難治性副鼻腔炎の革新的治療法

はじめに

副鼻腔炎は頭重感や頭痛を起こす耐え難い病気です。生きていることが嫌になるほどの激痛が続く場合もあります。耐え難い症状の場合、多くは手術を選択しますが術後も全く症状が軽快しない例が少なくありません。こうした手術無効の難治性の副鼻腔炎の患者に、私は頸部交感神経節ブロックを行い、厄介な頭重感と頭痛を改善させた症例を経験しました。この治療経過から考えると、頭痛の原因は副鼻腔炎ではなく、三叉神経痛であったと推定されます。つまり、三叉神経痛の痛みに、全く効果のない副鼻腔の手術を行ったと思われ、そのため手術が成功しなかったと思われました。世界にはこうした「無駄に手術を受けて成功しない誤診症例」が多々あると思われるのでここに報告させていただきました。そして、「慢性副鼻腔炎」と診断された場合に交感神経節ブロックが革新的かつ非常に効果的な治療法となる可能性があることを解説します。

誤診看破の背景

私は日常生活に支障を来す様々な難治性の症状を専門に治療しています。そして結果的に現医療では「治すことができない」とされている様々な疾患を治し、治したことによりそれらの病気の診断名が間違っていたことを看破してきました。例えば、足の裏が痛いと訴える患者に、足の裏に注射しても無効、腰にブロックをしても無効、胸椎にブロックしたら完治した…というような場合、足の痛みの原因は胸髄のレベルの神経障害と判明します。しかし、現医学水準では胸髄レベルに病因を見出す技術も理論もありませんので確定することは不可能です。このように治して原因箇所を推定していく診断方法は確定診断とはなりません。ただただ、治す行為によって前任医師の診断が的外れであったことを看破できるという真実があります。

症例 67歳 女性

20年前にC型肝炎に罹患した際にインターフェロンの注射を行い、それ以来両耳の難聴と耳鳴り、頭重感が出現するようになる。頭重感の原因は副鼻腔炎であると診断されていたが放置。しかし2年前から頭重感が激痛に変わる。これに耐え兼ねK病院で1年前に内視鏡による手術を受ける。しかし、症状は全く改善せず、執刀医には「これ以上何もすることはありません」と言われる。
現症:右眼から右額にかけて痛み(激痛)が出現

治療経過

7か月前に難聴の治療目的で上頚神経節(頚部交感神経節)ブロックを開始する。週に1回、1%キシロカインを1~2cc上頚神経節周囲に注射。しかし、頭重感と頭痛はあまり軽快していないと本人は感じていた。3か月前より週1回のブロックをたまにさぼるようになるが、丁度その時期と一致して頭痛と頭重感が強くなる。上記K病院を診察するが「もうすることはない」と言われる。私は彼女の痛みの原因は「副鼻腔炎ではなく三叉神経痛である」と言って聞かせるが全く信用しなかった。副鼻腔炎の診断で手術を受けているのでその診断が間違っていると思うことができないという心理が働いていたと思われる。彼女は右眼周囲の痛みに非常に困っていると私に訴えたので、私は「今行っている上頚神経節ブロックは三叉神経痛の治療になっていますので、まずは、痛みがいつ強くなるか?朝昼晩で10段階評価で毎日日記をつけてくださいませんか?」と、疼痛の記録をするように指示する。さらに「できれば週に2回、私のブロックを受けてみてはいかがでしょうか?」と進言する。
翌週(ブロックをした次の診察日)に「先生、すごいことがわかりました。」と大はしゃぎで彼女は入室してきた。「注射をしてもらった次の日は痛みがほとんど出ないことがわかりました。そして何日か経つと徐々に痛みが強くなるんです。私、わかりました。先生の注射で痛みがなくなることを…私、あまりに嬉しくて涙が止まりませんでした」と言うのである。
彼女は副鼻腔炎の痛みが注射で軽快することを自覚し、初めて私のつけた診断名「三叉神経痛」を受け入れ、「副鼻腔炎による痛み」が誤診であったことをわかってくれた(手術をしてしまった後ではあるが・・・)。その後3週間連続で週に2回の上頚神経節ブロックを行う。すると痛みが10段階評価で1~2の痛みが全体の7分の1の時間帯のみ出現。残りの7分の6の時間帯は痛みが0の状態が続くようになる。数値で表せば痛みが98%軽快し、残り2%になったことになる。劇的な改善である。全て軽快するかどうかは未知数だが、全治目指して現在も継続治療中。

三叉神経痛を副鼻腔炎と誤診することは避けられない

痛みの分野においては、現医学水準では誤診が多いことは免れません。その理由は神経因性の痛みは、「神経が周囲の感覚信号を利用して痛みを作り上げる」からです。神経細胞が損傷するとその細胞は痛み信号を作れないので他の感覚信号を痛覚に変換します。例えば三叉神経痛では音が激痛に変換されます。よって副鼻腔炎が存在すると、その炎症による違和感を三叉神経が痛覚に変換させて脳に伝えます。これにより患者と耳鼻科医は副鼻腔炎(蓄膿症)により痛みを感じていると錯誤します。副鼻腔炎は無症状のものも多いのですが、無症状の副鼻腔炎を持つ患者が三叉神経痛を発症させると、激痛を伴う副鼻腔炎に化けてしまいます。MRIで検査すると副鼻腔の粘膜浮腫の所見を示しますから、これを見た医師は「副鼻腔炎による痛み」と誤診します。しかし、三叉神経痛が病態の本質であった場合、副鼻腔炎を手術的に治療しても治ることはありません。したがって、副鼻腔炎の手術後も痛みが全く軽快しない場合、誤診であることが非常に多いと思われます。この誤診は非常に微妙です。なぜなら、実際に副鼻腔炎が存在し、実際にその副鼻腔炎がわずかな(耐えられる程度の)痛みを発しているからです。その痛み信号を三叉神経がトランジスタのように増幅させます。よって副鼻腔炎に「全く原因がない」わけではないからです。最悪なことに画像所見と痛みも一致してしまいます。よって耳鼻科医も誤診します。

誤診は正されない

ただ、激痛の原因が誤診であったとしても、誤診であることを証明する手段が現医学には存在しません。その理由は三叉神経痛を治せる医師がほとんどいないからです。三叉神経痛の治療をネット検索すればわかりますが、ほとんどが手術療法です。ブロック注射療法がほとんどヒットしません。つまり、一般的には三叉神経痛の治療は手術しかないと思われていることがわかります。ですが、副鼻腔炎と診断を受けている患者が三叉神経痛の手術にたどりつくことはほぼ皆無ですから、結局治ることなく誤診されたまま一生を送ることになります。

三叉神経痛をブロックで治す

残念ながら、三叉神経痛をブロック治療で確実に治せる医師は少ないでしょう。ペイン科では積極的に治療を行いますが、その事実も一般的には知り渡っていません。治癒率も未知数です(私はこれまで数十名の三叉神経痛患者を治療しましたが、ほぼ100%全快しているというイメージを受けています。しかし、私の場合はペイン科で行う星状神経節ブロックよりも効果の高い上頚神経節ブロックですから、彼らと比較はできません)。この事実が一般的に認識されれば、誰も手術で三叉神経痛を治そうとする人はいなくなります。さらに脳外科の医師でさえ手術をしなくなるでしょう。ブロック注射で治るものをわざわざ開頭までして手術する必要などないからです。現在も手術が行われていることが、ブロックで治ることが世間的に、いいえ医師界においても認識が普及していない証拠です。よって、今回の症例はたまたラッキーだったというだけで、実際には副鼻腔炎と誤診されて手術をされて治らないという道をたどることになります。手術の前に、まずはブロックを行うべきですが、これが普及するかどうかは、わたしにはわかりません。ただ、たまたまラッキーにもこの報告を読んだ方は、ブロックで完治する可能性があるでしょう。残念ながら、本報告が副鼻腔炎治療、三叉神経痛治療で検索エンジンのトップページに来る日はないかもしれません。副鼻腔炎の激痛に悩んでいらっしゃる方は、まず第一にブロックを行うことを考えてもよいかもしれません。

新しく良い治療は必ず否定される運命にある

デジタルカメラが作られた当時、プロのカメラマンはほぼ全員、デジカメを否定しました。そのおかげで雑誌に掲載する写真はデジタルデータは禁止され、入稿時は必ずフィルムで!という原則さえ作られました。新しいものを認めるとプロの仕事がなくなっていくからです。フィルムのカメラ器材は高価であり素人の手には届きませんが、デジタル器材は安く、素人でもきれいに撮影できてしまいます。これを認めることは自分の首を絞めることに等しいため、当時、デジタルは徹底的にプロカメラマンに否定されました。そして今、周囲を見渡すとプロカメラマンもデジタル入稿しています。そして実際にプロカメラマンの多くは職を失い、当時のような羽振りの良い稼ぎをしている人はほとんどいなくなりました。現在はまさに「プロカメラマン受難の時代」です。
医療界も同じであり、外科医が必死に腕を磨いて積み重ねた技術も、手術をしないで治す方法が開発されると、磨いた腕は全て水の泡になります。神の手と呼ばれて世界から注目され、患者が国外からも訪れるスター的外科医師も、「手術しなくてもブロックで治る」ことが普及すれば、その地位と名声は一気に急降下します。医学界はカメラマンの世界とは違い、重鎮の教授たちが権威の力で新しい治療を否定すれば、それに逆らう医師はいません。よって古き悪いものがいつまでも淘汰されずに残りやすい世界です。権威ある者は己の地位と名声が急降下することを防ぐために、あらゆる手段で(新治療の副作用や、不成功を大々的に宣伝する論文を書くことにより)新たな治療法を否定します。こうした理由で時代の最先端を行く良い治療は、なかなか広まりにくい運命にあります。患者の立場としては、その辺を見抜く選球眼があるかないかで、人生が変わります。
今回のように副鼻腔炎の原因が三叉神経痛であるという事例は、恐らく少数ではないと推測します。もし、これを読んでいる方が賢明な方であるなら、副鼻腔炎による顔面痛と断定する前に、自分の行動力でペインクリニックなどを受診することを強くお勧めします。

難治性副鼻腔炎の革新的治療法」への2件のフィードバック

  1. はじめまして。中田和明と申します。私の家内56歳が副鼻腔炎の手術後、回復が悪く、痛み、後びろうで苦しんでいます。術後約5ヶ月です。内視鏡では粘膜の状態は良くなっていると言われました。
    一度先生に診ていただけないでしょうか?

    • 副鼻腔の痛みが症候性三叉神経痛の可能性も考え、一度は私の上頚神経節ブロックを受けてみることをお勧めします。連絡差し上げます。

中田 にコメントする コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です