腰椎XPは立位でなければ意味がない

はじめに

腰椎の診察の一手段として単純XPを撮影することは全国どこでも一般的であろう。多くは正面、側面、斜位の合計4方向を臥位で撮影する。しかし、もっとも診断に重要な意味を持つ側臥位は、実は診断価値の低いものであるということをほとんどの整形外科医が認識できていない。ここでは側臥位での撮影がいかに正確性に欠けるものかということを筆者のXPを用いて証明する。

信頼度が低い側臥位撮影

以下の2枚の腰椎正面XPを見てほしい。Aの写真とBの写真は同一人物である。にもかかわらずAの写真では腰椎に側彎がある。その理由を考えてほしい。わざと変な姿勢をとったとしてもこのようにはならない。
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答えがわかっただろうか? それは撮影するときの体位の違いにある。Bは仰向け(仰臥位)で撮影台の上で撮ったものでごく普通の腰椎正面写真。Aは(横向き)側臥位になった状態でX線照射を水平方向に変えて正面像を撮影したものだ。左の写真では右にカーブしているが、それは左側臥位で撮影したためである。
なぜこのような写真をわざわざ撮影したかというと、腰椎の側面写真を撮影するとき、患者は側臥位で撮影するのが一般的だ。しかし、側臥位で撮影するとこれほど腰椎が曲がった状態を撮影し、かつ骨盤も強く傾斜するということを知ってもらいたかったからだ。私たちはこんなに曲がりくねった腰椎での側面写真を撮っている。そのような診断価値の低い写真を元に患者に「椎間板が狭いですねえ」「前弯がつきすぎてますね」「L5がずれてますね」などと解説しているという状態にあることを知ってほしい。そもそもこんな曲がった腰椎で診断をしてはいけない。それは医学的ではない。
これまで整形外科医はこんなでたらめなXPで患者に病気を解説していたことに恥ずかしさを持ってほしい。もちろん、腰椎の側面像は立位側面で撮影している施設もある。一刻も早く全国どこの施設でも「腰椎は立位で撮影すること」を追従してほしいと願う。ましてや、立位で撮影していないXPですべりの評価や椎間不安定を診断し、その結果を元に手術をすることは推奨しない。側臥位撮影で腰椎を評価することに医師は良心の呵責を持たなければならない。

側臥位側面像のあいまいさ

次の図はごく一般的な腰椎側面像をペインティングしたものだ。左右ともに同じ写真である。もちろん一般的=側臥位で撮影した側面像という意味である。
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紫の腰椎はペインティングのラインがだぶっておらず、重なり具合がよい(ほぼ水平に撮影されている)。しかし緑、黄、赤の腰椎は椎体の水平ラインが2重になってだぶって見える。このだぶりは腰椎が斜めになっているせいでこう写る。先ほど述べたように、側臥位で撮影すれば腰椎は重力でカーブする。そのカーブした腰椎を上から撮影するからこのようにラインがだぶる。だぶったラインの幅が広い椎体(例えばL4)は斜めに撮れている証拠である。幅の広さと側弯の角度はほぼ比例する。

側臥位側面像の臨床的意味のなさ

腰椎の側面写真を側臥位で撮影することはとても乱暴でデリカシーがないことである。そして今も尚、多くの施設でデリカシーのない撮影をしているわけだが、今後は立位で撮影することを推奨する。立位の場合、遮蔽板の振動器(ブッキー)を壁にとりつけなければならないが、そのように医療機器は進歩しなければならない。ではまず次の腰椎側面写真を読んでみよう。
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この写真で「ヘルニアがありそう」だとか「アラインメントが悪い」だとか評価することは難しい。なぜならL3、L4、L5の椎体はそれぞれ斜めに映っているので椎間板に対してX線が水平に抜けてないからだ。L3/4、L4/5、L5/S1、の椎間板辺縁の椎体のラインが全て2重線になっているから椎間距離を計測することが難しい。
前述したが、側臥位で撮影すると腰椎は側彎症のように(正面から見ると)曲がっている。そんな状態でアラインメントの評価をしないほうがよい。よって「この写真では前彎が失われていますねえ」などと患者に説明することは真実ではない。この写真は側臥位撮影だが、同じ人を立位や仰臥位で腰椎側面を撮影すれば前彎が回復することを知っているだろうか? 以下の写真を見ればそれが理解できる。

立位側面像に診断価値がある

ではこのことをふまえ次の3枚の写真を見よう。
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これは3枚とも私の腰椎側面像であるが撮影時のポジションが違う。左は側臥位で撮影、真ん中は立位で撮影。そして右は仰向けで撮影している。まず注目してほしいのはLateralでのL5/Sの椎間板の間隔だ。左ではL5/Sの間隔が広くヘルニアだとはとても言えないが、Standing(立位)になるとかなり椎間板の間隔がせばまる。
もしヘルニアがあるとすればStandingならば判明するがLateral viewでは見逃されてしまうことがある。また、脊椎の前彎もStandingではきれいに存在している。Lateralでは直線的だ。なぜこんなに直線的なのか? その一因は骨盤にある。Lateralで撮影すると骨盤が前屈するため、腰椎全体が後弯となりやすいからだ。このように側臥位での側面撮影はAlignmentが悪くてもそれに診断価値が低いことがわかる。この写真を患者に説明するときにAlignmentの話をするのはこの事実を知っている者から見れば笑い話になる。どうかあなたが整形外科医であるならば、側臥位XPで腰椎の精密な診断をしないでほしい。

側臥位撮影をやむを得ず使用するしかない場合

今後、腰椎は必ず立位で撮影するとして、過去のXPを調査する場合、側臥位で撮影されてしまっている分にはどうしようもないのでそのXPを用いて測定するしかない。その場合、椎間板は必ず斜めに撮影されていて「どこを計測すれば椎間板の高さとしてよいのか?」がわからなくなる。そんな時は椎間板の中心線をプロットするようにすれば誤差が少なくて済む。中心線の測定方法は「脊椎単純X線計測法」でその詳細を述べているので参考にしてほしい。また、腰椎の機能撮影の場合、前屈・背屈の際、側弯はある程度矯正されてまっすぐになるので誤差は少なくなることを付け加えておく。

単純XP写真を動的に診る

もう一度3枚の側面写真を見てみよう
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このようないろいろなポジションでXPを比べることを普通はやらないだろうが、3枚を並べるとその診断価値はMRIやCTを超えた威力を発揮する。MRIやCTはとにかく機能的撮影ができないからだ。Standing位では腰椎に重力をかけることで扁平化した椎間板の存在(L5/S1)がわかる他、左右バランスの不安定な部分もわかる。Supine位の椎体の一つ一つを見ると、辺縁のラインがほとんどだぶっていない。これは各椎体がほぼ水平にそろっていることを意味する。つまり、仰向けに寝ると、私たちの椎体は左右バランスが整い、もっとも側彎が矯正された状態になることを示している。よってSupine位の像は腰椎に重力がかかっていない時のもっともニュートラルに近い像として他の像と比べるときの初期値としての臨床的意味をもつ。
Standing位の像では椎体の辺縁がSupine位よりもだぶって映っていることがわかるが、これはすなわち立位になると椎体が左右どちらかに傾くことを意味する。そして傾くのは椎間板の左右の力学的構造バランスが壊れている証拠で、これだけでもどこにどの程度不安定な椎間が存在するのかを発見することができる。ここではL3/4とL4/5が不安定であることがわかる。次に視点を椎間孔に向けてみよう。

椎間孔の大きさが最重要

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このイラストは先ほどの3種の腰椎側面像の椎間孔を塗りつぶしピックアップしたものだ。だから左からLateral Standing Supine の体位で撮影したものだ。椎間孔は上からL2 L3 L4 L5 となっている。側面のレントゲンをこのような(椎間孔を観察する)視点で見る癖はついていないと思うが、側面像ではこれほどよく椎間孔が見えることを知ろう。正確さには若干欠けているがおおざぱな背骨の不安定性を知るためには十二分だ。
これは私の腰椎の写真であるが、L3 L4 L5の椎間孔においてStanding(真ん中)の場合、その面積がかなり狭くなることがわかる。特にL5では面積が明らかに半分以下になっている。神経根の損傷はこのように面積が狭くなる際に動的に起こる。立つという状態だけでこれほど面積が減るのであれば、曲げ伸ばし、転倒などでは一時的にもっともっと面積が狭くなるであろうとことを想像してほしい。これが高齢者が立位姿勢がきちんとできない理由である。カイロプラクターはこういった研究をしなければならない。
さらにL4の真ん中の椎間孔に注目してほしい。まるでハイヒールのような形をしていることがわかるだろう。これは椎間孔を形成する上関節突起が前方に突出していることを意味する。この突出が神経根を挟み、損傷させることが推測できる。脊椎を手術する者はこれらの動的な椎間孔不安定性が症状の原因になっているという思考を持つ必要がある。
PLIFなどを行うことはこの不安定解消の唯一の方法といえる。この不安定性を理解しておかなければ、後方徐圧をしたところで症状が軽快しない場合もある。椎間孔が狭い状況で固定してしまう場合である。脊椎の手術が全国的に成功率が低いのは、こういうことに留意しないのも一因である。
この椎間孔を見れば一目瞭然だが、Lateralではどの椎間孔も大きく開いているように見える。が、立位になるとL3 L4 L5の椎間孔がせばまる。人間は24時間側臥位でいるわけではあるまい。昼間はほとんど立位でいる。ならばLateralの写真で椎間孔を評価することが愚であることかわかるだろう。

仰臥位で撮影するMRIでは椎間孔の評価が甘くなる

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一番右のイラストは仰臥位での椎間孔を示しているわけだが、立位(真ん中)よりも孔が大きい。さて、MRIを撮影するときは誰もが仰臥位であり立位でMRIを撮る者はいない。ここまで言うと何が言いたいかわかると思う。仰臥位で撮影するMRIに椎間孔を評価する価値が低いということである。
あなたが医者であり科学者であるならばこの事実を真摯に受け止めたほうがいい。仰臥位で撮影すると立位の時よりも椎間孔が大きく開く。だから立位で神経痛の症状が出る人は、仰臥位で撮影した状態のMRIでは「異常なし」と評価される。
MRIはまるで全能の検査のように思われているが、仰臥位で撮影したものに椎間孔の診断価値が低いということを認識できている整形外科医は皆無に等しい。つまり、MRIで椎間孔が十分に開いていても、異常なしと単純には言えないということ。本当に異常を見つけたいのなら、立位でMRIを行わなければならない。これは頸椎にも胸椎にも言えることである。
特に世の中には立位でのみ神経痛が出る患者が多い。そういう患者を仰臥位で撮影したMRIをもとに「なんともないですね。異常ありません。」と宣言してはいけない。それはでたらめなことであり真実から離れているが、このでたらめは名のある教授といえども犯してしまっている。

MRIで異常のない神経痛患者の多いこと!

坐骨神経痛が確かに存在するにもかかわらず、MRIで全く異常の認められない患者は私の経験上、2割以上存在する。おそらく、その理由は立位でMRIを撮影出来ていないというのが理由の一つであろう。逆に述べる。MRIに異常がないからと言って、坐骨神経痛が確かに存在する患者に向かって「異常はありません」「精神的なものでしょう」と患者を精神病扱いするのは医師として恥ずかしいという意識を持ってもらえたらありがたい。「ありがたい」とは「あることが難しい」からありがたいという。

L5椎間孔は読むのが難しい

StandLumbar06 腰椎立位側面像 L5/S1付近
この図はL5/S1付近の腰椎側面像である。このXPを見て椎間孔の形を読むことができるだろうか?実はL5の椎間孔には仙腸関節が重なるため、椎間孔を読むことが難しい。このXPで仙椎の上関節突起がどれか見分けられるだろうか?答えは次の図。
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この図で黄色で示した部分が仙腸関節の重なりである。上関節突起は赤で示した部分である。赤で示した部分も、骨盤に歪みがあると2重に映り、さらに判断が難しくなる。椎間孔の形を読むためにはこの仙腸関節の影を差し引いて考える必要がある。だから読影が難しい。間違えないように! というよりもほとんどの整形外科医がここまで考えて読影していない。よって読影技術を高めるためには、こういったことを講習していかなければならない。

脊椎不安定症という新しい概念

ここでもう一度椎間孔に着目し、椎間板を読んでみよう。 StandLumbar04
Lateral位 Standing位 Supine位とX線を撮り比べることでこれほどAlignmentやForamenが動的に変化することを示したが、一方でL2(一番上)の椎間孔はその大きさがほとんど変わっていないことに注目しなければならない。これがなぜなのかすぐにピンと来てほしい。それはL2/3椎間板の内圧や弾性力(12層の輪状構造)が保たれているからであろう。
私は患者に脊椎の不安定性を説明するときに、椎間板を自転車のタイヤに例える。空気が半分抜けたタイヤと空気がパンパンに入っているタイヤとの違いだ。空気が抜けていると車輪が左右に激しく揺れる。しかも道路の段差の衝撃をまともに受けてお尻が痛くなる。脊椎もまさにそれと同じだ。
椎間板の内部の輪状構造が崩壊していると、見た目の大きさはあまり変化がないように見えても、動的な外力が加わると椎間板はたやすく形を変える。それはまるで空気の抜けたタイヤのように。そのせいで臥位、立位、屈曲、伸展と体位を変えると椎体が上下・前後左右に不安定に動く。その動きを阻止しようとする椎間関節も壊れていく。椎間孔はたやすくへしゃがり神経根を傷つける。これが私の脊椎不安定症の概念である。
椎間板の内圧、弾力性が低下することはすべての脊椎関連病の出発地点であり、椎間板が崩壊することがどれほど重大なことかということをかみしめなければならない。このような椎間板の評価は、腰椎の未来の変形を予測できるので「腰椎検診」などに非常に有用となる。立位と臥位で同じ方向の写真を撮影することはこれほど意味がある。が、現在、全く実用化されてはいない。今後私がこの研究をさらに進める。
評価の際にもっとも重要なのはAlignmentでも椎間板の狭小化でもない。椎間孔の変形だ。L2椎間孔ではその形、大きさともにほとんど変化がないことから、L2/3の椎間板は内圧・弾力性ともに健常な状態に保たれていると判断できる。しかしそれ以外のL3/4 L4/5 L5/S1の椎間板はパンク状態と判断できる。パンク状態は椎間板の高さからだけでは判断できない。写真の椎間孔での比較が必要になる。
本来椎間板はこのような動的な評価が不可欠であり、静的な側面像だけで、または静的なMRI像だけで評価することはデタラメである(診断価値がないとは言わない)。ただし、注意しておくが、椎間孔を読む際は、右の孔と左の孔を分離して読む技術も必要となる(ここでは述べない)。また、Supine位(仰臥位)のL5椎間孔を見るとLateral位(側臥位)の椎間孔よりもせまいことがわかる。これは必ずしも仰臥位で寝ていることが坐骨神経痛や腰痛によいわけではないということを意味する。この状態での長期臥床ではL5の坐骨神経痛や腰痛を悪化させることがあると考えるべきだろう。
さらに付け加えるとすると、ベッドや布団、マットレスの弾力性や沈み具合で椎間孔が狭くなったり広くなったりするわけで、寝具を適切なものにすると腰痛から解放される可能性がある。寝具を適切なものにするだけで10年来の腰痛を完治させることもできるということを頭の端に入れておいていただきたい。一般的に固く平らな布団に寝ると腰によいという俗説があるが、これは人によりけりである(「寝具と腰椎の関連」参)。

重要な情報が満載の腰椎斜位像の正しい読み方

腰椎のXPを読めない整形外科医は斜位のXPを最初から撮らない場合が多い。確かに斜位の写真は読むのが難しい。また、熟練した放射線技師に撮影を依頼しても、斜位の角度はまちまちで左右を正しく比較することさえできない。そういう状況であるから斜位の写真はそもそも読むことが困難であることは否めない。ただ、読解が困難だからと言って情報満載の斜位像を無視することは避けたい。以下に19歳女性の腰椎斜位像(L4)を示す。
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まず基本的なことだが脊椎は椎体(前方要素)と椎弓・椎弓根・関節突起・横突起・棘突起(後方要素)がある。この図で色をつけてあるのが後方要素であるが、斜位のXPという平面画像でさえ、目を凝らして見ればここまで立体的に見ることができるということを知ってほしい。平面のXP写真を立体視する視力を鍛えなければ斜位のXPを読むことができないからだ。
赤で示しているのはいわゆる”犬の首輪”と呼ばれる分離症のラインと椎間関節の隙間である。斜位のXPでは、ほとんどの整形外科医がこの赤いラインしか読まない。しかしよく見るといわゆる「スコッチテリアの犬」は双頭の犬であり反対側の横突起までしっかり見えてくる。このように立体視したところで一見メリットなどないかのようだがそうではない。この基本的な位置関係を把握していると実はみえてくるものがある。

椎間孔の新しい読み方・新しい斜位像

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このXPは25度の斜位で撮影したものだ。なぜ25度かというと椎間孔が20度から30度の傾斜をもって脊柱管から出ているからだ。椎間孔の大きさを読むためにはこの角度の斜位で撮影する必要がある。椎間孔は赤で示した部分であるが、この部分が狭窄していれば神経根が圧迫を受けるのは明らかである。そして手術を行う際も椎間孔を開放する必要があるのかどうかが一目瞭然となる。
ここが激しく狭窄しているのに椎弓切除などの後方徐圧だけの手術をしても完治しない。それはあまりに当然のことであるが、これまで椎間孔をしっかり見るということを行ってきた外科医がいないことが脊椎外科手術の成績を下げている原因の一因と思われる。このXPのように25度斜位で撮影すれば椎間孔は描出されるが、こういった撮影法があみだされていないことがすなわち椎間孔をしっかり見ている外科医がいないことを意味する。
さて、椎間孔を読む時に重要なことは「椎間孔は左右二つ見える」ということだ。それだけでなく、椎間関節も椎弓も全て二つずつ見える。このときに各パーツが左右の何であるかを見抜く目が必要になる。その視力を鍛えるために、双頭のスコッチテリアを読めるようにしておく必要がある。このXPでは向かって左の孔が左の椎間孔であり右の孔が右の椎間孔になっている。赤で塗った部分は右の椎間孔である。右の椎間孔は軸位で見えているが、左の椎間孔は斜め50度で写っているため右の椎間孔より広く見える。よって診断価値は低い。ここで神経根を圧迫する主な要因は上関節突起と椎体の棘である。上関節突起が突出していればこれを外科的に切除しなければならないことがわかる。

椎間孔撮影の体位

今までのような関節裂隙を見るための腰椎斜位撮影では椎間孔は見えない。撮影は通常立位で行うべきである。側臥位で撮影した腰の写真に診断価値はあまりないことはこれまでに述べた。右の椎間孔を撮影したい場合はフィルムに対し右側臥位になりそこからフィルム側にお腹を25度倒して撮影する。左の椎間孔の場合はその逆でフィルムに対して左側臥位になりそこからフィルム側にお腹を25度倒して撮影する。
うまく撮れているかどうかの確認は下関節突起の重なり具合を見るとよい。左右の下関節突起が重ならず離れず並んだ状態で撮影されていれば成功。間が離れていたり重なっていたりすれば撮影しなおさなければならない。このようにして撮影された椎間孔は極めて診断価値が高く今までの脊柱管狭窄症の概念を変えてしまう。高齢者の狭窄症はどこの狭窄が最も症状に寄与しているのか?を医者が科学者ならば目をそらさずに追求する姿勢をしめすべきであろう。これまで椎間孔の狭窄はMRIを用いても描出が困難であることは述べた。なにせMRIは仰臥位で撮影するわけだから椎間孔の狭さがただしく描出されない。
しかし、椎間孔を診ることに真正面から立ち向かえば、高齢者の腰椎関連病のほとんどが実は椎間孔で起こっているという事実に直面するに違いない。このような椎間孔撮影をしていると、どこの狭窄が病気に最も関連しているか?をまじめに考える機会が増えてくるはずだ。

まとめ

おそらく、ここに書かれた撮影法と読影法は新しく、これを読んだ者は面喰ったと思う。何も難しいことではなく私は真実を述べただけだ。そして今までの撮影法の意味のなさも暴露した。正しい読み方をすれば、多くの異常所見を読めるようになるだろうが、私は整形外科医たちにそういう読影が出来るようになることを期待していない。恐らく大変面倒くさいので誰もやろうとしないだろう。そして真実から目をそむけ、診断価値が低い撮影法、読影法で今後もXPの評価を続けるのであろう。私の考え方が標準になることも期待していない。だが、もし、脊椎外科に命を懸けて一生を捧げるという心構えの医師ならば、私の意見に耳を傾けてほしいと思っている。

腰椎は立位で2

はじめに

腰椎だけでなく脊椎のXPすべて(頚椎・胸椎・腰椎)で側臥位での撮影はあまりにいい加減で診断価値が乏しいことは「腰椎は立位で」で述べた。椎間板の厚みや椎体の形、アライメントを計測しようとしても、側臥位では自然な側弯が出来てしまい、計測がほぼ不可能であることを述べた。脊椎のXPでは一刻も早く世界中の整形外科医が側臥位で撮影する愚を改めなければならないと強調する。ここでは実際に計測し、その誤差が激しいことを実践する。

20歳男性、腰椎XP側面像

左が側臥位、右が立位 立位2 クリックで拡大
緑の矢印は左右の腸骨。左では間隔が大きく開き、骨盤が斜めに撮影されてしまっていることがわかる。次にL5の形態を見る。左では台形、右は左よりも長方形に近く見える。左図のどこを計測すれば正しい椎体・椎間板の角度や縦横比などを測定できるのか?答えられないだろう。斜めに撮影されると、このように手前の陰影と奥の陰影が重なり、計測する点をどこにとっていいのか迷ってしまう。計測者によって誤差が10°以上にもなることがある。この事実を誠意を持って受け入れるなら「過去の腰椎の計測による研究」の多くは側臥位撮影なので信頼性が低い。
ちなみにここでは股関節の臼蓋の前方傾斜角とS1の上端のなす角度を求める図である。言わば縦方向のSharp角を計測している(縦方向の臼蓋角は先天性股関節脱臼の新たなる指標として提唱する。その理由は「脊柱側弯症と脊柱縦弯症の生体力学」で述べる)。何のためにこの角度を計測しているか?はここでは省略する。
が、問題なのは左のように骨盤が傾くと、左の写真では誤差が出るということ。縦Sharp角は左で65.3°右は61.2°と4.1°の差がある。撮影の仕方ではこれが10度以上になる。これでは診断価値が低くなる。 診断価値が低くなる理由は、
  • 1、体の中心から離れた被写体ほど誤差が激しい。例えば、椎体の誤差よりも股関節の誤差のほうが激しい(股関節は椎体よりも体の外側にあるため)。
  • 2、計測者は可能な限り中点を計測して体の中心にあるラインを推測して測定しなければならないが、その技術(3Dが2Dになっていることを考慮したり、X線が放射状に発せられている分を考慮して計測する技術)がないためにどちらか左右片方だけを計測してしまう誤計測をしてしまう。

  誤計測は10°から最大で20°くらいになる。もしも、腰椎の側臥位撮影で計測するのならば、高等な補正技術を要する。補正技術については「脊椎単純X線計測法」を参。補正技術を持たずに計測することは誤計測を作成しているようなものであり、真実から離れた研究となる。一刻も早く補正技術を持つか、側臥位での撮影を止めなければならない。
ちなみに、立位と側臥位では脊椎にかかる重力の有無のために、アライメントは結構変化することを覚えておいた方がいい。ここではL1とS1のなす角度を計測しているが、左では31.6°、右では43.3°と11.7°も変化する。立位で計測しなければ本当のアライメント異常を診断することはできない。腰椎に限らず、脊椎は立位で! これは整形外科医の常識化とならなければならない。

腰椎XPは立位でなければ意味がない」への6件のフィードバック

  1. はじめまして、奈良医大の放射線技師の安藤と申します。
    先生のネットで「脊椎は立位で! これは整形外科医の常識化とならなければならない。」と嬉しい文面をみて感激しています。私は10年くらい前から腰椎はなぜ臥位撮影だけで立位撮影の有用性が認めれないかと思っていました。奈良医大も脊椎外科の先生に立位の有用性について理解してもおうと思って話をしましたが、今までのデータが臥位なのでとかで逃げられました。しかし私は放射線技師関係の勉強会で立位撮影の有用性を訴え続けていました。最近、私の影響で学会が立位撮影のシンポを開くことができました。先生のお力もかして欲しいと思っていますので宜しくお願いします。

  2. 1.立位の場合、遮蔽板の振動器(ブッキー)を壁にとりつけなければならない
    2.レントゲン線の発生源が点であるが、帯状の長いものであれば、椎体縁はきれいにとれるはずです。
    3.椎体を側面から撮る時には、直線状レントゲン線を利用して、側弯する腰椎の辺縁をきれいに表出できますが、錘直になると、辺縁の表出はできなくなります。

    • 貴重なご意見ありがとうございます

      我々は写真家ではなく、真実を調べなければならないのです。椎体をきれいに見たところでそれが何の意味があるのかを考えなければなりません。全部の椎体を一度に並べて見たいという医者がいるのでしょうか? 我々はきれいな椎体を見たいわけではありません。
       
      もっとも重要なのはアライメントを調べる事です。ブッキーを必要と感じたことは今まで一度もありません。さらに、点状線源がいやなら、見たい椎間だけに中心点をあわせて撮影すればいいことであり、常に、臨床上、本当に必要な椎間は常に1箇所のみです。それでも精密にアライメントを調べたいのなら、撮影の中心点を3箇所くらいに分けて数枚撮影すればよいだけの事です。

       あなたのご意見は論点がずれています。臨床を読み、病気を読むのに、きれいな椎体は必要ありません。そんな形だけの嘘のきれいな(不自然な)椎体を見て喜ぶ医者がいるのでしょうか? 何を読みたいのか?  を考えるのがもっとも必要な事であると私は思います。もっとも重要な事は、重力を垂直にかけたときに、脊椎に何が起こるのか?を見る事ではないでしょうか? 側臥位では、脊椎に重力をかけた際に、椎間孔がどう変化するのかが全く読めないということを述べたつもりですが・・・

      あなたの意見は参考になりました。病状を読むことよりも、嘘でもいいから美しく撮影することの方に神経が集中するということが理解できました。私は臨床家であり、病気の原因を探ることに全神経を集中させますので、側臥位撮影の腰椎XPは要りません。

  3. 大変共感しました。
    以前から放射線部に立位XPをデフォルトとするように申し入れてますが、変わりません。立位XPのエビデンスが必要と考えています。
    組織が硬直しており、面倒なやりとりにあきらめ気味でしたが、教育的な観点からも臨床的に意義のある撮影を認めてもらおうと頑張ります。

    • ぜひがんばってください。応援しています。

      ただ、整形外科医たちが単純XPを正しく読もうとする姿勢がないので結局立位でも臥位でも大差がないというのが真実だと思います。XPから得られる情報はほとんどないと思っている教授もおられます。MRIに頼りすぎているのが原因だと思います。

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