ステロイド分泌を低下させる高コレステロール血症

ステロイド分泌を低下させる高コレステロール血症

私は以前、ケナコルト10mgを膝関節内に注射した患者に、その1か月後に採血したACTHが1未満、という結果だったことがあり、驚嘆したのを覚えています。 ケナコルト10mgはプレドニン換算で12.5mg。それをone shotして1か月後のデータでACTHがほとんど分泌されていないからです。3か月後に同様にACTHを測定するとACTHが2.2と、正常下限を大幅に下回っていました。すなわちこの患者はケナコルト10mg/月という少量のステロイド投薬で、下垂体機能が著しく抑制されておりそれが3か月以上続いていた可能性がありました。
ケナコルトは投薬後、非常に緩慢に血中に溶解していく薬剤であり、10mgが約3週間かけて血中に移行します。1日に0.6mgのプレドニン投与と同じような状態になります。 これほど少量のステロイドでACTHが極端に低下するということは、すなわち自分の体内から分泌される副腎皮質ホルモンでさえもACTHが抑制されることを推測させます。 ACTHがステロイドにより過剰にネガティブフィードバックを起こす異常な状態です。 このような下垂体のステロイドに対する抑制過敏の症例を経験したのを契機に、私はケナコルトを使用した患者のACTHを計測するようになりました。
その結果、ACTH低下の患者には共通点がありました。それは高コレステロール血症の患者で優位にACTHが低いことでした(「ケナコルトの安全性と副作用に関する調査」を参照ください)。 コレステロール値が高い患者ではステロイドをごく少量投与しただけでも血中コルチゾールとACTHが激しく低下する傾向があり、これらの患者では体内から分泌されるコルチゾールでACTH分泌が強力なネガティブフィードバックを受けると推測されました。 しかも、コレステロール治療薬を服薬し、血中コレステロール値が正常でもACTH低下は起こります。つまり、血中のコレステロール値には無関係に、コレステロール摂取が多いと治療薬を服用していてもACTH低下は防げないようなのです。
コレステロール治療薬の多くは、肝臓から血中にコレステロールが運ばれていくのを阻止するシステムですが、摂取したコレステロールを減らしているわけではありません。 コレステロールを多く摂取することは体内のホルモンバランスを著しく悪化させる可能性があるのですが、多くの治療薬では悪化を食い止められないことが推測されます。 すなわち、高コレステロール患者、および高コレステロール治療中の患者の中にはACTHの分泌不良、体内ステロイドの過剰のネガティブフィードバックによりコルチゾールが慢性に低下している者が少なからず存在すると思われます。まさにこれが炎症抑制物質の停滞です。
飽食の現代では動物性脂肪の摂取が大幅に増え、厚生労働省の調査によると2200万人が中性脂肪またはコレステロールが高いと言われています。 この2200万人のACTH低下が高コレステロール血症治療薬で防ぐことができないとなると(追加報告で多少は防ぐことができることが示唆された)、潜在的な炎症抑制物質の停滞者はどれほど存在するか、想像すると恐ろしくなります。

ステロイド分泌を低下させる高コレステロール血症」への7件のフィードバック

  1. 私がこれに当てはまるかもしれません、、、今も体調不良で気がせきながらのメールで失礼がありましたらすみません!

    朝9時acth2.7
    コルチゾール5.4
    夕方16時acth4.2
    コルチゾール2.6

    個人内分泌科にてひかかり
    国立大学病院で検査しましたが
    コルチゾールは出ているみたいで
    「副腎機能低下症」の疑いだったのですが未確定に終わりました。

    悪玉コレステロールが350くらい高くなったり糖質制限をすれば
    中性脂肪は80くらいになったり
    高脂血症と脂肪肝をいわれています。

    インスリン過剰分泌もあり
    喘息でのプレドニン頓服もあったりでまさにあてはまるでしょうか

    食後に体調不良になりやすく
    コレステロールの低い食べ物を
    心がけたら宜しいでしょうか

    迷路に迷いこんでおります、、、
    どうかアドバイスをお願いしです
    すみません

    • まず、よくもこんなマイナーな記事を見つけられましたね。そのことの方が極めて珍しいと感心します。

      ACTHが低いことから、副腎機能低下症の定義にはあてはまりませんが、下垂体機能そのものが異常な状態になっていることは間違いないでしょう。高コレステロールは全ての原因ではありませんが、必ず一枚噛んでいます。よって、コレステロールをとらない食事をしてコレステロール値を下げることをおすすめします。動物性の食べ物を全て制限し、可能な限りベジタリアンになるとよいでしょう。おそらく1か月くらいで元の値になると思います。

      食事制限をためすことに損はないと思います。

  2. doctor f 先生

    お忙しい中ご回答ありがとうございます。
    今もまさに体調不良にて出先ですが車内で留守番しており
    先生の「よくみつけましたね」
    のお言葉だけで涙ぐんでいます。

    確定診断はおりなかったのですが
    個人病院Dr.はプレドニンを1mgから一生服用して生活の質を上げることを提案してくれてますが
    私にまだ抵抗があるのです、、、
    本来はコートリルなのですが。

    ベジタリアンですか!
    インスリン過剰分泌があり
    ブドウ糖75gの検査で
    最大135もインスリンが出てます

    機能性低血糖症も指摘され
    糖質制限が推奨なのですが
    糖質をとらない分
    肉が増えつつありました。

    困りました、、、苦笑

    実は線維筋痛症の様な痛みもあり
    まさに炎症抑制システムが機能してなく神経系の痛みが出てるのではと思います。

    沢山の医師に不調の真実を伝えてきましたが変わり者の患者のレッテルを貼られ苦笑いされてばかりで本当に悔しいのです。

    先生は病名はなくとも
    器質的ではなく
    ただただ症状はありうると
    認めて下さり
    私こそ理解してくれるDr.がいらっしゃった!!!と感動中です。

    一生ステロイド服用の覚悟の前に
    食事療法を一か八か
    挑戦した方が良いですね
    40代半ばの主婦で寝込んでばかり
    人生がこのまま終わりそうで、、

    • ACTHとコルチゾールの両方が低いパターンが存在することを世間の医師たちは知りません。よって治し方も知りませんし、患者がどういう経過をたどるのかについても、原因さえも知りません。ここの論文は私が偶然に発見した病態であり、あなたにあてはまるとは限らないことをひとこと付け加えなければなりません。

      しかしながら、ACTHとコルチゾールが両方低くなってしまった患者たちのその後の経過は全員が良好で、1~3か月の後には元に戻ることが判明しています。最近でも同様な経過をたどった患者がいました。私の診療所には、ステロイドを大量に投与されても治らなかった突発性難聴の患者が多く来院しますが、彼らの血液を調べると、ACTHとコルチゾールが低いパターンがしばしば見受けられます。つまり副作用ですね。あなたの場合はなぜACTHとコルチゾールが低くなったのか?の理由はわかりませんが、知らず知らずにステロイド類似物質を食べてしまっていたとか、自己体内のステロイド分泌が引き金になったとか・・・あるのかもしれません(不明ですが)。

      さて、ステロイドが低い期間がどれくらい続くか?は不明ですが、私の患者たちは、低い期間に大きな病気になった者はいませんでした。しかし、次のようなことが起こる危険性があります。円形脱毛症、微熱(体温の上昇)、高熱、関節炎、不眠、不安神経症など。よって、この期間はできるかぎりストレスになることは避け、睡眠を十分にとるようにしなければなりません。そして万一体調不良になった場合は一時的に少量のステロイドを服用することもとりあえず想定しておかなければなりません。

      私がこんな長文を書く理由は、世間の医師たちが対処法を知らないからです。本来は専門外なのでアドバイスできる立場ではないのですがやむを得ずアドバイスしています。

       そして1か月毎に採血を行い、正常に戻るまで経過観察していきます。コレステロールをネットで調べ、食べてはいけない食べ物を頭に入れて、食事制限をしっかりしてください。食事制限は一生しなくてもよいですが、健康を考えるのならせめて薬を飲まずに正常範囲に収まるように気をつけてください。

       おそらく、ステロイドを1mgを服用しても元に戻ると私は推測しています。よって、期間中にステロイド1mg服用していても、「一生服用」の必要はないと思われます。よってかたくなに服用拒否をする必要もないと思います。ただ、私の患者たちは、みんな自然に治っています。

  3. お忙しい中長文にてアドバイス下さり本当にありがとうございます

    「日本の医療への苦情」を読み進めると、私はまさに規格外な患者ではじき出されて当然でした。
    日頃何故?どうして、、、と悔しい思いをしていますから
    どうかf先生独自の医療医術が広く行き渡る事を願います。

    先生の患者さまも食事療法で改善に向かわれたのでしょうか
    まずは1ヶ月。
    低コレステロール食を実践してみます!

    微熱、不安神経症、早期覚醒など
    すでにあります。ACTHの数値が不安定な患者は精神症状が出やすいと説明を受けました。
    内分泌の分野もまだまだ未解明なのですね、、、
    ですから先生独自の経験や統計に基づいた真実を知るだけでも
    希望を持つことが出来ました。

    本当にありがとうございます!
    食事療法でまた変化ありましたら
    報告に来ます。
    朝一番ありがとうございました!

  4. 何度も申し訳ありません。

    ご相談なのですが
    有料にてアドバイスを頂けるチャンスは頂けないでしょうか

    • あなたの症状はACTHとコルチゾールが全てではなく、延髄の血行不良が主たる原因だと推測します。とはいうものの、すでに西洋医学の知識を超えている話なので、私と何千回相談を繰り返しても答えが出ません。文章のやりとりで解決するほど単純ではありません。

      また、私は治療に消極的な患者と会話をしている時間的な余裕がありません。治療に積極的な患者は、全国から私の元へ飛行機で通院してこられます。文章でのやりとりで、問題を解決しようとするその姿勢は、決して「治療に積極的」とはいえません。あなたは負けています。私の元へ来られる積極的な患者たちと比べて負けています。負けている方に私の時間を割くことはできません。治したいのなら勝つことです。私の周囲の患者たちに積極性で勝つことです。

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