第八話 降霊と住職の説法

3月の初旬。もう10年も別居中の家族に完全に見切りをつけ、まずは都内の診療所からほど近いという理由で日蓮宗の住職のお寺に遺骨を納めに、奥様からのススメで一緒に行くことになりました。30年もそのままで放置したままだったことが判明したときはとても驚いていた奥様だったので、「とにかく早く早くどうにかしないと」と一旦お寺にお骨をお渡しすることを早めたのです。奥様らしい行動です。


お寺の人に無事お骨を渡し、再び車に乗ろうとしたその直後、またもや奥様が車に触れただけですべてのパワーウィンドが半開きまで開く誤作動発生。奥様に霊的な現象が起きるときに必ず起こる怪奇現象、パラノーマル・アクティビティです。一瞬、びっくりします。が、そうした現象に遭遇したときは、うわっ、奥様からなんか出ていると思うしかありません。こんなことは当たり前。普通普通と自分に言い聞かせます。


その後、他の用事を済ませてすぐにお寺に戻り、お寺のお座敷に上がらせていただき、そこで住職にいろいろと話しをしました。護摩の火を見てトランス状態に入ることや、真言宗の僧侶との出会いなど。


すると住職は「いろいろと科学では割り切れないことがあるんですよ。この世界には・・・」とにこにこしてお話され、My奥様のような能力がある人をシャーマン、巫女などと呼ぶことを話してくれました。まさに、ここでも巫女という代名詞が出てきたことに驚かされました。


かれこれ10分くらい住職とお話していると、My奥様は少しずつ頭が前後に揺れ始めました。またあのときのようなトランスに入る前のようです。後で聞くと話している途中、首の後ろあたりにドン!という衝撃とともに何かが入ってきたそうです。


 

体の揺れが大きくなった後、奥様は別人のように言葉にならないうめき声を上げ始めました。上人は全く動じることもなく「お前は誰だ?」と訊ねます。でも奥様は返事のような返事でもないうめき声で答えるだけです。「誰なんだ?」またもや言葉にならないうめき声です。


しかし、奥様の動きが大きくなって暴れ始めたため上人は念仏を唱えはじめました。そして額を押し背中を叩き、気合をえいっ!と入れると、奥様はゲホゲホと咳をした後にトランス状態からもとに戻りました。奥様が何かを降ろしたと感じた最初の出来事でした。テレビで同様なシーンを見たことがありますが、まさか奥様に起こるとは・・・



住職は「何が憑いているのかわからない。名前を聞いてもなかなか言わない。降ろす側の修練次第で憑くものが変わるときがあります」と説明してくれました。 説明の後、再び奥様が揺れ始めましたが、上人はそれを静かに見た後「本堂へ行きましょう。お母様にお経をあげましょう。彼女には後から来てもらいましょう。」と言います。このまま奥様を放置していて大丈夫かなあという不安はよぎりましたが、住職が彼女をそのままにするように言うものですから、そのままにして本堂へ行きます。


本堂でお経をあげること10分、なんやら遠くから歌を歌っているような音階のある叫び声が聞こえてきました。奥様です。上人の妻に連れられてトランス状態(憑かれた状態)のまま本堂に入ってきました。「やっぱり放置すべきじゃなかった・・・」と後悔しましたが、まあ、仕方がありません。連れてこられた奥様に向かって住職は「お前は誰だ?」と訊ねます。すると奥様は太い声色でわけのわからない言葉を発します。


住職はほどなくお経を唱え始めMy奥様と私の頭の周囲に木剣数珠を鳴らして邪気を払います。それでも奥様は相変わらず円を描いて揺れているのですが・・・少しするとスーッと揺れが収まりました。やれやれ・・・。さすがに奥様も疲れた様子。その日は2人分の数珠もいただいて挨拶して帰ることとしました。