第十二話 小さな怪奇現象ぞくぞく

母親の遺骨をようやくお寺に預けることができて、私も奥様も一安心しました。ただし、この日を境にプチ怪奇現象は普通に起こるようになりました。


私の車のワイパーはオートであり、雨の降る量で自動的にワイパーの速度が調整されます。だから雨の日はオートにしておけばOKなのですが、奥様が運転するときに限ってワイパーが時々狂ったように最高速度で5秒から10秒くらい動きます。雨はパラパラしか降っていないのにです。


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ある交差点に差し掛かった時に狂ったように動く。前の車と接触しそうになったときに狂ったように動く・・・などなど、奥様の感情の起伏でワイパーが暴れ出すのです。困ったものだというよりも、最初は怖かったのですが、慣れてくれると「どうどうどう」と言って奥様がなだめるとワイパーが元に戻ります。笑い話です。


こういった一連の事件を、奥様はなんとなく理解できても自分だけで仏門として謎とくことができません。ですが、幸いにも診療所をきっかけとして二人の高僧の方と知り合うことができました。日蓮宗と真言宗ですが、奥様は真言宗の尼僧を師と仰ぐことに決めました。ですから、奥様は尼僧の先生とは特別につながり、しばしばお寺を訪れ、護摩の火にあたり、アドバイスを受けています。ありがたいはなしです。一方私は無宗教ですが遺骨を納めたお寺が日蓮宗だったので仏事は日蓮宗でお経を唱えようかと思いました。母の葬儀を挙げた時は浄土宗でしたから。いい加減ですいません。


ちなみに真言宗のお寺は東京から特急で1時間30分ほどかかります。奥様いわく、早朝の6時から365日毎日護摩の火を焚き、お唱えしているたいへん有難く貴重なご祈祷寺だそうです。奥様はもともと感受性が強く自律神経も弱く、どちらかといえば夜型なはずだったのですが、診療所の仕事をきちんとこなしているうちに強制的に朝型人間になり、お寺との縁が結ばれてからは、診療所が休みの日に始発列車でお寺に行くという大変ご苦労なことをしています。朝に弱く朝寝坊な奥様なはずなのに、むくっと起きて朝の勤行での祈祷に行きます。



私の診療所には「現代医学では治らない方」ばかりが、他力本願で私たちに必死にすがる思いで全国からやってこられます。そうした方々は何十年も蓄積された塵、垢、穢れ、怨み、欲、悪口などなどの悪い波動を背負っていると言われます。そして私たちに「お願いですから治してください」という念を飛ばします。奥様は念に過敏ですのでその念を毎日毎日背負い込んでしまうわけです。祈祷して念をリセットしていかないと健康を害してしまいます。ですから、気?波動?霊?に過敏になってしまった今となっては、祈祷しに行かないと体調不良に悩むという世話のかかる体になってしまったのです。これは能力者の諸刃の剣です。能力者には決していいことばかりが起こるのではなく、厄災も降り注ぐわけです。


 

さて、話は変わりますが、この頃から私の車のカーナビの調子が悪くなります。テレビ番組が写らなくなったり、FMラジオがいきなり途切れたりします。テレビを見ようとするとチューニング検索をし続け、「デバイスが見つかりません」という表示が出るようになります。「カーナビが故障したぞ。デバイスがないって出てるぞ。今度の日曜日修理に出しに行くから電話しておいて!」と奥様に頼みます。「わかった」と言うのですが実際は電話しません。その理由は、奥様はもしかすると自分のパワーでカーナビが故障しているのかもしれないと思っていたからだそうです。



次の日、カーナビは正常になっていました。この事件以降、カーナビは決まって奥様が祈祷に行こうとした時や、お寺で行事がある時などに奥様が車に近づくと故障することがわかりました。毎回同じ故障です。そしてしばらくすると治ります。奥様が精神的に興奮しているときは1日中治らない時もあります。「またか、デバイスが見つからないって出てるぞ。原因はわかってるよね。」「私かなあ?」と、最近では故障することも普通と受け入れるようになりました。心配いりません。しばらくすると治りますから。


洗面所の蛍光灯もおかしくなりました。蛍光灯は古くなると点いたり消えたりチカチカしますが、そのチカチカが彼女に胸騒ぎが起こっている時と同時に起こるようになります。そして普段はチカチカしない状態に戻ります。奥様がファミレスのトイレに入った時、洗面台の一つの電球が切れていて、そしてトイレを出る時に電球がパッとつきます。まるでお化け屋敷です。奥様はたいそう驚いて私に報告します。「はいはい、それもいつものやつだね。」と私も冷静に対処するしかありません。


超自然現象なのか?偶然なのか?それは誰にもわかりませんが、偶然にしてはそれがこれほど頻繁に起こる確率は自然現象の確率を超えています。パラノーマル・アクティビティです。