第十四話 異次元からの母のメッセージ

渋谷からの大渋滞の中、なにがなんだかわからずに長い時間かけてやっと診療所最寄りのJCに降り立ちました。奥様が休診日の時間を調整し、急患患者に伝えていた診察時間になんとか間に合い、ようやく診療所に到着しました。
私はおもむろにトランクにいれてあった段ボール箱を診療所に運びました。この箱は母の遺骨と簡単な仏具を入れてあったものでした。奥様が館山行きのときに私がトランクに入れたままにしていたのを見て「とても気になる。」と言っていたので、きちんと処分しなければと思っていました。だから診療所で中身を整理することにしました。
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するとそこに紙に包まれた何かがありました。何だろう?と思って紙を広げると、なんとそこには壊れてバラバラになった遺骨(遺灰)の一部があったのでした。驚愕しました。私は砕けた遺骨を見て悲しみと怒りが沸き起こります。埋葬業者が骨壺にきちんと入れることをしないで、一部を紙にくるんで渡したということを意味するからです。なんてずさんなことをするんだ!という怒りと、遺骨をこんな風にされた悲しみと、そしてこのことに気づかなかった自分の落ち度に私は嘆きました。つまり、私たちは遺骨をお寺に預けたつもりでいたのですが、実際には分骨された遺骨と伴にこの数週間、ずっと車移動の際に一緒にいたわけです。
奥様は急いでお寺に電話し、残りの遺骨を届けに行く話をつけてくれました。私たちはすぐさまお寺に行き、事情を説明して仏具と紙に包まれた遺骨を渡して帰りました。そしてその日の夜に住職から奥様へ連絡がありました。分骨された骨は本当にお母様の骨かどうかがわからないので同じ骨壺には入れられないということ。そして埋葬許可書を持ってきてほしいということ。の2点でした。そこで私は30年前の記憶をたどることになります。なぜあの紙につつまれた遺骨があるのか・・・
そういえば、火葬場で「骨壺に入りきらないのでこちらの骨をどうされますか? こちらで処分しますか? 持ち帰りますか?」と言われ、おそらく私は持ち帰ると言い、それで紙につつんで渡されたのだったと。だから間違いなく母の遺骨なので骨壺に一緒に入れてもらうことは構わないでしょう。しかし、埋葬許可書はとっくに紛失している。これはどうにかしなければ・・・。母親の埋葬ってどこだったっけ? 30年も前の記憶・・・亡くなったのはどこの病院だったっけ? 母の癌を治すために蓮見ワクチンを打ってくれる医院を探して・・・確か大森駅からそう遠くなかったような・・・でも今はその医院はなくなっている・・・死亡届を出した役所はどこだったっけ・・・確か、大田区役所だった。

と、必死になって記憶をたどり・・・埋葬許可書をもらうには大田区役所にいかなきゃ・・・と私は次の休みに大田区役所に行くことにしました。で、母の亡くなった医院の場所、葬儀場、区役所の場所、を調べているとわかったことが一つだけありました。それは、これらの場所はすべて【環八沿い】にあるということでした!そうです。あのちょうど、私たちがナビの誤作動で迷いこんだ地下トンネルで通った首都高速道路沿いにあるのです。しかもナビがあり得ない道を示したそのルートの真上なのです!驚愕しました。
もちろん偶然なのかもしれません。こじつけなのかもしれません。ですが、ナビが大誤作動したことに意味があるとすれば、亡き母が異次元からなにかを訴えたかったのかもしれません。埋葬許可書を得るために私は戸籍がある区役所にも行き、戸籍を取り寄せました。その戸籍を手にした途端、またもや奥様が霊障に襲われました。私が忘れていた母の辛さを奥様が母とリンクすることで号泣し、再実感したのです。埋葬許可証を発行してくれる区役所をめぐりめぐってやっと埋葬許可証を手にできました。
奥様は本当の供養はこれからだといいます。早くに母が亡くなり、独りでたくさんの負(因果)を背負い込み頑張ってきた私ですが、難病の患者をお救いするためには、この因果を1人で抱えるには重すぎると奥様は重ねていいます。奥様は巫女として見て見ぬふりできない人です。人の痛みがよくわかる奥様だけに、私と出会っていなければ、供養できないままでいたのかと思うといたたまれないと心痛めていました。供養できる縁ができたのだと思うと、ナビの誤作動への怒りはどこかに消えたのでした。