると神経根を傷つけてしまうという危険性も秘めている。
この手技は高度な技術を持つ医師が行えばレントゲン透視も造影剤も必要なく勘を頼り(ブラインド)に行うこともできる。ところがレントゲン透視や造影剤を使うことを義務付けられている。ブラインドで行えば患者の苦痛も軽減できるし透視室を使わず外来で手軽にできるというのに…なぜそれを許さないか? その理由はお値段にある。ルートブロックの保険点数が1500点、つまり1万5千円もするのだ。こんなに高い値段の処置を手軽に行われてしまうと国の財政が破たんする。そこで「絶対に手軽にさせない」ための条件をつけている。それがレントゲン透視下に造影剤を用いて行うというハードルだ。
このハードルがあるため患者は苦痛を伴う。治療効果はあっても何度もやりたいとは言わない。外来で手軽にできないので予約して別の日にやらざるを得ない。患者にもきちんと承諾をとらなければならない。こうなるとどんなに効果が高くても医師がルートブロックという治療法を選択しなくなる。国の財政も圧迫されず一石二鳥。こういう行政に笑ってしまうが事実だ。
私のような医者はブラインドで(透視も造影剤も使わずに)外来で手軽にルートブロックができる。そうなると1日に30人くらいちょちょいのちょいとブロックをしてしまう。私はそれだけで45万円を軽く稼ぐことができる。こういうボロ儲けをさせないためにルートブロックは患者と医師にストレスを味あわせる仕様になっている。
私はルートブロックを手先の感覚と勘を頼りに数十秒で行うという曲芸みたいなことができる。ただし本物のルートブロックのように直接神経根に針を刺しはしない。神経根の近傍に注射液を入れる。これは手抜きではない。神経根を狙って針を刺すこともできる。最初はそのようにしていたのだが患者がそれを嫌がるのでやめたのだ。「足がしびれて動かないから怖くなった。もうやめる。」と言いだすからだ。しかも近傍ならば神経を傷つけることもないしほとんど痛くない。そして神経根に直接針を刺さなくても近傍で十分治療効果が得られることもわかった。
患者から「痛みや注射後のしびれ」という不安材料を取り除き、この注射の長所だけを極めたのが私が開発した特殊なルートブロックなのだ。一度でも私のルートブロックを受けてみればわかる。ほとんど痛くない。そして神経痛症状が消える。まるで魔法だ。
実際に私の治療を受けて治癒した患者はどこに行ってもとれなかった痛みが一発で消えて驚愕する。「歳だから治らない」と言われていた神経痛がこんなに簡単に消えて、前にかかった医者に怒りさえ覚えるようだ。それはそうだろう。長年の病気を数十秒で治してしまうのだから。
しかし、これを院長や他の整形外科医に説明しても信じてもらえない。本当は他の医師に私の技術を教えてあげようと思っているのだが彼らのプライドがそれを許さないようだ。医者のプライドにははたはた困る。このことについては前にも述べた。前回勤めていた診療所を辞める際にも「次に来る院長に私の手技を教えたいのだが、そのことで院長のプライドを傷つけないようにうまく取り合ってほしい。それができないなら私はここを辞める。」と自分のクビをかけてまで手技を伝授しようとしたのだが私はあっさりクビにされた。
さて、そういうことを前提知識としてこの修正された書面を解説していくことにしよう。
まず「治療する」という言葉が「抑える」という言葉に修正されている。私は実際にルートブロックを「抑える」ために行っているのではない。「抑える」は薬の効果がなくなるとすぐに痛みがぶり返すことを意味する。私は患者を完治させている。もちろん、慢性の神経痛では完治は無理だが、この注射で完治させた患者は数え切れないほど多い。
だが神経痛患者をブロックで完治させた経験がない医者にとって、私の言葉は「嘘・誇張表現」ととってしまうことがわかる。だから君たちは一生かかっても患者を治せないんだ!と心の中では思っている。
事実、高齢者の神経痛は「歳だから仕方ない」とほとんどの医者は患者にそう伝え治せないことを宣告する。そういった医者は神経痛患者をブロックで治せることを信じていない。信じていない彼らから見れば、私の治療技術は「嘘やまやかし」に映るだろう。彼らは自分のプライドにかけて私の治療を否定したくなるはずだ。
いいのだ。別に私は彼らに自分の治療を認めさせようなどと思っていない。そんな無駄なことに労力は注ぎたくない。ただし私の治療を「抑え」と低く見積もってもらっては困る。患者に理解を得るための個人的な文章にまで口出しされて治療の邪魔をされては困るのだ。「一時の抑えなら治療を受ける価値などないと」拒否する利口な患者が増えたからだ。私もその通りだと思う。治療じゃないものを患者に施すのは単なる金儲けだ。そういう精神で診療しているから「抑え」などという言葉は使わない。そして多くの患者を実際に治癒させている。
また、神経根の炎症による痛みはマッサージや経口薬では根本的に治癒しない。経口薬は消炎鎮痛薬と言われているが、実際に炎症を消すほどのパワーはない。だから肩こり、殿部付近の腰痛などはマッサージや物療では根本的に治らない。そのことを私は患者に伝えたかったわけだ。ちなみに多くの医師はこれらが神経痛によるものだという知識は持っていない。よって神経痛を根本的に治療するにはこの治療法がベストだと書いたつもりだった。だから「(ブロックをしないと)根本的に治癒しない」と書いたのだが「(ブロックが)効果的」と修正された。
違うのだ。効果的というのならマッサージや経口薬も彼らに言わせれば効果的なのだ。普通の整形外科医は神経痛には効果的でないマッサージや経口薬を「効果的だ」と言い張って治療を続けている。だが患者を全力で治療している私にはそれが「効果的でない」とはっきり伝える義務がある。非常に長い期間お金と時間をかけて患者たちはリハビリに通わさせられてる。だがそれらは「抑え」であり根本治療ではない。
もちろん全員が全員そうではない。自然に神経痛が治る人もいる。だが私の治療を受ける患者のほとんどは「他の医者にかかっても治らなかった患者」ばかりなのだ。何もしないですぐに治るような症状ならそもそも私にかかりはしないし、私はそういう患者にならブロック注射を勧めもしない。そんな患者たちにだから物事をはっきり白黒つけて述べているのだ。
何度もいうが私は患者の最大幸福を目的として診療する。目の前の患者がブロックは必要ないと思えば注射を勧めない。ブロックを勧める時点で他の治療法では根本的に治癒しないと判断しているのだ。その事実を書くとこのように編集されてしまう。
事実を書けば他の医者(院長も含めて)のやっていることは治療になってないことを暴露する形になっている。だから根本的にの部分は彼らのプライドを傷つける。
ただそうやって他の医師を公式にけなすのもイヤだから私は個人的にこの書面を患者に渡すつもりだった。ところがうっかり書面を診察室に忘れてしまったわけだ。
外来患者を全力で治療したことのない医者にとって神経痛を治癒させることは「信じがたい話」なのだろう。今回の件でそれがありありとわかった。治せないと信じているものを治癒させると書くと不信に思われるという論法だ。全く参った。次元が違いすぎる。
さて、まだまだここまでの修正は許される。別に問題ない。彼らの心境もわかるから怒りもない。だがどうしても許せない点がある。「注射後のしびれ」の項目に「ほとんどの場合」という言葉を挿入してあるところだ。
「神経根に注射液が直接入ると1時間程度足がしびれて力が入りにくくなります。しかし(ほとんどの場合)すぐに元に戻りますので心配いりません」この部分だ。
ほとんどの場合という言葉がどこにかかるか?で意味が違ってくる。「すぐに」にかかるのなら2~3日しびれが残っている場合もあるという解釈になり、「元に戻る」にかかるのなら永遠にしびれが残ることもあるという意味となる。しかし、この文章を修正しなさいと言ってきた院長は後者のことを考えてのことだ。2~3日して戻るものなら修正しろとは言わない。もしも戻らなかったらここに書いた内容は嘘になり、偽証罪により訴えられると思っているわけだ。
さてあなたは一生に一度もおそらく起こらないだろう事柄について「起こる場合もある」と宣言する人に誠意があると思うだろうか? 「この車に乗ると交通事故でけがをする場合もある」と乗客に毎回宣言するタクシードライバーに誠意を感じるだろうか? 大人であれば車に乗る時点で0.0001%の危険があることを知っている。医療も同じだ。医療行為を受ける時点で0.00001%の危険があることを知っている。100%ノーリスクの医療を期待している人など大人なら皆無だ。明らかな落ち度があって初めて訴えられるのであって、説明文に「~の場合がある」と書かなかったから訴えられるのではない。むしろ「~の場合がある」と逃げ口実を書きまくっている医者の方が明らかに多く訴えられている。
私は以前、このことで医事課長に説教したが、「医療ミスを万一犯した場合でも患者から逃げるな」と言ったことがある。医療ミスは責任をとるものだ。逃げるものではない。もしもの場合は出るところに出て裁きを受けつぐないをするのが当たり前だろう。そうやって命がけで診療するのが医の道だろう。医者生命をかけられないほど腕が未熟なら治療をするんじゃない!と。
ちなみに私のルートブロックは神経根に直接刺すわけではないから神経損傷を起こすことはない。つまり安全なのだ。他の医者たちがレントゲン透視下に行う乱暴なルートブロックとはわけが違う。この文章を修正した院長は恐らく他の医師が行っている一般的な乱暴なルートブロックを想像していたに違いない。確かに一般のルートブロックでは神経を損傷させしびれが残ることがある。
しかし私のルートブロックにおいては、「ほとんどの場合」なんて言葉は入れる必要がない。しびれが残るような治療は医者生命にかけてしないと誓える。多分私が生きている間に患者に施す治療の中で一人もいないだろうというレベルだ。
(※2018年現在、ミスをしていなくても霊障でしびれが出る場合もあることを知る。これは非常に厄介である。一応、この診療日誌は私の医療技術を宣伝する広告ではなく、当時の考えを述べているに過ぎないことを追記しておく。)
万一注射のせいで後遺症が出たという患者がいるのなら、それは甘んじて受け入れそのつぐないをする。その覚悟があるし、しびれを残すなんてミスは私なら百万回やってもあり得ない。
この「私なら…あり得ない」という部分は重要だ。他の医者ならそういう不手際があっても不思議はない。医者の技能の差はピンからキリまで大差がある。技能が未熟なうちは私のような文章の書き方はおすすめできない。 (※2018年現在、「私なら…あり得ない」という表現は誇大だと思う。今まで一度も起こしたことはありません。一例も起こさない努力をしています。くらいにとどめておくべき。)
次に消去された部分は注射後のしびれについての文…多分消去された理由は院長がこの文章の意味を理解していないからだろう。
ブロックをすると麻酔薬の影響で大なり小なり多少しびれが出る。しびれが強いほど神経根の近くに薬が入ったということなのでその治療効果は高くなる。だが患者はそれほど賢くない。治療効果が高く出て症状が軽くなっても、注射後の数時間、しびれが出たことに対する怒りと驚きで医者不信をあらわにするものなのだ。
こういう場合私はとてもがっかりする。「あなたねえ、あれほど痛かった痛みが今は取れてなくなっているでしょう? それなのにその治療効果について喜びも感謝もせず、注射後一時的にしびれが強くなったことに驚いて私に訴えるってどういうつもり?」といいたい。治療が成功しているのに逆恨みされるって「恩をあだで返す」ようないいざまだ。私はこういう患者には治療するモチベーションが激減する。よく効く薬は苦い。しかしその苦さを許せないというのだからまるで赤ん坊だ。
だからそういった赤ん坊の患者に対して「注射後のしびれが強い方が治療がうまくいっている証拠ですよ」という意味の文を書いたのだ。おそらく院長はこの意味をわかっていない。なぜなら私の注射はそもそも私のオリジナルであるから、作用・副作用がどう出るのか全く知らない。知らないから重要な文をごっそり削除してしまうのだ。
次に<リバウンド>の項目で「劇的に」という副詞が削除された。患者にとって「どの程度治るか?」はもっとも重要な知りたいポイントだが、医者にとっては「もっともいいたくないポイント」だということがよくわかる。だから削除される。
もしも「劇的に」よくならなかったらその責任を追及されてしまうというのが彼らの言い分だ。違うのだ。(※2018年現在、医療法では「劇的に」などの言葉を広告に使用してはならないことを述べている。これが影響していると思われる。広告と受け取られる可能性があるということだろう。)
そもそも院長を含めて一般の医師はリバウンド(除痛の注射(麻酔薬)を行った後、麻酔が切れた頃に痛みが強く出る症状)についてその原理を知らない。
私はルートブロックをたった1本注射するだけで神経痛を多数完治させているが、しかしそういう患者の中でも「注射して2日間は注射する前より痛みが強くなりました」と訴える人がいたのだ。その人は3日目から「嘘のように痛みがなくなって今は痛みが全くないんです」という。
最初はこれを「ふ~~ん、そうですか、でも今は痛みが取れてよかったじゃないですか」と流して聞いていたのだが、やがてそういう人たちが少なくないことを知るようになった。
中には「先生の注射のおかげで寝た子が起きたように痛みがぶりかえしたじゃないですか!!」と激怒した人もいた。その人は「首から肩、両上肢が痛くて狂い死にしそう」とまで訴えた人だったが、10年間も抗精神薬と鎮痛薬でごまかしながら生きてきたそうだ。その人に注射をして激怒されたわけだが、2週間痛み続けてその後、痛みがぱたりと止まったのだ。10年間の悩みが注射のおかげで完全に消失したというところまで来た。それはまるで奇蹟だ。
だがこれと同様の奇蹟が何人にも起こることからリバウンドは痛みが治癒する直前に起こるのではないかと考察したわけだ。その内容は上の文書にもあるので省略する。そういう視点で全員の患者に「注射後に多少でも痛みが強くなった時期はありますか?」と聞き取り調査したところ、10人に1人は痛みが強くなることがあることを発見した。そしてリバウンド後には劇的に痛みが引く傾向があることもわかった。症例数はそれほど多くないがこのデータについては別に詳細を書く。リバウンドの防止方法もある。
この発見はもちろん私しか知らないことであり既知の事実ではない。だから他の医者に「劇的」とおおげさに書くなと言われても、それはあなたが知らないだけでしょう?と言いいたくなる。(※2018年現在、リバウンドについては既に研究している。今では一般の医師も知るようになっている。)
私の書いた文章は説明同意書ではない。単なる注意書きだ。「私の腕が素晴らしんだ!」と自慢するためのものではない。患者の不安を取り除き治療に協力してもらうことが一番の目的だ。しかし、他の医師から見ると「患者に自分の腕を自慢しているバカな医者」と見えるのだろう。
私は同僚の医者にどんな視線で見られようと構わないし気にしない。だが私の邪魔をするんじゃない!といつもいいたくなる。全力で治療するためなら同僚に、上司に、問題児と見られようが構わない。(2018年現在、医療の内容を「他の医者よりも治せる」「劇的に」「これまでより」「著しく」などの表現を用いて説明してはいけないことになっていることを知る。もちろん、名医や有名、一流、神の手をもつ、などと言ってもいけない。「名医100選」という本や雑誌も厳密に言えば違法であることを知る。マスコミは法を侵している可能性がある。医療というものがそういう制約があることを知った。)